第七話~笑話~
あの時は本当に驚いた。まさか自分があそこまで引きつけられるとは思わなかったのだ。
でも、でも今思い返してみると自分でも分かる気がした。今まで自分の好みの女性像について考えたことはあんまり無かったし考えようともしなかった。だけど、今からそれを考える必要は全くなくなるだろう。
なぜなら、おそらく彼女こそがオレの理想の女の子なのだから。
「おいおい、なに見とれてんだよ!」
ロニーがオレを察して言ってきた。
「・・・」
だけどそのとき、オレはまだあの女の子に夢中だった。思わず箸を止めて見ていたほどだ。
「おいおい、豪祐」
「え、あ、おう!」
「な~に見とれてんだ?」
「は?見とれてねぇよ!」
「ほ~そうかい、そうかい」
ロニーは、にやにやしながら郁也とイルカンと目を合わせた。その二人も口元を緩ませながら笑っていた。
隠し通せないな、とオレは思った。この状況では何を言ってもオレの負けだ。
「いや、かわいいなぁって思っただけだよ」
「あ、それならオレも思ったことあるぜ。さっきの女の子は結構かわいいって評判だからね」
郁也が賛同するように言った。
「えっと、名前は何だっけ?僕は分からないな。僕はあんまりタイプじゃないし」
「オレもそんなに・・・なぁ?イルー」
「そうだね」
どうやら、ロニーとイルカンにはさっきの女の子はそこまでかわいく見えなかったようだ。
それにしても、初めてだ。あそこまで見惚れたのは。
「でもさ、郁也は結構ほれっぽいと思わない?」
「な、なに言ってんのさ」
「あ~それはオレも思うな」
「ロニーまで賛成しないでよ!」
そんな三人の笑い話を聞きつつも、オレの頭はさっきの女の子の事を考えていた。
「やべぇだろ」
思わず口に出してしまった。
「え!?女の子を好きになる事ってやばいの?」
「あ、いやそう言う意味じゃなくてさ・・・」
「郁也の場合は、だろ?」
ロニーがウインクしながら言った。
「そういうことだよ」
「何だよ、それ~」
そう言いながら、郁也が崩れ落ちるとみんな一斉に笑った。




