▽第32話 実戦帰りの弔い
実戦が終わった。
戦いの終わりを告げると思しき警報が鳴り続ける。
ふと空へと目を向けると、そこには獣兵が空に浮いていた。
「みんな」
死んでいった仲間の姿が天に召されているのか。
「アルク!」
死んだ仲間の声じゃなかった。
目に見えるのは機械を身に付けたセーラー服の犬耳美少女。私が最初に目にした時と同じ姿のシエルだった。
「シエル……?」
「良かった、生きていて!」
シエルが空から降りてきて、抱き付いてきた。
私は反射的に抱き返す。
温もりを感じる。
「シエル、わざわざ探しに来てくれたの?」
「うん、捜索に志願したの! もしも負傷していたら、すぐに助けたくて!」
「ありがとね。でも大丈夫、私は怪我してないから。それよりも……」
シエルから、死んだみんなへと視線を移す。
「みんなを弔ってあげて。辛くて、痛くて、疲れているはずだから」
「分かった。死体……アルクと戦った仲間たちは他の隊員に捜索、回収させる」
「お願い……」
私がみんなを殺した。私がもっと上手く指示を出して、もっと上手く戦えていれば誰も死なずに終わらせられたはず。
「帰ろう、アルク」
「うん……」
だから弔ってあげないと、みんなに――メガネ君に、キョウカに、ヨワナシに、ミックに、ミッケに――申し訳が立たない。
「帰ったら、まずはみんなを……」
みんなを弔う。
そのために私は戦闘が終わって疲れが出てきた体を動かし、シエルと共に森を出ることにした。
※
実戦が終わってから数時間後。
みんなの死体は捜索隊員によって回収、火葬場へと送られ、焼かれていった。
生き残った私はみんなが火葬されていくのを見守る。
「ごめんね、みんな……」
悔やみ、謝って、冥福を祈る。
それしか出来なかった。
「アルク」
背後から001管理者の声。
「待って、用は全部終わってからにして」
今は先にみんなを弔わなければならない。
「残念だね……みんな死んで……」
「残念では済まないよ。私が殺したんだから」
「殺したのはアルクじゃない。みんなを殺したのは管理者たる我々……だから、辛いなら僕が受け止めてあげるよ。行き場のない暴力だったとしてもね」
管理者から出た言葉は慰めだった。
しかし今、必要なのは慰めじゃない。
「じゃあ、管理者もみんなを弔ってあげて」
「もちろんやるよ」
必要なのはみんなを弔うこと。
「戦いがある度に、いつも弔ってきたから」
「そうか……管理者はこれが初めてじゃないんだね」
「別に気にしてないよ。これも管理者として、やるべきことの一つと思っているからね」
お経が流れる。イズレット粒子銃の騒動があった時と同じように。
私はみんなが安らかに眠れることを祈った。




