⑪扉の先には
「お話の所、申し訳ないんだけれど………一ついいかしら?」
デルとオセの問答に、溜息交じりのフォースィが顔の横で小さく手を挙げる。
「さらりと流されていて誰も触れないのだけれど、さっきからあなた、魔王様って何度か言っていたわよね」
「ああ」
フォースィの問いにオセはその意図が分からずに頷く。
「魔王って、いつ復活したのかしら」「「「!?」」」
デルや王女達全員の目が大きくなった。
そしてオセの方を向き直す。
だが、彼女は逆方向に首を傾けるだけだった。
「復活も何も、お前達の仲間が………あ、いや御方が魔王様をやってる………なられているけど………あれ、言ってなかったっか?」
「え、ちょおまっ! えぇっ!? 言ってないの」
下顎から汗が落ちているボーマが一番驚いていた。
「急いでシドリーの姉さんに報告しないと………ぐえっ!」
ボーマの鎧の襟首がオセに掴まれ、勢いよく後ろに倒れた。
「ちょっ、それは頼む! 言わないでくれ………あぁ、白目! 気絶してるぅぅ!?」
オセは一人で頭を抱えながら立っては座り、混乱している。
「………で、魔王って誰? 私達の仲間って………まさかと思うけれど」
二人のやり取りに頭痛を起こし、呆れ始めていたフォースィが、白目を向いて気絶しているボーマを見下ろして、最も可能性のある人間を一人思い浮かべた。
「この変態の隊長、とか言わないでしょうね」
「………言っちゃ駄目なのか? じゃぁ、何て言ったらいいんだぁ………!」
オセが困った顔で腰をかがめ、頭を抱えたまま耳を垂らす。
―――夕方。
治療を終えた騎士や魔物達は、森の前に立っていた扉に集まった。
「本当にこの扉から、あの集落まで繋がっているのか?」
デルが扉の前で胡散臭そうに睨む。体を乗り出して裏側を覗いても、単に立派な扉が地面から生えているようにしか見えない。
「本当さ。開けたら驚くぜぇ」
既に経験しているオセが含みを混ぜて笑う。
そしてオセが扉に手を置き、取っ手に手をかけて引いた。
「じゃじゃーーーん。到着ぅって、ぎにゃあぁぁぁぁ!」「どおうわぁぁ!」
扉を開けると、奥から狼男がオセに寄りかかって倒れた。
「………確かに驚きだ。勿論、別の意味で、だが」
デルが憐れむ目で、地面に重ねて倒れ込むオセとアモンの姿を見続ける。
オセは自分の上に倒れてきたアモンの頭を何度も叩いていた。
「アモン! 何でお前が扉の前で寄りかかってんだよ!」
「うるせぇな! 使う前にノックくらいしやがれってんだ!」
オセに怒鳴り返していると、アモンがデルの姿に気付く。
「おっ! デルじゃぁねぇか。丁度いい、この前の借り………返させてもらうぜ」
勢いよく跳び上がり、アモンがデルの前で両手を握り構える。
「アモン、もう共闘の話は済んでるから………戦うなら後にしてくれよ?」
アモンの後ろでようやく起き上がれたオセが、土で汚れたメイド服を叩きながら小さく呟いた。それを聞いたアモンは拳を降ろし、頭を掻きながら舌打ちする。
「仕方ねぇ………おい、この戦いが終わったら俺と真っ先に勝負だからな」
真顔のアモンはデルの鼻先に指を向けた。
「デル………あなた、こんな奴らに負けたの?」
「だから負けてねぇって」
フォースィが憐れむ目で、デルを背後から見つめる。




