▽第33話 戦いへの目覚め
私はみんなを弔った。
火葬して骨だけとなった、みんなに別れを告げた。
これ以上することはもうないと管理者に言われた。
そして言われた通りに私は火葬場を離れた。でも、心残りがあった。
「こんなんでいいんだろうか」
安らかに眠れることを祈り、みんなと別れを告げた。
それも大事だけど、それだけじゃない。
これでは許されないと思った。
じゃあ許されるにはどうすればいいか?
火葬場の外で、焼ける臭いを感じながら考える。
「もっと上手に……」
私の戦い方が上手ければ――
「もっと強く……」
私が強ければ――
「誰も死なせない戦いをすればいいんだ」
誰も死なない。
いざ考えてみれば、答えは簡単だった。
そのために努力は欠かせない。ひたすらに強くなって、上手く戦わなくてはならない。
そうすれば、死んだみんなも許してくれるはずだから。
「アルク」
管理者の呼び声。
「終わったよ。みんなの骨をちゃんと埋めてきた」
「そう……」
「このまま管理部に来なさい。今日の行動報告をしてもらう」
「計画に熱心だね?」
「アルクのためでもある」
「……分かった」
自分の言葉に棘がある。
それに対して若干の自己嫌悪をしながら管理者と共に管理部へと行くことにした。
※
001管理者と私。二人きりの管理部にて。
「今回の実戦、どうだった?」
管理者からの質問。
今回の実戦がどうだったか、そんなことは分かり切っている。
「クソだった」
「具体的には?」
「具体的に全部がクソだった。私がもっと強ければ……いや、実戦そのものがなければと思うし、私だけが実戦に参加していればとも今思った」
「まぁそうだよね」
答えていくと頭も口も回る。
実戦そのものがなければ私が強い弱いとか以前に、みんな死ななかったんだ。
だけど、こんな言い方は他責にするだけだ。そんなこと許されない。
「じゃあ、こんな理不尽な実戦をなくす方法があると言ったらどうする?」
「あるの?」
私は001管理者の目を見る。
戦いを失くせるなら、誰も死ななくて良くなる。戦わなくても良くなる。
「どうやって?」
「002管理者が率いる海軍から艦船を奪って逃げる」
「待って、計画の背後には連盟がいるんだよね? 絶対追いかけてくるはずだよ?」
「そこは大丈夫。絶対に追いかけて来れない場所へ行くから」
太陽系どころか他の星系も支配する連盟から逃げられる場所。
どこかまるで分からない。それでも実戦がなくなる、誰も理不尽に死ななくて良くなるのを実現出来る希望があった。
「どうする? やってみる?」
「リスクは? 海軍を襲えば、背後にいる連盟だって動くだろうし」
「まだ詳細は言えないけど、リスクを抱えないやり方はちゃんとある。心配しないで」
リスクを聞けば、どうやらリスクに対しての用意はある様子。
「実行はいつ時?」
「アルクがアンみたいに強くなったら」
「……じゃあ、まだだね」
「そうだね」
しかし私は弱い。実行に移す用意はあっても、まだ実行には移されない。
「じゃあ実行に移せるように強くなってみせるわ」
アンみたいに強くなる――いや、アンを超える強さでないといけない。
王組一級という一番高い階級を頂いた強者のアンでさえ死んでいるのだから。
「期待しているよ、アルク。あなたはバツザンとホトバが認めた本物の強者で、こうして実戦も生き残っているのだから」
バツザンもホトバも言っていた、本物という言葉。
こんな私が本物の強者。
そんな実感はない。ただ必死に戦っていたに過ぎず、今はひたすらにアンを超える強さを手に入れないといけない。
「それじゃ、アルク。行動報告はここまで……次はメンタルケアをするわ。案内するから受けていって」
「メンタルケアなんて大丈夫。それよりも次の実戦を教えて」
「……実戦ね」
「今日の実戦からして、いつ実戦があるかは管理者か連盟が決めているんでしょ?」
メンタルケアなんてやっている暇はない。
鍛えて、学習し、戦い、経験を積んで、いち早く強くならないといけないのだ。
「……分かった、教えてあげるわ」
「早く」
「次の実戦は四日後になる」
「敵はなに?」
「未定。言えることは、次は人間じゃないということ」
「ふーん」
人間ではない、なにかが敵。
どうでもいい。強くなれるのであれば、敵はなんでも良かった。
「ありがと、管理者」
「どういたしまして。さて、今日は疲れただろうから部屋に戻って休むといい」
「そうさせてもらうわ」
強くなるという目標が出来た以上、今日から一層鍛えるつもりで私は部屋へ戻ることにする。
「あなたなら計画を完遂し、みんなを解放することが出来る」
管理部を出ようとすると、ボソボソと管理者はなにか言う。
今は気にしている暇などない。
私は管理部を出て、自分の部屋へと戻る。




