こんなゲーム、もう絶対やらねえ
残りの体力をすべて使う勢いで走り寄った。
「どっからどう見てもレースゲームだよなあ」
ゲームセンターで見かけるタイプのアーケード型なためテンションもうなぎ上りだ。
もちろんこれで時間をつぶして、これからの暇全てを解消できることはないだろうがレースゲームというのは意外と奥が深い。すぐに飽きてしまうことはないだろう、今は少しでも早くこの「暇」をなくしたいという一心しかない。その後に訪れるであろう第二の暇タイムについてはその時考えればいい
「だれか死んでくれたらなあ」
不謹慎極まりないことを発しながらゲーム機に座る。
だが改めて考えるとなぜこれがこんなところにあるのか疑問が浮かんでくる。これから行く場所は「剣と魔法のファンタジー世界」という言葉がぴったりな世界なはずだ、これとそれにどういった関係があるのだろう。
僕自身まったくそういう世界を知らないわけではない。一人の時間が多くラノベもかなり読んでいたほうだ、
「まぁミライに比べればまだまだだけど。」
『ミライ』というのは元居た学校でかなりこういう状況になる本を読んでいて僕にそういう面白い本をよく教えてくれる友人だ。転生作品だけでも百五十種類以上は見たと言っていた。典型的な『オタク』というやつだ。転生ものにはまりすぎて僕に自殺の相談をしてきたこともある、その時は流石にやばいと感じ全力で止めに行った。
「けどなぁ~今一番来てほしいのはミライなんだよな~」
とらえ方によってはミライに不謹慎ともとれる言葉を吐きながら懐かしい記憶を思い出しながら、スタートボタンと思われるボタンを押す。
「ポチッとな」
ディスプレイが起動して真っ白に光ったかと思うと文字が浮かびがってきた
(【トラック運転席】?)
どうやら、これはレースゲームではなくトラックの運転ができるシュミレーションゲームのようだっただった。思っていたものとは違い、ショックで思わずでため息が出てしまう。
「なんも思い通りにいかんな!この世界は!!レースをさせてくれよ、なんでこんな教習所みたいなことさせんだ」(教習所いったことないけど)
けれど、せっかく見つけた娯楽なのだ「暇だあー」と叫びながら走るのに比べたら100倍楽しい。
次に進むという選択肢が表示されていたため選択すると
警告
本当にやるんですか?大丈夫ですか?正気ですか?
こんなのがでてきた…
(いやなぜかものすごく心配されたんですけどー‼えっ、これそんなにやばいの?)
操作感がリアルで酔いやすいという意味なのだろうか?車酔いはしやすい方なので、あまりグラグラするのは勘弁だ。もしほんとに吐きそうになったらやめればいいと結論付け、警告が出てきたのも気にせずやることにする。
画面に出てきたのは見覚えのある道路
「あれっ?」
というか十七日ほど前、最後に見た元の世界の自分の住んでいた国である夜弥国ではよくあった道路だ。
「かなりリアルだなぁ」
(この世界にずっといると飽きるのは目に見えてるからこれは、元の世界感を出す『看板の主』のやさしさかな?)
「それにしても懐かしい…まだ十七日しかたってないけど、、、」
そう思いながらゲーム感覚でトラック?こちら側からは、フロントガラスから見える景色からしかわからいないので何を運転しているのかはよく分からないが【トラック運転席】と書いたのでトラックであろう。そんな乗り物を運転していたら
「えっ‼あれって…」
目の前には、さっきまでこの世界に来てほしいな、と思っていたミライの姿があった。どうやら背景の夜弥国風の世界は僕の記憶を頼りにした再現マップのようなもののようだ。ミライに来てほしいともいすぎてついにはミライまでゲームに出してしまった。
「何してんだろ?信号待ちか?いやでも今、緑だしなぁ~」
青に光っている横断歩道の前で渡るわけでもなくミライがウロウロしている。気づいたら、横断歩道の信号が赤に変わっていた。
(ほんとに何してんだ?……あっ!…バグかなんかか?)
リアルすぎて忘れて少し没頭してしまっていたがこれはゲームだ。バグがあったとしてもなにもおかしくはない。
そう思うと、心なしかほかのNPCとは違い、目に光が宿っていない気がする。
「こんなリアルなゲームでも、目にハイライトがハイラナイトゆうことがあるんだな~」
つまらない&聞く人がいないというダブルコンボで心に傷つくジョークを口に出して、とりあえずバグということで納得して、車道側の信号が青になったのでトラックを発進させた。
運転しているトラックは、かなり大きいらしく信号が物凄く近くに見える。
(こりゃあ、下見て運転するの大変だな誰かひいちゃってもわからないんじゃないか)
事故なんて起こしてしまえばどうなるのかわからない。もしかしたらその衝突の衝撃がこっちにまでしっかりと伝わってくるかもしれない。異世界では現実世界の常識は通用しない、細心の注意を払って運転をする。
ただでさえ道路が見ずらいのにくわえ元々身長は高いほうではないのでもっと下の様子が見づらい。道を見ずに運転など危険運転甚だしい。
最初にあった注意書きはこのことが関係しているのかもしれない、だとしたら低身長だと機械に馬鹿にされたということになるんだが!?
そんな余計なことばかり考えて運転していると、突然車に異変が起きた。
アクセルを踏んでも前に進まなくなってしまったのだ。というか前輪が宙で回転している。画面も少しうえを向いてしまって、映る空の面積が多くなっている。どうやら何かを踏んでそのまま乗りあがってしまったようだ。
(この車、四駆じゃないんだ…)
「うわっと‼えっ何?何?なになに…わあああああぁ‼」
絶叫、悲鳴とにかく生きている中で今まで出したことのない声が出た。
下を見てみると地面が赤く、黒く、グロく、染まっていたっていた。
”誰か”を踏んでしまったらしい。
あいにくと、グロ体制など僕にはみじんもない。どころか、トラウマ持ちである。昔の嫌な記憶もフラッシュバックしてしまい、二倍気持ち悪い。忘れたいのに忘れられない嫌な記憶だ。
(めっちゃリアル…おえっ、ゲームをここまでリアルにしなくても…)
〝何が〟 とは言わないがいろいろ出てしまっている。体の部位については僕も詳しいわけではないのでこの場合『言わない』ではなく『言えない』という方が正しいだろう。
とにかく、血液以外の何かが飛び出している。モザイク処理ぐらいはしてほしかった。
「……ぉ、げぇ。グハッ…゛お゛ぇ゛ぇ」
唐突にこんなことが起きてしまうと反射的に気持ち悪くなってくる。嘔吐してしまいそうになる。吐き出してしまいたくなる。だが、精神力と根性すべての力を使い、のどのあたりのギリギリのところで耐えた。
のどのあたりは酸っぱくなって今すぐにでもうがいがしたい……
こんなところまでリアルを追求しなくてもいい気がする。
(あんときの注意書きって……)
最初にあった注意書きの恐ろしさを再確認できた。
「って‼もっと具体的に書けって‼こんなことが起きるぐらいならやらなかったわ‼轢いちゃったNPCさんほんっとおにごめんなさい‼」
のどの気持ち悪さと、精神的な気持ち悪さ、すべてを紛らわせるために大声を出す。
その後数分間ゲームの注意書きへの愚痴と轢いてしまったNPCへの謝罪を繰り返していた。なぜか謝らなくてはならないような気がしてやまなかったのでその気が収まるまで全力で謝った。
ただでさえトラウマがあってひどいのにこれ以上トラウマを増やさせないでもらいたい。
何回目かの謝罪をした瞬間、あたりが光に包まれた太陽が照り付けるなんて生易しい光ではない。もっと神々しく、もっと奇跡的で、もっと運命的で、感動的なほどの金色の光だった。
きっとこの光は魔法でも再現はできないだろう。魔法よりももっと、ずっと上位の存在であることは素人の僕でもわかる。
そして、この光が何の光なのかもしっかりと記憶にある。前に見たときは一人称の視点で当事者として見ていたため気づくのが遅れたが、これは、、、
「よおおぉうこそそおお!!こちら側のせかいへえ゛え゛え!!!」