⑬最後の背中
「………聖教騎士団」
デルが苦虫を潰した表情で歯を噛み合わせた。
聖教騎士団。
イリーナと同じ騎士団だが、本来の任務は罪を犯した人間や魔物を断罪する事であり、教会が作り上げた専属の戦闘集団である。犯罪者、蛮族という肩書があるだけで、それは断罪されるべき対象と教え込まれている。
そして白髪の少年少女という姿は、イリーナと同じ境遇の子ども達である事を意味する。
「隣国の危機だからって神父様からの要請を受けたから、最短距離で予定の場所に向かう途中だったんだけど」
長髪の少年がオセとデル、アモンを一瞥して首を傾げた。
「人間もいるけど、僕達の敵って事で良いよね?」
前髪の長い少年が呟く。
「良いんでしょ? 蛮族と一緒にいるんだもん」
少女は手を合わせて音を鳴らすと、二人の意見をまとめた。
「こ、この糞ガキどもがぁ!」
出血の止まらないオセが斧を強く握ると、立ち上がりと同時に振り返り、腕を伸ばして斧を振り上げる。
振り上げた斧は長髪の少年に向かって地面に叩き付けられた。
「へぇ、凄いや。まだこれだけ動けるなんて」
少年はオセの渾身の一撃、燃え盛る斧の一振りを籠手越しとはいえ掌で受け止める。
「力も中々。お姉さん………今までで僕が殺してきた魔物の中で一番強いかもしれないよ」
「くっ! 動かねぇっ!」
オセが斧を引こうにも、少年が掴んだ斧は微動だにしなかった。
ならばと、彼女は即座に覚悟を決める。
「アモン! デル! 何をしている!? お前達はさっさと扉に入りやがれ!」
「「何言って………がはぁ!」」
血を吐き続けるオセが、デルとアモンを立て続けに足の裏で蹴り出し、無理矢理門の中へと放り込んだ。
門が何かの意思に従うように、ゆっくりと閉まり出した。
「オセ!」
デルは急いで立ち上がり、既に隙間が半分になっていた門の前でオセの後姿を睨む。
「………済まねぇが。姉さんには上手くいっておいてくれ」
オセが門の奥で立ったままのアモンに視線を送ると、アモンは下唇を噛みしめながら目を静かに瞑り、小さく頷いた。
「分かった………思いっきり暴れて来い」
「あぁ。俺は姉さんの妹なんだぜ?」
オセの言葉を閉じるように、左右の扉が合わさる。
そして扉の奥から強い衝撃が加わり、門は大きな音を立てて砕け散った。
「馬鹿野郎が………」
扉の破片は、始めからそこに存在していなかったかのように細かな粒子となり、空気中に拡散する。
デルは扉のあった場所で立ちつくしていた。




