家族
どうにかこうにか、シキを私の式神だと信じてもらえた私の部屋には、お父様とお母様、私とシキしかいない。この方が私が話しやすいだろうという配慮だ。
「それで、本当に何ともないんだね?」
「ええ、お父様!むしろ今までより身体が軽いし、魔力が馴染んでいて最高の気分!」
「そうか、良かった。…しかし、ユーリのような魔法は、私も聞いた事がない。出せる式神の数に制限がないのなら、一つの軍隊を作る事も出来る非常に協力且つ危険な力だ」
私の快復には喜んでくれたものの、やっぱり私の魔法は規格外らしくお父様の新たな悩みの種になってしまったみたい。それはそうよね、強い力は危険と隣り合わせなのだから。
「一旦どのような力なのか分かるまでは外で使わないように。ただ、命の危険を感じたなら迷わず使いなさい。いいね?」
「はい、お父様」
「シキはユーリの専属護衛として傍にいてやって欲しい。ユーリでも感じられない変化を式神であるお前なら感知できるかもしれない。何かあればすぐ報告してくれ」
「承知致しました、お任せ下さい」
「この能力の事は我が家に絶対の忠誠を誓う契約をした一部の者にだけ伝える事にする。他を信用していない訳ではなく、今は必要な対策だと分かって欲しい」
「全てお父様に従います」
そう言うと、お父様はようやく表情を緩めた。
その一瞬の空気の緩みにすかさずパンパンッ、というお母様の合図が響く。
「それじゃあ、難しいお話はおしまい。ユーリが魔法を使えるようになって、悩んでいた体調も快復して、本来なら今日は我が家の記念すべき日よ。幸い、高位貴族や王族が魔物や精霊と契約を結ぶ事は過去にもあったし、最近では報告されていないけれど禁止されている訳ではないわ。ユーリのように無から有を生み出すのは聞いた事がないけれど、元々有だったと言えばシキくらいは何とかなるはず。ね?あなた」
「ああ。難しい事は大人に任せておきなさい。遅くなってしまったが、ユーリが元気になって本当に良かった。10歳のお誕生日おめでとう」
「おめでとう、私の宝物」
「ありがとう、お父様。お母様」
その後、家族全員で朝食を取ったのだけれど、元気になりすぎてしまったのか、身体が遅れた成長を取り戻そうとしているのか、いつもの倍以上食べちゃったの。
その姿を見た両親は涙ぐんでいて、改めて元気になれて良かったと私まで泣きそうになったけど我慢。
そして私の能力の事は、家令のアグニス、その奥さんで侍女頭のマリア、公爵騎士団長のロージー、副団長のオットー、この4人に伝えられた。やはり規格外の力に驚いていたけれど、私が元気になった方が重要だと皆喜んでくれて嬉しいな。
「お父様。シキの力を確かめる為にどこか使ってもいい場所ってある?出来れば思いっきり力を解放できる場所だと嬉しいのだけれど……」
「それなら良い場所がある。後で皆で出向くとしよう。安心しなさい、その場所は私しか知らない所だから」