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▽第9話 試行の前準備

 自分の武器探し。自分に合うものを選定し始めてから小一時間。

 小太り世紀末野郎ことバツザンの協力もあり、武器の選定は段々と絞れてきた。


「軽いものばかりが残ったな」

「で、ですねぇ」


 しかし絞った結果、残った候補の武器は全部小型で軽いものばかり。どれもが拳銃サイズか、拳銃より大きくてもコンパクトなサイズのものしかない。

 これより重い武器は持って構えるだけでも疲れてしまう。インドア派なのが今になって災いしている気がした。


「さてはあまり筋肉ないな?」

「あまり運動はしないもので……」

「やっぱりか」


 私、か弱い少女なんです。まぁ成人はしているけど。


「筋トレとか体の強化が必須だな。シエラ805に言っておくか、アイツはお前の同居人だから上手くやってくれるだろうよ」


 バツザンの口から出てきたシエルの管理名。

 そういえばシエルはあの少女の体で力持ちだった。相当筋トレしたのか。

 ふとシエルのことを思い浮かべていれば「とりあえずはこの中からだな」とバツザンが武器選びに話を戻した。


「お前、武器の使用経験は?」

「もっちろんありません!」

「そうだろうな。まぁまずは武器を選べ。その後は早速模擬戦だ」

「は、はい!」


 私の力、試されちゃう。

 試されることに緊張する。同時にゲームみたいに銃を実際に扱えるという興奮もある。

 緊張半分、興奮半分の感情。


「……これにしようかな」


 なんとなく武器を一つ取る。

 手に取ったのは拳銃より大きいが、片手で持てる軽さのエネルギー銃。

 前にしばらく熱中していたFPS系のゲームに登場していた銃だ。

 チャージの段階によって銃が変形する素敵な仕様で、性能は環境破壊とまではいかない強武器。二段階チャージした弾を当てれば大体の敵は即死させられる。

 私はこの一撃必殺のロマン砲をゲーム内で愛用していた。


「おい、マルチプルエネルギーガンを使うつもりか?」

「はい! これ、レイズって銃をよくゲームで使ってたんですよ!」

「ゲーム? じゃあこの銃の知識は?」

「そりゃもうチャージして変形カッコイイ! チャージブッパして敵を即殺っしょ!」

「あ? あ、あぁ……まぁそうだな」


 なにか間違ったことでも言ったか。バツザンの反応が微妙だ。


「アルク、もう一つ武器を選んだらどうだ? そんなセカンダリウェポンだけじゃ物足りないだろ」

「いやいやこれ一つで大丈夫です! 一撃必殺しちまえばいいんですから!」

「はぁー……そうかい。じゃあ付いて来い、戦闘訓練室で模擬戦を始める」

「はーい!」


 バツザンの反応はやはり微妙。でも一撃必殺のロマン砲は気持ちいいし、ゲームで愛用していた武器の方が手に馴染むはず。

 こうして武器を選び終えた私は三着分の服と靴を忘れずに持って、バツザンとの模擬戦に向かった。


  ※


 模擬戦をするため、補給倉庫から戦闘訓練室に移動。

 バツザンに付いていった私は戦闘訓練室と呼ばれる、内部がかなり広い施設へと足を踏み入れた。


「ここが戦闘訓練室……」

「早速やるぞ。荷物はそこのカゴに入れておけ」


 一面真っ白の分厚い壁に覆われた戦闘訓練室。

 二人で入ってすぐに、バツザンは出入り口に設置されたタッチパネルを操作。

 出入り口の電光掲示板に〝現在使用中〟の文字が表示される。


「まずは準備を整える。少し待ってろ」

「はーい」


 続けてバツザンが操作を行うと、3Dホログラムで模擬戦の初期位置を投影。

 そのまま戦闘訓練室の出入り口の扉は閉められて戦う準備が整っていく。

 私はその間に衣類と靴を出入り口に備えられたカゴへ入れる。


「アルク、銃を貸せ」

「え、はい?」

「非殺傷モードに調整するんだよ。俺を殺してぇのか?」

「殺したいって言ったら?」

「お前をぶっ殺す!!」

「ご、ごめんなさーい……はい、これ」

「最初から素直に渡しやがれ」


 冗談言って怒らせてしまったバツザンに、マルチプルエネルギーガンを渡す。

 するとバツザンは慣れた手付きで私の武器を見たことのない形に変形させ、銃の中身を露出。調整のためにいじり始めた。


「よし、非殺傷モードに切り替えた。ちゃんとメンテナンスモードに変形出来るし、状態も良い。上手く扱えば、お前の力に応えてくれる」

「は、はい」


 調整が終わると、ゲーム内で見たことない形――銃のメンテナンスモードを解除。元の見た目に戻り、非殺傷モードに調整された武器を返してもらう。


「さぁやるか! 初期位置につけ、アルク!」


 私は言われた通りに3Dホログラムで映された二つある初期位置の内一つに移動。バツザンはもう一つの初期位置に移動して、私たちは向かい合う。


「アルク! 準備はいいな?」

「ふぅ……とりあえずは!」


 模擬戦が始まろうとしている。

 胸の心音が早くなって、締まるように少し痛くなるのを感じる。

 さっきまで緊張半分、興奮半分だったが、模擬戦が始まる直前の今は緊張が勝った。


「じゃあ、行くぞ! アルク!」


 バツザンはそう言って上半身の衣服の内側から拳銃型の武器を取り出した。

 ゲームで見たことのある、バツザンの武器。確かゲームでは環境の底辺に位置する趣味レベルの拳銃。

 そんな拳銃の銃口が私に向けられる。


「やる、やってやる!」


 銃口を向けられて更に緊張する。けど、相手は環境の底辺武器。対してこっちは環境上位の武器。

 私は強気に銃口を向け、3Dホログラム表示の照準越しにバツザンの姿を見る。

 3Dホログラムで映された戦闘開始までのカウントダウン。

 互いに銃口を向け合った状況、互いに見合う状態で戦闘が始まるのを待つ。

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