プロローグ
はじめまして!初投稿になります!
私はユーリ=トライゼン、10歳。
メルティ王国の筆頭公爵家、トライゼン公爵家の長女だ。
とはいったけれど、私は生まれつき身体が弱く未だに社交界にも顔を出せず、同年代の子供との交流もない。それもこれも、私の魔力が全ての原因。
この国では貴族も平民も等しく魔力を持って生まれてくる。その力の強さに差はあれど、誰もが魔法を使い、生活をしている魔法大国だ。私は子供の身体では抱えきれない程の膨大な魔力を持って産まれてしまった事が影響して、様々な身体機能が弱く、現在も絶賛ふかふかベッドとお友達というわけ。
今日は私が10歳の誕生日なのに、ベッドの上なんてあんまりだ。
まぁ、これも私の身体が魔力に馴染まないのがいけないんだけれど。
お父様もお母様も本当に私を大切にしてくれるし、生きているだけで充分だと言ってくれている。
でも我が家は筆頭公爵家。様々な貴族が公爵家の影響力を弱らせようと策を仕掛けてくる事もあるんだと、以前お父様が説明してくれた。
お父様は絶対に守るから心配しないで、と言っていたけれどこの家の弱点は間違いなく私。
私が危険に晒されたら、全ての権力を放棄して助けに来てしまうだろう。
そんなお荷物なんて、もういい加減卒業させて欲しい。この身体に宿ってから10年。いい加減、魔力に馴染みなさいよ、私の身体!
ー悪態をついてどうにかなる問題なら、とっくに解決してるよね。
悶々と色々考えていたら眠れず、朝日をカーテンの隙間に感じる。
まだ私を起こしに来るまで時間はあるけれど、眠れる気持ちにもなれなかったから最近ハマっている折り紙をしよう。紙を折っている時は無心になれる。この折り紙が何か役に立てば良かったのに。
ベッドサイドに昨日上手に折れた鳥が目に入る。お父様もお母様も手先が器用だね、とたくさん褒めてくれた自信作。改めて手に取っても我ながら良くできているなぁ。
私の願いは様々な場所に出かけたり、今まで愛してくれた公爵家の皆に恩返しがしたい。もうお荷物は卒業したい。それ以外は望まないから、この鳥が神様に願いを届けてくれないかと起こりもしない奇跡を夢見て、鳥の折り紙を遠くに飛ばすようにフッ、と息を吹きかけた。
その瞬間、身体の中で行き場を失っていた魔力が全身を急速に駆け巡り、抜け落ちていく感覚を覚える。
息が乱れる。
呼吸が出来ない。
苦しい。
寒い。
助けて。
思わず胸を押さえて、ベッドの上に蹲ってしまう。
ベッドサイドに呼び出し用のベルがあるのに、そこまで辿り着けない。
もう動けない、と思ったその時、背中をさする大きな手の温もりを感じた。
「大丈夫ですよ。私の声に併せてゆっくり呼吸をしてくださいね。吸って~吐いて~吸って~吐いて~。とても上手ですよ、主様」
「……は、はぁ…ッ」
何度か聞こえる声の通りに呼吸をすると、次第に苦しさは無くなっていく。
少し余裕が出来た私は声の方に振り向くと、長い銀髪を結んだ美男子がそこにいた。
「あなたは……だれ……?」
「主様が私に命を宿してくれたのでしょう?願いを聞き届けて欲しい、と」
「え」
先程、私が吹き飛ばした鳥がいる方向を見ても、どこにも鳥は落ちていなかった。
代わりに現れたのは彼なわけで……。
え、これって、どういうこと……?
「お初にお目にかかります、主様。私はあなた様が吹きかけた魔力により具現化した折り紙の鳥。主様の幸せの為に降りかかる火の粉は払い、広い世界にお連れする翼」
「あなたが、あの、鳥……!?」
「無意識に主様が魔法を発動し、私を具現化。全身に魔力が急激に浸透したせいで先程のように過呼吸になられたのですよ。私がおりますので、先程のようにはもうなりませんからご安心下さい」
「じゃあ、私の身体はもう……」
「普通の状態になるにはお食事や運動等が必要になりますが、他の方と同じような生活が出来ますよ」
「よ、よ……よっしゃー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
思わず公爵令嬢らしからぬ大絶叫と両手ガッツポーズをしてしまったのは許して欲しい。
祝!!お荷物卒業!!病弱卒業!!
何が起きたのか未だに良く分からないけれど、私の隣にいる彼が大丈夫だと言うのだから大丈夫!!
ユーリ=トライゼン、10歳。
生きていて良かった!!!!!