⑫三人の子ども達
事情をあらかたオセから聞いたアモンは、扉の先に向けて顎をくいと動かすと、デル達を扉の奥に入れようと動き始めた。
最初に応急処置を済ませた騎士と魔物達、そして戦死した者達。馬車から降ろした荷物と馬、荷車自体は扉には入らないため、既に森の中に放棄し済みである。
「よし、残っているのはお前達だけだ」
アモンが『さっさと入れ』と親指を何度も扉の先に向けて動かす。
「行きましょう」
アイナ王女達が扉をくぐる。
最後まで残ったのは、扉の横に立つアモンと扉に手をかけているデル、そして周囲の点検を終えて戻って来たオセの三人だけとなった。
「そういえば、この扉はどうするんだ?」
集落に繋がっているのならば、このままにしておく訳にはいかないだろうと、デルがふとした疑問を沸かせる。
「ああ、それなら心配するな」
デルのすぐ横で、アモンが自分の顔の前で手を左右に動かす。
「そうそう。全員が入ったら大魔王様にお願いして、消してもらうから」
オセが近付きながら自慢気に語った。
「大魔王? ちょっと待て、魔王………いや、タイサとは別にもう一人魔王がいるのか?」
驚くデルに、オセとアモンは互いに目を合わせて勝ち誇ったかのような、しかし意地の悪い顔をつくる。
「まぁな。教えてやってもいいが、こればかりは見た方が早い。絶対にビビッて腰を抜かすぜ」
オセがデル達と合流する。
「さて、んじゃま、俺達も行きま―――」
オセの言葉が止まった。
「オセ………?」
デルとアモンが後ろを振り向く。
彼女のメイド服の胸の間からは一本の剣が突き出ていた。
「「オセ!!」」
二人が叫ぶと同時に、オセは口から血を噴き出しながら、震える顔で背後の存在を睨みつける。
「こ、こいつ………俺様が全然、気が付かなかった、だと?」
オセが咳き込み地面に膝をつくと、背後に立っていた者達の姿がデル達にもはっきりと見てとれた。
汚れのない、空よりも濃い蒼い鎧、羽飾りのついた兜。そして白髪でありながら、年端もいかない少年と少女が合わせて三人。
「珍しいね。こんなと所に、猫亜人族がいるなんて」
先頭に立っていた長髪の少年が剣を抜き、刀身に纏わりついていた血を払って鞘に納めながら純粋に驚いていた。
「それに、人間もいる………」
顔の上半分が前髪で隠れている少年が、小さな声と共にデルを見上げた。
「ま、運が悪かったと思うしかないわね。近道をしようと当初の道を無視して山と森を抜けてきた私達に偶然出会っちゃったんだもの」
ご愁傷様と手を後ろに組んでいるポニーテールの少女が、無垢な顔で笑い出す。




