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lost19 虚構の歴史、真実の物語  作者: JHST
第二章 過去から未来へ
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②抑えられぬ感情

「………デル。あなた、あんな奴に負けたの?」

 フォースィが細目でデルの背中に視線を送り、頬を緩ませる。

「酷い誤解だ。引き分けだ、引き分け!」

 デルが振り返って声を上げた。彼は、絶対に茶化しているだろうと、口を尖らせる。


「デル。彼女が魔王軍の77柱と呼ばれている者ですか?」

 フォースィの隣にいたアイナ王女が、真面目な顔でデルの顔を覗いた。

「………その通りです王女殿下」

 王女の問いに、デルは慌てて取り繕い、言葉を返す。

「ならば(わたくし)に話をさせて下さい」

 アイナ王女が彼の横を静かに通り過ぎる。

 そして誰よりも前に出るや、オセと正面から向き合った。


「何だ………お前は?」

 オセの目が不機嫌に細まり、目の前に現れた高貴な人間に不快感を示す。

 王女はオセの気迫に負ける事なく左右両方の髪留めを外すと、銀の髪を降ろして服の胸元を強く握りしめた。

「私はウィンフォス王国第18代国王の娘、アイナ・ウィンフォスです」


「アイナ………()()()()()()だとぉ?」

 オセの顔から歯がはっきりと見えた。

「てめぇ、この国の王族か!?」

 赤い鎖が巻かれた白銀の斧が高い音を立て、その切っ先が王女に向けられた。

 アイナ王女が静かに頷く。

「魔王軍の幹部たる77柱のあなたに話があります」

「はっ! てめぇの爺さん婆さんのせいで、俺達がどれ程苦しめられたか教えてやろうか!?」

 気が付けば、オセの周囲のオークやゴブリン達も、彼女と同じ感情を表情に出し始めていた。


「デル騎士総長、この状況は………」

 馬から降りて近付いてきたシリアが、やや後方で待機させている騎馬を横列へと並べ変えさせながら、デルに小声で呼びかける。

「分かっている」

 デルも魔物達から生まれ始めた殺気を受け、シリアにいつでも動けるよう指示を出す。

 そして、王女の横についた。

「殿下、これ以上は危険です」

 相手も決して多くはないが、デル達の側も決して十分とは言えなかった。仮に一度この場に火が点けば、王女を守りながら戦う事は不利以外の何物でもない。彼は最悪の展開を意識しつつも、その状況だけは避けたい一心で、王女に声をかける。

 だが、当の王女の足はその場から一歩も動かなかった。

「………分かっています。ですが私は自らの責任を果たさねばなりません」


 王女がさらに一歩、足を前に動かす。

「殿下!?」

 デルが思わず叫んでいた。

「我が先祖が、そして我ら人間が自らの保身の為に魔物達を疎い、追放した事は事実。その為に、長い年月の間、あなた方を苦しめて来た事もまた事実。その苦しみを癒す為に、どのような言葉で、どのような姿で、あなた方に伝え、報いるべきか………残念ながら、まだ未熟な私には見えていません」

 王女が自分に言い聞かせるように語り、深い悲しみと共に目を静かに閉じる。


「何を好き勝手に………別に今更、頭を下げて謝って欲しいなんて、これっぽちも思っていないさ!」

 持っていた斧をオセが地面に叩きつけた。斧を中心に地面が砕け、割れた地面の間から絡みつくように炎が舞い踊る。

「こちとら人間達への復讐から全てが始まったんだ! ましてや俺を含めてここにいる奴らは、この前の戦いで多くの仲間や家族を殺されている! そう簡単に振り上げた拳は下げられないぜ!」

「無礼者め! 我々もシーダイン騎士総長を始め、多くの仲間や家族を貴様達に殺されている!」

 我慢出来ず、とうとうシリアが声を荒げた。

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