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赤点

 

「同じ厨二病患者として言わせてもらおうか、37点赤点だ。」


「急にどうしたんですの?」


 無作法極まりない行為だとわかってはいるが先輩患者として勝手に人のファンタジーへと足を踏み込ましてもらう。オレとのあいだに低めの机を挟んで正面、カーペットの上で律儀に正座しているカコの目を見つめながら採点の内訳(うちわけ)と配点を発表する。

 カコの背後にある掃き出し窓から見える空は赤く染まっており、人生で最悪な出来事が起きたあの時を思い出させる景色へと変わっていく。この調子では満月など一生見れそうにもないなと思考が飛び火する。そしてこのままではあの人の死へと思考が飛び火しかねないと感じ、強引に思考ををカコのファンタジーへと思考逃避(しこうとうひ)する。


「まずはね、その神っていうのが、、、ね?何のひねりもないのが、、ね、気になるんだよね…。」


「好きなことになってしまうと『ね』が多くなってしまうのは相変わらずですわね。大丈夫ですわよ?気を使わなくても」


 小さい頃からのコンプレックスの一つなのだが、意外とあっさりと受け入れられたことに驚く。


「じゃあ、遠慮なく。神っていうのがね、抽象的すぎるんだよね、設定を作るうえでね、都合がいいからね、適当に「神」って言ってるだけに思えるんだよね。もっとなにか特徴を付けてみたらね、いいと思うのね。たとえば神様は猫の姿をしているとかね、とにかく神の情報が少なすぎてね、ただのね、自分で作って自分で滅ぼすなんも考えてない奴だって印象しかね、残らないんだよね。」


「わかりましたわ、確かに猫の姿してたと思いますわ。」


 口の中が乾燥してきたので一息入れようとお茶を一口飲む。自分から語り始めたとはいえ、カコは熱心に話を聞いてくれる。オレだったら他人に己のファンタジーに点数を付けられた時点でだいぶストレスだ。


「それにね、全知全能の力ってのもね、おかしなはなしだとね、思うんだよね。そんな力があってね国家が成り立つのかな?文明は育つのかな?食料すらも出せるならね、発展なんてしないとね思うんだよね。妄想に現実味を求めるのがお門違(かどちが)いと言われればそれまでなんだけどね」


「実際に食料を出せる魔法使いはごく少数に限られましたわ、それになんでも出せるわけでもありませんでしたわ、たとえばリンゴひとつ生み出すのにも、味、見た目、食感、感触、などを熟知していなければなりませんでしたわ。」


 例にリンゴを持ってくるところや世界観を聞いているところを見ると、カコの思考(カコワールド)はキリスト教に影響されている部分が多いようだ


「そうか、そうなると意外と世界のバランスは保たれてる…のか?」


「バランスが保たれていたら造り替えなんてされませんわよっ!!」


「それもそうか」


 ポーッという顔になったかと思えば、真剣な顔になったり、と思ったら大きな声でツッコまれる。愉快な人物だなという印象が新たに追加される


(愉快な不審者厨二病生徒会長…)


「ふふっ」


 改めて脳内でカコについてのプロフィールをまとめるとなかなかに面白い字面で、耐えられなくもない程の笑いが込み上げてくる。


「なんで笑ってますの?」


 (とう)の本人は、今度はキョトンとした顔で首を傾げている。


「いや、なんでもない。それよりも結局オレの質問の答えになってた部分が一つもなかった気がするんだが?」


「だから長くなるって言ったじゃありませんの。」


「長くなるって言われて神が出てくるような話をされるとは思ってなくて…」


 正直せいぜい窓からたまたま見えた、程度だと思っていたのでこれ以上長くなるとそろそろ父さんも帰ってくる頃だ


「ただいま〜」


 案の定、下から帰ってきた父さんの声がする。あまりにもフラグ回収が早すぎる。別に帰ってきたからと言ってどうなってしまうなんて事はないので気にする必要はないのだが。


「ごめんなさい、わたくしもう帰りますわ。」


「え?」


 カコの急な帰宅にかける言葉を探すときに生まれたわずかな時間、その間にカコは、部屋の扉を開けて忙しない様子で出ていく。急いであとを追いかけてみたが姿が見当たらない。

 一応、階段を降りて確認してみると、玄関口でニパニパとはつらつな笑顔で手を振っている。

 カコからは足音も布か擦れる音すらもしなかったため、父さんは、カコの存在には気づかなかったようだ。


 正直何が起こっているのかは全く理解はできないが、オレは手を振り返す。

PPW 19日目 青碧実家にて


「そういえばさ、ミライ!僕この世界で魔法の次にやる事決めたんだ!」


「さすがは青碧さんですね。ちなみに何をする気なんですか?」


 意味もなく「ふっふっふっ」とカッコをつけてから数秒の間を開けて叫ぶ


「料理さ!!!」


「料理ですか、いいですね。でも、魔法を使えばすぐ出せるのでは?」


「わかってないな〜ミライくん。」


「?」


「暇なんだよぉ〜!」


「そうですか、オレと二人っきりは退屈なんですね…悲しいです。」


「そこまでは言ってないよ!?ただ前は料理というものに触れてこなかった人生だったし…」


「確か、調理実習のときに目分量で調理して失敗してましたよね?」


「だって、いちいち測るのめんどくさいっていうか…」


「料理向いてないですね。」


「だ・か・ら、これを機にやってみようかなって!ムッフーン!」


「頑張ってください」(かわいいいい)


「出来たらミライにも食べさせてあげるね!」


「がんばってください!!!!!」(よっしゃあああああああ、ここは天国か。)


「う、うん…頑張る…」(そんな必死になる?……相当下手だと思われてます?)

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