▽第42話 化け物の街・救出
他分隊の獣兵を連れて、ガイセイたちとの合流のために移動。
ほんの数分を要し、分散する前の場所で集まっていたガイセイたちと合流する。
「ガイセイ!」
「お前たちも無事だったか。連れているのは他分隊の獣兵のようだが?」
「うん。さっき殺した敵に捕まっていたから、助けてきたわ」
全員無事に合流して早速状況を説明。まだ憶測にしか過ぎないが、他分隊の獣兵の証言を元に他分隊の全滅の可能性もガイセイに説明する。
「他分隊は全滅しているかも、か……」
「可能性は高いと思う」
「そうだとしたら救出を急がないとだな。俺たちで残りの敵全てを掃討するぞ」
「キョウコ、シエル、索敵お願い!」
善は急げ。
まずはシエルの嗅覚とキョウコの聴覚で敵を探していく。
「敵はどう?」
「先ほどの道を戻って左の方にまだ二体いるようだな」
「他分隊の子を捕まえていた奴が走ってきた方向に三つ匂いが固まってる。その内の二つは死臭だから残りの一体がこの子の分隊を捕まえているかも?」
つまり今の時点で合計七体の敵を倒せている。
残りは八体。その内の三体を確認出来ており、倒すべき方はもちろん他分隊を捕まえている方だ。
「じゃあ残りの一体の方を殺しに行こう。孤立しているなら倒しやすいし、なるべく人命を優先したい」
「決まったな、早速移動だ。シエルとキョウコは索敵を継続してくれ」
「了解です、教官」
「あーい」
これで次の行動は決まった。
私たちは早速移動。警戒しながら、他分隊を捕まえていると思しき敵の方へ向かう。
それから数分の移動を挟み、目標に到達した。
「あれですわ」
「こっちにケツ向けちゃって、なんか無警戒っぽいね」
孤立している敵は警戒も口を開くこともせず、のんびりしていた。
今なら口を開いても触手は見えない。奇襲を仕掛けるには絶好のチャンスだ。
「一斉射撃、行くよ!」
みんなと攻撃の息を合わせて「撃て!」という合図と同時に引き金を引く。
全員で放つ攻撃。弾幕となった攻撃が敵を貫き、数秒の内に穴だらけにした。
これで徹底的になにもさせず、敵は絶命。地響きを立てて倒れる。
「死んだな。口の中を確認してくる」
「私もやるよ」
「耐えられるのか?」
「シエルとヤること考えたら、ね」
「頼もしいことだ。それなら手伝ってもらう」
私とガイセイは敵の正面へと移動。開かれた口と対面する。
「うっ……間近となると、すごいわ……!」
「ちゃんと耐えろよ」
目の前の触手。手を伸ばせる距離。
襲ってくる衝動は強烈の一言。それでもなんとか耐えて、中を確認する。
「……やっぱり、捕まってたね。予想通りだわ」
「だが、全員じゃないな」
敵の口の中には他分隊の獣兵が捕まっていた。しかし捕まっている面々にリーダーの顔はない。
どこに行ったのか?
そう思っていると、近くの建物から一人の獣兵が出てくる。
「ガイセイ! スーパールーキー!」
私たちを呼びながら出てきたのは他分隊のリーダー格。
触手と対面しないように近付いてくる。
「助かった! みんな触手を見てしまって、こんな有様で困っていたんだ!」
「お前だけか、コイツの口の中を見なかったのは……」
「あぁ、包囲して四方から攻撃していたから運良く触手を見なかったんだ」
「本当に運が良かったようだな」
どうやらこのリーダー格の人だけが触手を見ず、無事だった様子。
逆に言うとリーダー格以外は全員やられたというところか。
こうして助けに来なかったら本当に全滅も時間の問題だっただろう。
「アルク、捕まった連中を引っ張り出す。手伝え」
「はいよ」
次にやることは捕まっている獣兵たちを救出する作業。
味方を救出するため、ガイセイと一緒に触手だらけの中に体を突っ込む。
「ヤバ……早く終わらせよ」
間近で触手を見るだけでも衝動が強くなるのだから、直接触るとなれば衝動はより強くなる。
もちろん耐えないと、あっという間に淫乱触手パーティーへご入場だ。
だから触手を目にして引き起こされる衝動よりもドスケベと思える妄想をして耐える。
「あ、あへぇ……♡」
「もっとぉ……もっとぉ……♡」
捕まっている獣兵たちのやらしい声。
もはや羨ましいと思えるくらいに乱れた獣兵たちを引っ張り出していく。
そうやって数分が過ぎる。
「終わったぁ……!」
「よくやった、アルク。これで全員だ」
数分の後、全員の救出完了。
ただし救出出来ても正気は失っており、みんな無防備にアヘアヘしている。
ある意味で絶景。私が男だったら触手よりも魅力的に見えるかもしれない。
「ありがとう、二人共! 後はこっちで面倒を見るから、敵の掃討をお願い!」
「はいはーい!」
「了解」
ともかく救出した獣兵たちは分隊のリーダー格に託し、私とガイセイは自分の分隊のところへ戻る。
残りの敵は七体。
もう片方の他分隊がどうなっているかも気になるけど、今は敵の掃討が最優先だ。
「次、来た道を戻った先にいる二体を殺そう」
「そうだな、アルク。このまま潰していこう」
次に狙うのは来た道を戻った先にいる敵二体。
私たちは移動を開始。来た道を戻っていく。
「気を付けろ、音からして二体固まっている」
「確かに二つの匂いが固まってる。どうする?」
再び数分の移動を挟みながらキョウコとシエルが索敵。今度は少し厄介なことに敵二体が同じ場所に固まっている様子だ。
「一体ずつ集中攻撃ですぐに殺すのがいいんじゃねぇか?」
「片方を殺しても、もう片方がこっちに触手を見せてくるかもしれないぞ?」
「じゃあ二体を一気に殺すしかありませんわね」
二体同時に殺すには火力を分散するしかない。
火力不足の不安があるとはいえ、私とシエルの火力だけで敵を殺せたのだから仕留められないことはないはず。
「二体固まってるなら三人一組で分散して、各個で殺そう。全滅のリスクも減らせる」
「それなら俺とキョウコとホトバで行こう。ホトバがイズレットマシンガンを持っているから火力は十分なはずだ」
「じゃあこっちは私とシエル、バツザンで行くわ」
私の提案から話は進み、戦法は三人一組での各個撃破で決まった。
分散しているなら、触手を見てしまっても被害を減らせる。全員一気にやられるという状況はなくなるはずだ。
「俺たちが先に仕掛ける。キョウコ、ホトバ、行くぞ」
「はい、教官!」
「アイアイサーですわ」
ガイセイを筆頭にしたキョウコとホトバの三人は行動を開始。
「こっちも行くよ」
「うん!」
「おうさ!」
私たちの方も行動開始。ガイセイたちが先に攻撃するならば、それに合わせて私たちは攻撃されていない方を狙う。
「シエル、敵の位置は?」
「あの大きい建物の向こう側。ガイセイたちはそっちに向かってる」
先行するガイセイたちの背後を見つめていると、建物の右へ迂回していた。
どうやら右から仕掛けるつもりのようだ。
「私たちは左から迂回していくよ」
「固まっている二体を挟み込むって訳か、いいねぇ」
「今も敵の匂いは二つ固まっているから挟み込んでの攻撃は成立すると思う」
「それなら好都合。行くよ」
私たちは左から仕掛けるつもりで、左へと迂回。敵を挟み込む形で移動していく。
そうして建物の左側に到着。曲がり角から左をチラリと見れば、固まっている二体の敵が視界に入った。
「アイツら向かい合っているぞ。どっちかが口を開いてきたらマズいんじゃないか?」
「同時に攻撃じゃないとアウトだね」
「だったらやってやろうじゃん。バツザン、シエル、攻撃準備」
こっちに背を向けている敵が口を開けばガイセイたちが、こっちに口を向けている敵が口を開けば私たちがやられる。
だから口を開かれても両方しっかり殺せるように、引き金に指を掛けて攻撃の瞬間を待つ。
「さぁガイセイ、いつでも来なよ」
数秒後、数十秒後、一分後、攻撃の緊張が指先に来る。
そして二分後、緊張が指先から全身に回る前に銃声が響く。建物の右側、視界の向こう側に光弾が見えた。
「今ッ! 攻撃開始!」
ガイセイたちが攻撃を始めた。それに合わせて、こっちも全員で攻撃開始。
エネルギーとイズレット粒子の光弾が敵の背後を襲う。
「マズい、口が!」
攻撃は当たっている。こっちの火力も、ガイセイ側の火力も間に合うはず。
だけど、殺したと確信する前に敵の口が開いた。無数の触手が顔を出した。
やってくる衝動。私は耐えられるが、二人は耐えられない。
「ぐ……ぉ……っ!」
「あ、アタシも……!」
バツザンもシエルも攻撃を止めて、敵に向かって歩き出した。
「マズい! 戻ってこーい!」
ここは二人を助けるのが最優先。一旦攻撃を止めて全力で二人を引きずり、触手が見えない曲がり角まで引き戻す。
「二人共、大丈夫!?」
「クソ、見ただけでこんな感覚か……!」
「アタシは、大丈夫んぉぉぉ!?」
寄ってくる音と振動。曲がり角から口の中の触手がこんにちは。
敵が血を出しながら追ってきた。曲がり角から開いた口を向けて、衝動を引き起こす触手を艶めかしく見せてくる。
「殺し切る!」
せっかく引き戻せても追ってくるのなら殺すしかない。が、敵はそのまま倒れた。
「あれ、限界が来た? 今なら!」
最後の力を振り絞って追いかけてきた、というところか。
火力はしっかり足りていた。
私は敵の死を確信し、もう一度二人を触手が視界に入らない場所まで引きずっていく。
「アルク! 大丈夫か!」
ガイセイの声。見れば、ガイセイの方はキョウコとホトバを引きずっていた。
あっちも触手を見てしまったようだ。
「シエルとバツザンが触手見ちゃった! そっちは!?」
「こっちもダメだ! 全員見ちまったよ!」
私とガイセイ以外の全員が発情して、触手が恋しい状態。
状況はよろしくない。
「あそこの建物だ! 一度身を隠すぞ!」
「了解!」
今の状況ではまともに戦えない。
だからガイセイが指差した方向にある建物に移動し、私たちは合流しながら建物の中へ身を隠した。
「ここで一旦発情を抑えるぞ」
「やっぱり、催淫ガスって訳ね」
ガスを吸って触手を見たら自動的に発情、捕まったら性欲の嵐。
これが軍用の鎮圧用生体兵器か。
要素はエロ同人そのものだけど、確かに鎮圧対象を殺傷せず捕まえるには合理的だ。
「よく考えたもんだわ、こんな兵器……って、ガイセイ!?」
「悪い。そろそろ限界だ」
敵に感心していたら、ガイセイが男の物体Xをボロン。
そこにキョウコが「教官♡」とやってくる。
「アルク……♡」
「おっとぉ? シエル?」
気付くと、この建物内で性欲の嵐が吹き荒れそうだった。




