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▽第19話 模擬戦の前に銃を詳しく覚えますわー!

 朝食の楽しいひと時を終えてからのこと。

 先に食べ終わったホトバとは一度解散。

 そこから休憩に入って疲労した体を休めれば、その次は昼食の時間。

 模擬戦の時間が着実に近付いている中、私とシエルは再び食堂に出向く。


「新人ちゃん! シエル!」


 ホトバの呼び声。それと共に合流。


「アルク」

「うん、先に席を確保してくるね」


 いつもの流れで席を確保。いつもの流れでシエルが二人分持ってきて、ホトバも一緒に来る。


「新人ちゃん」

「うん?」


 シエルと一緒に座るホトバ。話しかけてきながら目と目を合わせる。


「ドキドキしますわね」

「あはは、私も……」


 この昼食を食べた後には模擬戦がある。今まさに目を合わせている相手と戦うのだ。

 私もホトバも緊張しない訳がない。


「でもとても楽しみ。模擬戦とはいえ、噂のあなたと本気で戦えるんですもの」

「私はそうでもないかな……だって弾に当たったら痛いし、非殺傷でも相手を傷付けるのは好きじゃないから」


 模擬戦だったとしても戦いはそんなに好きじゃない。

 自分も相手も傷付くから。


「それはドッジボールも同じ。そうでしょう?」

「それは、そうだね」


 もちろん銃器を実際に扱って撃てるのは楽しい。人に弾を当てるのも楽しさを感じられる。

 しかしそれは実際に耐えがたい痛みを感じないことが前提の話。機械を通してのゲームやサバイバルゲームみたいだったら無限に楽しめたはず。


「別に死なないのだから、とことん本気で楽しみましょう!」

「……うん」


 たぶんこの形式の模擬戦は楽しむものでも、楽しめるものでもない。

 それでもホトバはやる気だ。実力があるから楽しめるのか分からないけど、相手がやる気なら応えるまでのこと。


「本当にマジで、本気で行くからね?」

「その意気でお願いですわ。そうでないとあなたの実力を試すことも、私の実力を見せることも出来ませんもの」

「分かった」


 そうやって互いに緊張を漂わせ、昼食を楽しむことよりも模擬戦のことを考えながら昼食は進む。


  ※


 昼食後。いよいよ模擬戦の時間。

 シエルは予定通り午後のトレーニングの教官をやっていて、模擬戦にはいない。

 それぞれの武器を持つ私とホトバ、戦闘訓練室で二人きりだ。今まさに指定された初期位置で向かい合っている。


「マルチプルエネルギーガンだけ……珍しいですわね、アルクの武器」

「そうかな?」

「そうですのよ。あなたの武器はサブの側面が強い、工具のような武器ですもの」


 バツザンは私の武器をセカンダリと言っていた。サブ武器に該当するんだろうけど、工具のような武器ってどういうこと?


「工具って?」

「その武器、マルチプルと名があるように多用途銃器ですの。つまり敵を撃つこと以外にも使うということ……チャージ機能はそのためにありますのよ」

「例えば?」


 ゲームではチャージショットで敵を一撃で倒していた記憶しかなく、私は尋ねる。


「壁や扉の破壊による突破口の確保、機械兵士を始めとした軽装甲目標への攻撃、という感じでマルチプルエネルギーガンの役割は多岐に渡りますわ」

「へぇー、ホトバってば詳しいね!」

「ま、まぁ、全部シエラ806――もといバツザンの受け売りですけど」


 ホトバじゃなくてバツザンが詳しかった件について。

 確かに私の武器をメンテナンスモードにしたりと、明らかに武器の知識に詳しそうなのは覚えている。


「あ、そういえば……」

「なんですの?」

「これ、非殺傷モードになっているか分かる?」


 ふと非殺傷モードのことを思い出して、私は自分の武器をホトバに見せる。

 忘れて模擬戦やっていたら危うく殺していたかもしれない。危ない危ない。


「どれどれ、アタクシにお任せですわー!」


 そのままホトバに手渡して武器を任せる。

 するとバツザンと同様にホトバも手慣れた様子で武器をメンテナンスモードへ移行。非殺傷モードの確認に入った。


「んー……大丈夫ですわね。しっかり非殺傷モードに入っておりますわ」

「どれどれ?」

「ほら、ここの表示」

「あー」


 ホトバが指差したところを見ればLethalとnon-Lethalの内non-Lethalがオレンジに灯っていた。

 つまり今の状態は非殺傷モードということ。


「で、それぞれの表記の下にあるボタンを押すと殺傷か非殺傷を選べますわ」

「じゃあメンテナンスと通常の切り替えは?」

「それは上部のこのボタンですわ」


 マルチプルエネルギーガンの上側。エネルギー残量カウンターと熱量ゲージが表示されている場所と同じところにあるボタン。


「押してみんしゃい!」

「ははいのはい」


 そのボタンを試しに押してみると中身を露出させた状態のメンテナンスモードから元の通常状態へと戻った。


「おっ、戻った」

「チャージの仕方は分かりますかしら?」

「もちろん! 引き金を引きっぱなしで調節するんでしょ?」

「そうですわぁ。それと両側面のこれ、このセレクターは安全装置とチャージリミッター機能になっておりますの。お好みのチャージ段階で止められますのよ」


 ホトバが指差す銃の側面。そこを見れば2、1、R、SAFEと分けられており、今は最大である二段階チャージの2を差していた。

 色々と教えてくれて自分の武器への理解が深まっていく。助かりますわ。


「さぁ、解説はここまでですわ!」


 武器を返してもらい、ホトバは再び模擬戦の初期位置へと戻る。

 そして彼女は自身の武器を両手で構えた。私の武器より圧倒的に長く、太く、一見して重量感のある武器をホトバは持っている。


「ヤバ、マジで本気じゃん……」


 可愛いお嬢様に身長と同じくらいのドデカい武器。

 見る分には萌えられるけど、対面したら恐怖の方が勝る。


「マジマジのマジで行きますわよー!」

「だったら、こっちだってマジで行くから!」


 そして模擬戦開始のカウントダウンは始まった。

 命に関わらない本気の戦いがもう一度始まろうとしていた。

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