人生変える運命の出会い
目の前にオレよりも少しだけ背が小さい少年がいた。
その少年は泣きじゃくるなんて言葉では生ぬいほどに、涙を流し、鼻水を垂らし、口を大きく開け泣き叫んでいた。
年はだいたい12歳ほどだろう。
よくもまあ、12歳にもなってこんなにもだらしなく、恥を捨てて泣けるものだ。
見ているだけで、共感性羞恥というべき感覚が背筋を襲いゾワゾワしてくる
だがその少年が泣いている理由はすぐに理解できた。
理解すると、そんな号泣を誰も止めようとはしないだろう。そもそも止められるはずもない。
「男の子だから泣くな」、「いい年だろ泣くな」そんな言葉を、今この瞬間は誰もかけない。かけられない。
かけてはいけないとまで思わせてしまうような凄惨な光景。
空気までもが焦げていると錯覚するほどの焼けこげた臭い
焦げた臭いの中を鉄臭さと焼け焦げた肉と油の臭いがかき分けて鼻腔をつんざく
ガラスの破片が飛び散り、炎の光を反射してキラキラと輝いている。
ただでさえ強かった炎は、ガソリンに引火しさらに強まる。徐々に周りには思わぬ通行止めを喰らった車が渋滞を起こし始める。
何事かと思い車から降りた人間は、炎の渦の中を絶望の目で傍観している少年を見て悟る。
その中の何人かのお人好しが、今できる最大限の試行錯誤を重ねようと試みる。
救出を試みたお人好しな人間は火の力が強まると徐々に諦めの色を濃くする。
早々に諦めに堕ちた人間は少年に哀れみの目を向けてくる。
哀れみの目の量に比例して少年の泣き声は大きくなる。
絶望感と無力感、怒り、憎しみ、悲しみ、苦しみ
この世の全ての負の感情を一度に背負わされた少年は泣き叫ぶことでしかこの感情を表現できない。
泣き叫んでもまだ表現しきれない負の感情を、少年は限界まで表現をしようとし、それまで以上に声を張り上げる。
やがてその大きくなった泣き声は、近づいてくる救急車のサイレンさえかき消した。
一瞬で場面が切り替わる。
黒色のスーツのような服を着ている先ほどの少年が、人間がしてはいけない表情をして大きな川にかかる橋の上に立っていた。
これが俗に言う「思い詰めた顔」と言うものなのだろうか。だがそれを「思い詰めた顔」と表現するにはあまりにも違和感がある。
と言うのも、その少年の顔は確かに「思い詰めた顔」ではあるのだが、なんというか「思い詰めた先の顔」をしている。それはまるで生きていることに疲れてしまった自殺志願者のようであった。
周りに人の気配はなく、車の一台すら通らない。それもそのはずである。今、ちょうどこの辺りを台風が直撃しているらしい。
それもかなり大きいものらしく、停電や土砂崩れ、川の氾濫があちらこちらで起きているそうだ。
傘もカッパも着ていない少年に大量に大きめな雨粒が降り注ぐ。その量と勢いは夏のゲリラ豪雨でさえ軽く超えているだろう。
台風の持ってきた雨により水量がいつもの何倍にも増した川は茶色を超え、ドス黒くなり今にも堤防を破壊して街へと侵食しそうだ。
そんな川にわざわざ近づくような人間は、よほどの命知らずか命要らずぐらいだろう。
少年は、そんな川にかかる橋の中央まで進むと
少しの躊躇いも見せずに、頭から飛び込んだ。
一瞬で場面が切り替わる
「……〜い!」
「だいじょうぶ!?お〜い!!僕の声聞こえる?お〜い!」
男の声と言われれば男の声、女の声と言われれば女の声にも聞こえるような中性的な声が激しい雨の中で響く。
声の主は少年に向かって一生懸命に呼びかけている。
「誰か〜!!救急しゃ…って誰もいるわけないか」
どうやら自殺を企てるような愚かな少年を助けようとしているようだ。
少年の目は覚める気配がない。というか意識がないようだ
川の底に頭を打ったのか、呼吸ができずにいたからなのか、漂流物にでも頭をぶつけたか。あるいはその全てか。
だいぶ水に浸かったため体温も急激に下がっているだろう。
ほっておけば少年の望み通り確実に死ねるだろう。
「えっと、まずは気道の確保か」
だが、どうやら声の主はほっておいてはくれないようだ。片手を少年の額に当て、もう一方の手の人差し指と中指の2本を下あごの先にあて、持ち上げ気道の確保を図る。
まるで、ついさっき保健の授業かなんかで、やり方を教わったかのように手際よく進める。
「やっば、呼吸してない…早く人工呼吸しないと……」
一瞬で場面が切り替わる。(オイ!走馬灯!!今、いいとこだっただろが!!!)
オレの意見などお構いなしに無情にも場面が変わる
「よかった〜。やっと目、覚ました。」
声の主の応急処置のおかげで一命を取り留めた少年は目を開く。
雨はいつの間にか上がっていた。
太陽が顔を出している。その周りをドーナツ状に雲がもくもくと曇ったままだ。
台風の目というものなのだろう。ちょうどよく台風の目の真ん中に立ち会えるなんて、人生で何度も起こることではないだろう。
そんな奇跡にでくわしているにも関わらず少年は、そのことになんの感情も抱いていない。
少年が何を考えているのか、どんな感情を抱いているのか。
それは少年の目を見れば明らかだった。
声の主を見るなり、少年の顔がみるみると赤く染まる。
「おはようさん」
少年には天使にでも見えているであろう声の主が声をかける
少年にとってその感覚は初めてのものだった。
だがその少年はこの感覚がなんなのかわからないほど無知ではなかった。
絶望を味わい苦しみを味わうとすぐに生を諦め、死を求めてしまうほどのクソ雑魚メンタルを持つ少年は、初めての恋をする。
一瞬で場面が切り替わる
PPW 18日目 青碧実家にて
「次の話題は何にしましょうか…あっ、お茶がなくなってしまいました。ちょっととってきますね」
「あっ、それなら僕が出してあげようか?」
「出…す…?」
「魔法使えるようになった話はしたじゃん?」
「はい」
「この世界の魔法って結構便利でさ、想像力次第で魔力ってどんなものにもなるんだよ。」
「そうなんですか!?」
「うん、たとえば爆発とか想像したら爆発になるし、壁とか想像したら壁を作れたり」
「すごいですね…」
「だからこの魔力を使えばルイボスティーも出せるんじゃないかなって」
「なるほど」
(ん?青碧さんの魔力を使った液体?魔力って言っちゃえば青碧さんの一部…)
「どうかな?」
「ぜひ、お願いします。」
(おいおいおいおい!!実質、青碧さんの体液じゃねええええかああああああああああああああ!!!)
「ほいっと!」
「これが、魔法!指先からあったかいルイボスティーが出せるなんて!!」
(こんなもん紛れもなく体液じゃねええええかあああああああああ)
「ふっふ〜ん!どんなもんだい!」
「すみません。おかわりいいですか?」
(体液!!体液!!体液!!体液!!体液!!体液!!体液!!体液!!体液!!体液!!)
「飲むのはや!?」
「喉が渇いていたもので…」
「そっか、もっと早く言ってあげればよかったね、ごめんごめん」
(PPWって空腹すらあんまり感じないはずなんだけどな、ましてや喉の渇きなんて、、、相当喉乾いてたんだな…)
「すみません、おかわりください」
「!?」
「いや、喉が渇いているもので…」
「もしかしてルイボスティー嫌い?」
「?」




