めんどくさい自己顕示欲
目の前にはもう少年の姿はなかった。
見えるのは鏡ので中で体育座りをしている生気を少しだけ取り戻した瞳のオレの姿のみ、のどのあたりにじんじんとした痛みがまだ走っている。
オレは結局、覚悟を決められなかった。
というかそんなにすぐに覚悟を決めることができる性格をしていたら、もうこの世には生きていないだろう。
「クソ雑魚メンタル」むかしまだ当代がもう少しだけ、ほんの少しだけ丸かった頃にそんなことを言われた。
正直こんなことを言われたときは、またなんか変なこと言ってやがる。程度にしか思っていなかったが、今ならなんでそんなこと言われたのか痛いほどわかる。
実際、覚悟を決められないのだから納得しざるをえない。
「太宰治あたりに鼻で笑われそうだな」
オレのやってることは、さぞ周りから滑稽にみられているだろう。
少しでもやなことがあればすぐに死のうとする。それで誰かに気にかけてもらい助けてもらいたい。心のどこかではそう思っているのだろう。
オレ自身思ってしまう
「オレ、めんどくさ」
めんどくさい、実にめんどくさい人間だと。だが、だからといって、この性格はそう簡単に治らない。もう体の隅々にまでこの思考がいきわたってしまっているのだ。『青碧さん』という成功体験をあじわってしまったがために。
「死のうとすれば誰かが気にかけ助けてくれる」という思考が呪いのようにこびりついている
そこまで自分を見つめなおしてようやく気付く
「青碧さんがいなくなったショックで死を求めてんじゃねえんだ…青碧さんがいなくなった”オレ”をみんなに心配してもらいたくて死を………最低だな」
反吐がでる感覚と同時に羞恥心がタッグを組んで殴りかかってくる。
「あ、やばいまた死にたくなってきた…」
ピィーンポーン
下の階から家のチャイムがなった。こんな朝早くから来客とは珍しい
「なんかきたっぽいよ!回覧板?」
下にいるであろう父に聞こえるような声量で叫んでみたが、物音ひとつ返ってこない。
急用でも入ったのかどうやら出かけているようだ。
となれば今、この家には一人しか人間がいないということになる。
急ぎ足で下の階まで駆け下り、インターフォンを目指す。宅配物なら「そこに置いといてください」というだけで済む。回覧板が来てたとしても居留守をかませば乗り切れるだろう。
とにかく、今の恰好はとてもじゃないが人には見せられない。
「は?目?え?」
外の様子を確認しようとインターフォンのモニターを覗くと主張が激しい「目」のみが映っていた
とたんに理解する。
(はぁ…居留守つかお)
宅配でも回覧板でもないことはあきらかだ。なんならもっとずっとダルそうなことになりそうだと察する。
最近のピンポンダッシュは、ダッシュせずカメラをのぞき込んでチキンレースするのが主流なのだろうか?まぁ、確かにそっちのほうが面白そうではあるが…
階段を上り、まだ暗く重い雰囲気が漂う自分の部屋にもどる。テレビなどをつけてしまうと音で居留守がばれてしまいそうなので念のため布団の中に潜る
ピィ、ピィ、ピィ、ピィ、ピィーンポーン
「うるさっ!」
ドアの向こうにいるヤバいやつが、なかなか誰も出てこない事にしびれを切らしチャイムを連打し始める。
「110番でなんとかなるかな…はやくどっか行ってくれよ。」
カチャッ! バァァン!
「え?」
あきらかにドアのカギを開けた時の音がきこえた……なんならすごい勢いでドアまで開けられた。
唯一の家のカギを持っている父さんなら、わざわざチャイムを鳴らすなんて面倒なことはしないはずだ。
「金目の物なんてうちにはないよ~はやくかえって~」
民家をピッキングだなんて非効率極まりない。ただの幻聴だろう。幻聴…であってくれ。
家中を闊歩するような異音はだんだんと速くなり、いつのまにか。歩きだったのが走るように変わっている。
それに比例するように家中の捜索は終わっていくようで、今度は二階へと進んでくるようだ。
「本格的にやばくね…」
ついに自分の部屋のとびらの前まで音が近づくと、玄関同様、すごい勢いで扉がひらかれた。
「生きてますわよねえ!!」
人の生死を心配する大声が部屋中に響いた。
PPW 18日目 青碧実家にて
「なにか、遠い過去を懐かしむ顔してません?」
「なにその顔…いやぁ、よくよく考えたら、ミライとの出会いって結構やばいなっておもって」
「あはは…たしかにふつうの出会い方ではありませんでしたね。」(運命的で、理想的で、完璧で、ロマンチックで)
「あのときのミライの顔、すごかったよ」
「そうなんですか?」
「涙なのか鼻水なのかよだれなのかもしかしたらおしっ…
「ちょおっと!!待ってください。水です。川の水です。あれは水です!」
「いやー、今思い出しても面白いねえ。いまのミライと、あんときのミライが違いすぎて面白さに拍車かけてるよ」
「忘れてください!あのころは自分の中でも黒歴史と化してるんですからっ!」
「超記憶なめんな~」
「くううっふうう゛うぅううう゛ぅっぁああああ゛あ゛ぁ」
(ほんとに…あのときの今にも消えてなくなりそうな目をしていたころとは大違いっ)




