動きだすお話
「おちつきましたか?」
抱きつきながら耳元でカコがささやく。
カコの体はまだまだ寒い外に長くいたためか、とても冷たい。
気づけばエンジンのように上がり切っていた息は整っている。
が、今はそれどころではない。
「なにを、なさっているのでしょうか…?」
不法侵入者に抱き着かれるという異常事態に出た疑問が、そのままふっと口から出る。
「え?このような時はこうするものじゃございませんの?」
「珍しいとはおもいますわ…」
あまりにも純粋な、キョトンとした顔で当たり前のように帰ってきたアンサーに理解が及ばず、つい相手のペースに流されてしまう。
(さすがは生徒会長、これが…カリスマ性というものなのか?…なわけないか。)
ますますカコという人物に謎が湧いてくる。
今までにあった、出来事を整理するだけでちょっとした物語くらいは作れそうなくらいのイベントが起きている。
そのこと、あのことすべてについて言及したいところだ。鍵のことに関しても開けて入ってきたことについては驚きはしないが、家族のことまで考えた時セキリュティがこのようでは心配になる。
「すみません、とりみだしてしまい話がうやむやになっていましたね。とりあえず、なぜ生徒会長さんがここにいるのかおしえてください。」
「一応同級生ですし敬語はなくてもいいのですわよ?」
(ですわ口調のやつにいわれても全く説得力ねぇな)
正直、青碧さん以外に敬語を使うのは少々抵抗があったのでお言葉に甘える。
「さっきの答えをきかせてくれ」
ため口を使ったとたんなぜかカコの顔が一段と明るくなる。そのままニコニコした顔で話の答えを紡ぐ。
「あなたを死なせないようにするためですわ!」
「もう、死ぬ気は失せたからだいじょぶ………え?」
そんなことをしなくてもよくなったと伝えると同時に新たな疑問が湧いてくる。
なぜオレが死にそうだったことをカコは知っているんだ。
そのことについて聞くため口を動かそうとした途端、相手の方が早く口が動く。
目線は、オレではなくオレが来ている部屋着それから部屋の壁へと向いている。
「青碧さん、お好きなのですわね。」
カコの目線の終着点には、オレのプリントした青碧さんの写真コレクションが飾られている。
部屋着も青碧さん仕様だ。確かに…はたから見れば少々…かなり……だいぶ?気持ち悪がられているようだ。
ここまで見られてしまえばもう隠すことも、そもそも隠そうともおもえなくなる。開き直ってしまった方が早いだろう。警察などに突き出されなければよいのだが…
(いっそここで弱みでも握っておくか…)
気は早いが、もしもの時のことを考えておく。杞憂に終わればよいのだが、とりあえずは相手の出方次第だ。
カコの方へ目線をやるとくりくりとした目が興味深そうにあちこちへと目移りしている。
(もしや同族!?よし、警察に突き出すか)
どうやらカコもこちら側の人間なのかもしれない。大事にはならないと安堵すると同時に、青碧さんのストーカーが増えたら困るので一応警察に突き出すことも視野に入れる。
いまだにカコと目が合わない。というのも、冗談のつもりのこの妄想が、本当になるかもしれないと思えるほどカコは青碧さんの写真集から目を離そうとしない。
ポーッとし、何を考えているのか正直わからない顔で写真見つめているカコをじっと眺めているしかやることがない。
「その恋、応援いたしますわ」
ポーッとした顔のままのカコから言葉が漏れる。
自分で言うのもおかしな話だが、恋と呼ぶには少々重すぎる気のする部屋。これを見て恋と呼ぶカコは少しおかしな人間であることには変わりなさそうだった。
「話を戻そう。なんでカコはオレが死のうとしてるってわかったんだ?」
「それについて話しだすと長くなりますけどよろしいのですの?」
「よろしいのですの」
「わかりましたわ、、、わたくし実は過去から来ましたの!」




