赤点挽回
急いでみじたくをすませ駅へ向かう。一応優等生キャラで通っているため、遅刻なんて滅多にしてこなかった。不慣れな遅刻に何倍もの焦りが生じる。
よりにもよって、指定された場所は家からかなりの距離があるため、電車をつかわなければならない。
オレが駅に着くと、ちょうどよく電車が駅についてくれた。半ば駆け込み乗車ようになりながら電車に乗り込む。
「なんでったて、わざわざこんな遠く…」
電車に無事乗り込むと、段々と焦りがおさまってくる。焦りが治ると思考が働くようになる。
集合場所に指定されたのは、オレも名前くらいは聞いたことのある、それなりに広い自然公園。なかなか遠かったので、休みの日に暇があれば外出するレベルにはアウトドアなオレでも行ったことがない。
自然公園というだけあって地図アプリで見てみただけでもかなり広い。それに加え、今日は平日だ。とてもじゃないが会う約束をしていなければ人と会うことなんてできないだろう。
「そんなにカコワールドが他人に聞かれるのが嫌なのか?」
まあ、だが、なぜこんなに人気のない場所を選んだのかはだいたい想像がつく。
また昨日みたいな話をするとなると、人目も避けたくなるわけだ。
しばらくすると、目的の駅に電車が止まる。
そこから地図アプリを頼りに10分ほど走り続けると、自然公園の入り口部分にあたる大きなアーチが見えてきた。
スマホを確認すると時刻は13時を回っている。昼前を予定していたはずだったため、かなりの遅刻だ
。
自然公園に着いたことの報告をしようと地図アプリから通話に切り替えようとすると、どこからか拙い笛の音が聞こえてきた。
その音をじっくりと聞いてみるとどうやらカエルの歌を演奏しているようだ。
「吹けるようになったって…これでか?」
正直聞くに耐えない。ものすごく集中して聞いて初めてカエルの歌だとわかったが、理解する前はアフリカあたりの民族の曲にしか聞こえなかった。というか曲と呼ぶのもおこがましい、もはや雑音だ。
だがその雑音のおかげでだっだ広い公園でカコを探す手間が省けた。
音のする方に向かって進んでいくと案の定、カコの姿が見えた。木々に囲まれた森の中で一部だけ木の生えていないちょっとした広場の真ん中で、楽しそうに雑音を撒き散らしている。
だが、カコはこちらに気づいていないようだ。
それもそのはず。笛の音もいつまでもなっている訳ではなかったので。聞こえなくなった後もわかるようにと、音のした方向に一直線に進んだ結果、道なき道を行く羽目になり。現在、絶賛、森の中なのである。
楽しげな表情で雑音を振り撒くカコをみていると少し憎たらしくなってくる。
「不意打ちでも仕掛けるか?、、いや、やめとくか…青碧さんじゃあるまいし。」
「青碧さんがどうかいたしましたの?」
「ッ!!」
心臓が止まる。比喩だが、比喩ではない。
ここまで、心の臓からガツンと驚いたのはいつぶりだろう。
声をかけられて3秒ほど経ったが、状況が理解できていない。
そもそも本当に声をかけられたのかさえ、わからなくなってきた。空耳だったのではないかと。
だが、それをたしかめようと恐る恐る、声のしたであろう方向を向くと、
「びっくりしましたか?」
さっきまで目の前で下手なオカリナを吹いていたはずのカコが自慢げに問いかけてくるのだ。
「びっくり…した、、」
不可解な現象を無理やり理解し、なんとか質問に答える。
「もう、、思ったよりも驚いてくれませんのね…」
正直我慢できたことが奇跡に近いので十分カコは誇っていい。
「わたくし気づきましたの、昨日のお話を寝る前にもう一度思い返してみて。」
今の状況を飲み込めないオレを差し置いてカコはつらつらと話しはじめる
「どうもお話が噛み合わないなと思ってはいたのですけど、どうやらわたくしの話信じていませんね。」
「信じるって何を…」
そこまで言いかけて、はっとする。今までのカコの口ぶりと、昨日の話を照らし合わせると、実現する可能性が限りなくゼロに近くマトモの考えるのも馬鹿馬鹿しい一つの説に辿りついたからだ。
そしてその説を当てはめると、先ほど起きた出来事に説明がつくような気がして、自分の勘の鋭さに惚れ惚れすると同時に、その説のあまりのバカらしさに自分の勘に嫌気が刺す。
「もしかしてだとは思うが、昨日の話が事実だ。なんて言おうとしてないか?」
「事実ですわよ?」
クリクリとした愛らしい目が、自分は何もおかしなことを言っていないと大袈裟なまでに主張してくる。
万が一昨日の話が本当だったときに備え、話を思い返し、頭でできる限り整理し、一言一言慎重に言葉にする。
「えっと、カコは過去からきて?10万年だかそこらの人間で?神様がいて?神の力とやらつかえて?」
そこまで口にしたところであまりの話の壮大さに、どうしても呆れが先に出てきてしまいこれ以上の言葉を紡ぐ気にはなれなかった。
「そうですわ!わざわざ信じてもらうために魔法まで使ったんですのよ。」
「だから信じろと?第一、オレにそんな話をして、オレはその話を信じて、どうしろと?」
そこまで言い終わったオレに、やっと本題に入れるといった様子で笑みを浮かべながらカコは言う
「死んでもらいますっ!」
「せっかくだからこのエッグいエッグ使ってみようかな。」
今までみてきた卵の中で一番大きいものは、動物園で見たダチョウの卵だったが、今回使おうとしている卵はそのとき見たものよりも、二回りほど大きい。それに加え、色も青みががっており、そもそも食べれるのかが不安になってくる見た目をしている。
「まあ、火通せばだいたいなんでも食べれるって聞いたことあるし、大丈夫か。」
何年も前の記憶から都合のいい部分だけを切り取り思い出される。我ながらなんとも小賢しい体質である。
ダチョウの目玉焼きを作るのと同じ要領で、焼こうとホットプレートを準備する。
魔法でホットプレートは出せなかったので、【調理の修行場】にあった少し大きめのものを拝借。
あとは卵を焼けば終わり。なんと簡単な料理なのだろう。
なんて、上手くいくわけなく。
案の定、焦げ焦げ殻入り謎の卵のスクランブルエッグの完成である。
硬すぎる殻を無理やり割ろうとして力加減をミスり、油を引くのを忘れてホットプレートに引っ付いて剥がれなくなったまま焼けていった結果である。
よし、ミライに食べさせよう
『ミライ〜目玉焼き完成したよ!食べたがってたよね?今からそっち持ってくね』
『その様子ですと怪我などもしてなさそうですね。』
『もちろんもちろん。』
『ぜひ食べたいです。目玉焼きでしたら、ついでに塩と胡椒も持ってきてください。』
『OK、わかった持ってくね。』




