②怨嗟の連鎖
「………何か分かりましたか?」
大魔王が顎に手を置いた仕草を見たコルティが話しかける。
男は小さく鼻で笑うと、左右の足を組み替えた。
「王国内の状況は把握した。この世界を取り巻くクレーテルの情報だけだが、二百年程度では、世界が変わるにはまだまだ短いものらしい」
そこへケリケラが屋根と同じ高さから急降下するように大魔王の元へと戻ってくる。
「大魔王様、森の外周に敵対するような気配はありませんでした」
何度か羽ばたかせ、男の前で緩やかに着地する。
「ご苦労」
これでしばらくは問題ない。大魔王は老齢な樹木で覆われた木の天井を見上げた。
「大魔王様。これからどうしますか?」
コルティは周囲に注意を払いながら言葉を選ぶ。
「しばらく様子を見ようではないか。お前達の焦る気持ちは、余も理解しているつもりだが、我が友の計画に時間という概念はない。今は目の前の問題に集中すべきであろう」
「目の間の問題………ですか」
ケリケラが周囲を見渡す。魔物達の姿は殆ど見えないが、先程から家屋の窓越し、または遠くから人間達の視線を感じていた。
大魔王は大きく息を吐き、眉を上げる。
「人間と魔物達との怨嗟。これを解決させない限り、相互協力という奴の目的は叶わぬ」
「………しかし、そう簡単に解決するものなのでしょうか? 私達の時代でさえ解決出来ず、ついには関係を断って国を興したのです」
コルティが疑問を投げかける。タイサやシドリー達といった幹部級は割り切る事が出来ても、それ以外の者達はそう単純ではない。彼女の説明に、ケリケラも頷いて同意する。
「方法はある………粗野でいかにも野蛮な方法だがな」
大魔王は目を細めた。