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デストラクションクインテット  作者: キタリア
青碧のおはなし
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魔術……夢だな!!

「ここが、魔術の修行場か…。名前がそのまんますぎないか?もうちょいあっただろ英語にするとかさ、それだけでモチベがちょっと上がるんだけどな。あと見た目もどうにかならんかね」


【魔術の修行場】と書かれた木製の看板が、高級な寿司を売ってそうな和風の建物に物々しく掲げられている。魔術とはかけ離れた見た目に困惑してしまう


「大将、やってる?へへっ」


 誰もいないとは分かっていながら、やってしまう。着々と精神崩壊が歩み寄ってきているのがわかる、心なしか独り言も多くなっている気がする。こうしていないと平常心を保っていられない


 中の様子は、外観とは裏腹に洋風な図書館のようになっておりサイズ感が外から見た時と合わない。外から見た時はこじんまりしていたが中に入ると


「無限だあ」

(無限だあ)


 思考と同時に言葉が出てくる。それもなんともアホらしい言葉が、だがそう表すことができるだけの量の本が置いてあった。見えているだけでも十階以上はある、それ以上は首が痛くて見えない。そしてその階の一つ一つにびっしりと本が詰まっている。魔導書と呼ばれるようなものだろう


「これを読めば、僕でも魔法が使えるように!」


 何度妄想したかわからないほど、欲していた魔法が使えるようになるのだ!

 興奮が抑えられない。抑える人が別にいるわけでもないので、抑えず爆発させる


「よおおおおおっしゃあああああ!!!!!!」


 PPWにきてから初めて、というか人生でこんな大声を出したことはないというほどの大声で叫んだ。

 その声が反響して耳が痛くなるほどだ。

 それほど魔法というものは素晴らしいものなのだ。


 すぐ近くにあった本棚から一冊、子供が読むような絵本サイズの魔導書を試しに取ってみた

 息がどんどん荒くなっていくのが分かる。鼓動が本に集中できるのかというほどうるさい

 記念すべき1ページを読んだ第一声は


「あえ?」


 なんとも間の抜けた声だった。

 小さな本で、中身も幼稚な『魔術入門!!』的なものだと思っていたが、小さな文字がびっしりと端から端まで詰まっており、とてもじゃないが飽き性のめんどくさがりやな僕は読む気にならない。


(読む気一気に失せたわ)


 魔法を使えるようになるためにはこんな本を読まなければならないのかと思うと本格的に魔術に対する興味が消え失せてしまいそうなので、すぐさまに絵本?を閉じた。


「文字は一応読めるようにはなってるみたいでよかった。」


 見つかったはいいけど文字が読めない!!なんて展開になるんじゃないかと勝手に予想していたがあてがはずれた。


「とりあえず、魔術入門書でも探すか…」


 ざっと見た感じでは、この階層にはそんな優しい本はなさそうなので真ん中にぽつんと建っている螺旋階段を上って上の階を探して回るしかない


「だっるいな…まあこのくらいは頑張らんとだめか…」


 気の遠くなるような量の本棚をしらみつぶしに一階、一階丁寧に探していった。

 そんなことをしている最中に一つ、気づいたことがある


「あれ?スピードあがってね?」


 具体的には、大体一階層すべての本を一冊一冊確認していくのに6時間ほどかかっていたものが、もちろんこんな場所に時計など存在していないのでもっとかかっている可能性はあるが、腹時計には自信がある。

 そんな僕だからこそ気づけたのだろう確認にかかる時間が大幅に短縮され、一時間程度で一階層が確認し終えることができているのだ。もちろん、雑になっているわけでもなければ上の階層に行くほど本の数が少なくなってきているわけでもない。


「なんなら、多くなってね…?」


 辺りを見回すと明らかに下の階層に比べて本の数が多くなっている。

 それなのに探すスピードが上がっているのはここがPPWだからだろうか?

 成長速度20倍は伊達じゃないようだ


「って‼PPWにきて、一番初めにPPWの恩恵を感じるのが本探しって!!誰得だよ!」


(僕が現在進行形で得してるか…)


 いつのまにか、本を探すスピードがゴキブリ並みに早くなっている事実に、自嘲まじりの苦笑いしかできなかった。

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