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▽第48話 海軍拠点奇襲・出撃

 少女も含めた002管理者に囚われた獣兵たちを解放する気持ちを固めて、演習地の視察に見せかけた偵察は終わった。

 私たちは自分たちの基地に戻る。


「お疲れ様、みんな。これで第一段階は終わり」


 無人輸送機から降りて開口一番に管理者は告げる。

 計画の最終段階、第一段階目が終わった。


「よって第二段階に移行する」


 次は実戦。

 演習に見せかけた奇襲を行い、支援艦の奪取と獣兵たちの解放を行う。


「海軍拠点奇襲は準備を終え次第、すぐに実行に移す。では準備開始、準備が終わった者から管理部に来るように。以上」


 奇襲のための準備が始まった。

 私たちは解散し、それぞれの準備へと向かう。


  ※


 数十分後。

 武器のチェックと補充、ついでに軍服ワンピースに衣装チェンジして、準備は全てバッチグー。


「よし、行く?」

「行こう」


 私たちは部屋を出て管理部へと向かう。

 その道中で「二人とも一緒に行きますわよー」とホトバと合流。

 ふと、なにか忘れている気がした。


「そういえばテメェ、忘れた訳じゃねぇよな?」

「あ……」


 ホトバがお嬢様口調を忘れてヤンキーモード。

 あの少女を含めた獣兵の解放と支援艦の奪取で頭がいっぱいだったけど、言われてようやく思い出した。


「ホトバ、ついでにシエルも私に寄って」

「ようやくか」

「うん? なに?」


 海軍拠点で少女にやったように、寄ってきた二人の腰に手を回す。

 両手にお姫様。気分はとても王子様。


「ふふん! さぁお姫様方、私がエスコートして差し上げますよ!」

「おほん……忘れないでくれて嬉しいですわ」


 ホトバにお嬢様口調が戻った。良かった、機嫌が直ったようだ。


「アルク、アタシも?」

「もっちろん! シエルを外す訳ないじゃん!」


 シエルの方は顔をほんのり赤くさせて口角を上げる。

 その表情はとてもキュート。

 ベッドではシエルに可愛がられる方だけど、外では私が可愛がってやるんだから。


「アルク、外では自分に主導権があるって思ってる?」


 おっと匂い嗅がれて思考の中がモロバレー!


「いいよ♡アタシの主導権を握って♡」


 からのお許しー!

 これには淑女たるもの応えなくてはね。


「さぁ行きましょうね、お姫様方」


 ちょっと声をイケボチックにして、私たちは管理部に向かう。

 その途中で抜山蓋世コンビとキョウコとも合流。

 分隊の全員が揃った状態で管理部に到着する。


「準備を終えたようだね、みんな」

「か、管理者!?」


 管理部に入った私たちを待っていたのは001管理者だった。

 これだけなら当然驚かないが、なんと001管理者が五人もいた。

 五人全員が同じ姿。白衣を着たピンク髪のメスガキが五体並んでいる。


「001管理者が五人……全員同じ匂い……」

「管理者ってば分身の術が使えるんですのー!?」


 これには私のみならずシエルもホトバも驚き。

 抜山蓋世コンビですら悪人面が崩れて目を丸くしている。


「術は術でも子宮外肉体生成技術だけどね。培養カプセル内で肉体を生成、再構築、複製出来るから一つの意識で複数の体を扱える機械兵士と同じことが可能なんだ」


 この光景の種明かしは前に管理者が言っていた〝子宮外肉体生成技術〟だった。

 すんごい技術。

 それでも懸念はまだある。


「これで五隻全ての支援艦を奪取出来る」

「コントロールルームだっけ、あそこで制御するんでしょう? 席が五席あったけど一人で大丈夫?」

「大丈夫、動かすだけなら一席で十分」


 質問してみて、まず001管理者が一人でどうやって五つの支援艦を動かすかの懸念、疑問が消えた。

 次は――


「護衛は?」

「僕の護衛はもちろん君たちを始めとした、この計画から逃げたい多数の獣兵だよ」


 001管理者の護衛の懸念、疑問も消える。


「海軍拠点の制圧は連盟の機械兵士がやってくれる。僕たちは支援艦の奪取と海軍拠点に囚われた獣兵を解放することに集中すれば良い」


 連盟も味方してくれる。

 口頭で聞くだけでも戦いの規模はこれまでの実戦より大規模に感じるけど、正規軍が手を貸してくれるのはかなり頼もしい。


「それと僕たちには強力な助っ人が二人いる。今は情報を伏せるけど、どちらもアルクと同じレベルで最強クラスの人物だよ」


 私が最強だなんて買い被り過ぎだよ、なんて照れる気持ちは置いておいて。

 最強クラスが二人もいるのは頼もしいことこの上ない。

 誰なのか気になるが、情報が伏せられているなら無理に聞くのはやめておこう。


「それからアルクには会わせたい人がいる」

「誰?」

「よく知っている人だと思うよ。入って来なさい!」


 一体誰だろうか?

 管理者が呼ぶと、その人物は管理部へ入って来る。


「え……まさかそんな、本当に?」


 後ろに振り返り、その人物と目が合った。


「久しぶり、スーパールーキー」


 管理者の言う通り、そこにいるのは私がよく知っている人物。学生服を着ていて、初の実戦で一緒に戦った人物の一人――ヨワナシだった。


「ヨワナシ、生きていたの!?」

「私だけではあるけどね」


 ヨワナシが生きていた。

 死人が幽霊になって出てきた訳じゃない、本物で実体のあるヨワナシがそこで息をして生きている。


「ミサイルにやられて、死んだのは……?」

「うん、私は確かにミサイルにやられた」

「だけどまだ死んでいなかった。本来は計画の方針で禁止されているけど、培養カプセルでこっそり肉体を元の状態に再構築したんだよ」


 ヨワナシと管理者は告げる。

 つまり〝子宮外肉体生成技術〟でヨワナシは助かっていた。


「ヨワナシ以外はダメだったの?」

「ダメだった。回収した時にはヨワナシ以外の全員が脳機能を喪失していて肝心の意識が消えていたから、肉体しか元に戻せない状態だった」


 私の質問に管理者は答えた。

 ミッケはスナイパーに頭を粉砕され、キョウカもミックもメガネ君も首を斬られた。

 いずれも脳機能を喪失するような即死。

 思い返し、照らし合わせれば、ヨワナシだけ生きているのは納得いく。


「なるほど、そういうことだったんだ……でも良かった、ヨワナシだけでも生きていて」


 なにはともあれ、生きていて良かった。


「子宮外肉体生成技術での治療は計画の方針に反する行為だから、出てくるのが遅れてごめんね」

「遅れたくらい気にしないよ。生きているだけでもバッチグーだから!」

「……ありがとう!」


 計画の方針に反する行為までしてくれた管理者のおかげだ。

 本当に、もう一度ヨワナシの顔を見られて良かった。


「001管理者、これで役者は揃ったと見てよろしいのですか?」

「うん。ヨワナシも今回の作戦に参加、この前の実戦に参加した分隊も参加する」


 私とヨワナシの再会の後ろで、ガイセイの質問に管理者が答える。


「分隊の編成や作戦詳細は既にある。後は君たちの判断に任せるよ」

「了解、001管理者」


 初の実戦を共にしたヨワナシも参加し、鎮圧用生体兵器との戦闘に参加していた分隊も参加する。

 そこに連盟の機械兵士たちと最強クラスの助っ人もいる。


「さぁみんな、獣兵計画という舞台に幕を下ろしに行こう」


 001管理者は五体揃って外へ出た。

 出撃だ。

 私たちも外へ出ると、いつの間にか建物の外では二十機以上の無人輸送機と百人以上の獣兵が集まっていた。


「アルク」

「どうしたの、シエル?」

「絶対に生きて、終わらせよう」

「もちろん!」


 シエルと手を繋ぐ。

 獣兵計画の終幕まで後少し。

 淑女たるものという以上に、一人の当たり前な人間として、がんばってみせよう。

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