見慣れた快晴
死んだ、の?
え?
なぜ死んだ筈の世界で僕は『思考』ができているんだ?もしかして死んで無いとか、あります?
目を開けた時に、知らない天井とかある感じっすか?
ワンチャン、生と死の境目をさまよってたりします?
でも全く五感を感じれないのですが…これはただ麻痺ってるだけですよね?
死んだのではないかという結論を否定したい気持ちが込み上げて来てそれ以上の『思考』ができない。
するといきなりあたりがものすごい光に包まれた。こんなこと現実世界では起きえない。
(やっぱ死んだのか…せめて死んだなら転生ぐらいはさせてくれよ)
そんなどうでもいいことを考えていたら今まで感じなくて違和感しかなかった五感がだんだんと取り戻されて行った。足の裏側の方からは草と地面の感覚
(異世界ほっぽりだし系か?)
草や木などのマイナスイオンがたっぷりそうな匂いや木々の擦れる音も聞こえてきた
(うわっ、よりによって大自然かよ。実はこの森特別強い魔物ばっか現れる森で、魔物倒してたらいつの間にか世界最強パターンか?それともスライムなんかをテイムして森でぬくぬくスローライフパターンか?現代技術駆使して街外れの村超進化パターンかもしれんな、、どちらにせよ転生はできたっぽいな)
ひとまずは一安心だ、まだ希望は残されている。まだ、五感全て取り戻すには時間がかかりそうなので脳内に描いた異世界転生パターンを色々考えてみる。できれば神様的存在から能力もらう系が良かったが贅沢は言ってられない。
そんなことを考えていたら最後の五感である視覚が帰ってきた。
最初に目に入ったのは一つの木製の看板だった。が、一つ確認しなければならないことがあるので上を向いた。
「明らかに『知らない天井』があるような雰囲気じゃないことは感じていたが、やっぱそうだよな…見慣れた快晴だな」
空は天井どころか雲ひとつない気持ちのいいくらいの青空だ。さっき引かれたばっかだというのにこんなことを考えてる僕は案外、能天気なのかもしれない(天気だけに)
そんなことは今どうでもいい
「なんだ?これ」
気持ちを切り替えて頭を異世界で塗り替える
さっきまで妄想していた異世界パターンのどれでもない答えが返ってきて、『?』が浮かび上がってきたが、かろうじて処理できているようだ。自分でも正直びっくりな情報処理能力である。さすがはたくさんの転生ものを読んできただけではある。
「とりあえず、看板の内容を読まないとはじまるものも始まらないよな…」
いつもと違いすぎる環境に興奮が収まらず、独り言が止まらなくなりつつある。のでこれ以上時間をかけて変なことを考える前に早急に看板を読む必要がありそうだ。
《ここは準備の世界、略してPPWだ。異世界へ転生するものが急に飛ばされて何かすることもなく野垂れ死ぬのを防ぐ空間、ここで修行をすると元居た世界の20倍のスピードで成長することができる。これからあなたの学校の卒業生5名が揃うまでここで〝異世界″で生き抜くための準備をしてもらう。》
とても綺麗な字で書かれていた。もしかしたら神的存在が書いたものかもしれないどちらにしろ言いたいことはわかった。
(こういうのって大抵小さく重要なことが描いてあったりするものだけど。特にそんなのは見つかんないな…ん?)
看板の裏を見てみると表の字とは対照的に殴り書きで描いた文字のようなものが描いてあるが、読めるわけでもなく。よくわからないということしかわからない
(まあいっか、いつかわかるよね。とりあえず転生はまだしてないのかな?これからその準備をするっぽいし)
内容を簡単にまとめると、異世界行くけど今のままだと野垂れ死ぬから修行せいっ!ということらしい。とりあえずは看板に従って修行しとけばいいのだろう。
そう思うとだんだんと転生するという実感が湧いて来てワクワクしてくる、ファンタジー好きの血が騒いでいる。
今の所、問題点と言えば一つだけしか見当たらない
「これから修行するってったって、どこですりゃいいんだよー!!」
一日分の喉を使うような大声で突っ込んだ、理由は単純明白
あたりが確認できるだけでも『木』と『林』と『森』しかないからだ
「せめて風景は転生らしくナーロッパ風にしてくれよ!」