▽エピローグ 計画完遂の先
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「大鴉装核大尉」
「貴官がなぜ査問にいるか、お分かりかね?」
≪分かりません≫
「分からんか、大尉。読め」
「はい。貴官、大鴉装核大尉は次期主力歩兵を検証する極秘の計画――獣兵計画において多数の被験者と花乃椿博士の逃亡を全力で阻止せず、貴重な初期モデルの大部分と計画の根幹を損失させた容疑が掛けられています」
≪俺は仕事を果たしました。戦闘記録はご存知で?≫
「それは管理者としての仕事だろう!」
「なぜ連盟の兵士として連盟軍の資産を守らなかった。あの獣兵たちは我が軍の資産なのだぞ?」
「博士のこともそうだ。どうして逃亡を許したのだ」
≪戦闘記録を見ているのなら存じ上げているはずです。彼女らは俺の力を振り切るほどに強い。そんな彼女らが俺を出し抜いただけですよ≫
「そのような発言で我々が納得すると思うか?」
「貴官は一つの意識で複数体を動かせる機械兵士。最終検証で一機破壊されたとて、体の予備はまだあったはず。どうして予備の体で被験者及び博士を取り押さえなかった?」
≪言いましたよ、出し抜かれたと。気付いた時には既に遅かった≫
「この前の星間戦争で要塞衛星を単独制圧した貴官ほどの化け物が?」
「まさか、獣兵の中に貴官と同じ化け物が存在していたとでも言うのかね?」
「到底あり得ん話だ」
≪いえ、確かに〝本物〟はいました。戦闘記録にも記録されています≫
「また戦闘記録か! 戦闘記録、戦闘記録と同じことを何度も……!」
「まぁいいだろう。最強に数えられるとはいえ、悪名高い狂犬艦隊が落ちぶれるのは我々にとって好都合だ。彼の言う戦闘記録を拝見してから、もう一度査問を開くとしよう」
≪ご理解得られたようで感謝します≫
「では、今回の査問はこれで閉廷とする」
「神の階級には重用されているようだが、これで狂犬艦隊も終わりだな」
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≪大鴉よ≫
≪はい、高次大将≫
≪査問はどうだった?≫
≪噓だらけの茶番にしてきましたよ≫
≪戦地から離れたところで戦争を好むバカ共の怒り顔が容易に想像出来るな。私も同席すれば良かった≫
≪それで、大鴉よ≫
≪はい、高次大将≫
≪お前の意思は貫けたか?≫
≪貫きました。俺にとって最高の終わらせ方に出来ましたよ≫
≪それなら良い。約一年と長引いた計画の完遂、ご苦労だった≫
≪ありがとうございます≫
≪時間だ。入るぞ、大鴉よ≫
≪はい≫
≪失礼します、天皇陛下≫
「高次君、来たか」
≪獣兵計画の件、片付きました。拉致被害者及び今回の不祥事に関わったメンバーのリストアップも完了しています≫
「毎度毎度すまない……特に今回は君の艦隊に泥を塗ったようなものなのに」
≪構いません。我々の闘争に多大な意味を与えてくれるのですから≫
「そうは言っても、君も元は皇族だろうに」
≪面目にはそこまで興味がありません。私には闘争があれば、それでいい≫
「その武将のような格好が内面を表す、ということか」
≪そういうことです≫
「……甥の行方は?」
≪星間戦争で支配した惑星にて、他の獣兵と一緒に闇市に流されたのを確認しております。既に連盟軍最強の一つ、黒炎艦隊が救出に出向いているので報告をお待ちください≫
「そうか」
「甥を誘拐したのは誰だ?」
≪ヴィクター・アールゼイ中佐の背後にいた高官が指示したという情報があります。おそらく今回の査問に出席していた者にも関係者がいるでしょう≫
「神の子を救出という名目で更に侵略という訳か。せっかくの終戦が無駄になるな」
≪では、これで失礼します≫
「分かった。高次君、それから大鴉大尉、貴官らの尽力に感謝する」
≪恐悦至極に存じます≫
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獣兵計画:完遂
獣兵投入開始
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