③弱肉強食
「数百年前の恨み言を今更私達にぶつけられてもいい迷惑なのよ!」
「シエン!? お前達も落ち着け!」
シエンに続き、隊列が完成した騎士達がそれぞれの想いを込めて次々と剣を抜き出す。デルが声を上げて止めようとするも、騎士達の表情は変わらなかった。
それに呼応して魔物達も持っていた武器を高々と上げ、咆哮を放つ。
「………こんな事をしている場合ではないというのに」
感情に支配された集団に挟まれた王女が、拳を握りながら唇を噛む。
「王女様。こうなったら………もう仕方ないわよ」
近付いてきたフォースィが王女の肩に手を置く。そして人間側、魔物側を一瞥し、全員に聞こえるような声で話し始める。
「恨みつらみもここまで来たらお互い様。どちらかが我慢出来る訳でもない、ましてや引ける訳がない。子どもの喧嘩じゃないのよ? 一人の人間が止めるなんて、そもそも無理があるのよ」
そうでしょう。と互いに言葉を投げつける。
フォースィは『ただし』と付け加えて、さらに声の大きさをわざとらしく上げた。
「勝っても負けても遺恨なし! 死んでも文句なし! 負けた方が勝った方の言い分を聞く………それでどうかしら?」
「ふぉ、フォースィ!?」
デルは驚きを隠せなかった。
つい先程『子どもの喧嘩ではない』と言っておきながら、フォースィが提案した解決方法が子どものそれ以下の発想だった。
だがその言葉にオセは大きな口を開けて笑い散らす。
「面白ぇ! 本気で笑ったぜ!」
オセが白銀の斧を一回転させると、そのまま自分の肩に担ぐ。遅れて炎が噴き出しそうな鎖が後を追うように波打ちながら地面に触れる。
「こっちはそれで構わねぇ! 元々弱肉強食が俺達の原則だ!」
一軍の将であるオセの言葉にフォースィは右頬を吊り上げ、王女殿下の耳元で囁く。
「向こうはそれで良いそうですよ? 殿下」
聞こえてくるのは神託か、それとも誘惑か。アイナ王女は大きく息を吐いてフォースィを睨みつけた。
「あなた、本当に神に仕える者なのですか?」
「えぇ。ただ、神といっても色々な方がいるので」
フォースィも目を細めて言い返す。
「酷い展開だ」
「でも、最悪の結末ではないはずよ」
肩の力を落としているデルを前に置き、フォースィが後ろに数歩下がる。
そして魔導杖を半回転させて手の平に収めた。




