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自称道化師の喜劇道~異世界出身のお調子者と魔族の相棒の陽気な珍道中~  作者: 夜月紅輝
第2章 異世界温泉復興物語

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第39話 魔神像#2

「グガアアアァァァ!」


 レイモンドが斬り落とした腕の痛みを感じた様子で、魔神像は叫び出す。

 その隙を突くようにミュウリンが壁を伝って接近した。


 壁を蹴って魔神像の眼前へと迫る。

 右手に装着した鋭い爪のガントレットを思いっきり振るった。


常闇の爪(ダーククロー)


 ミュウリンが空を引っ掻くと同時に放たれた暗闇のような色の斬撃。

 その攻撃は魔神像が咄嗟に引き戻した手で防がれた。

 しかし、威力は絶大なようでその手は手首から下がバラバラに斬り落とされた。


「ガァッ!」


「「っ!」」


 直後、魔神像は大きく口を開けて短く咆哮した。

 その声は衝撃波を伴っており、空中にいたレイモンドとミュウリンを同時に襲う。


 衝撃波で吹き飛ばされた二人であったが、高い身体能力で安全に着地。

 そこに再び構えられたいくつもの拳が天井に現れる。

 再び拳の雨を降らせるようだ。


「レイちゃん、あの攻撃だったらボクも避けられる。

 だから、今度は二人で同時に攻めにかかろう」


「あぁ、わか――?」


 その時、レイモンドは真下の地面から僅かな微振動を感じた。

 天井に並ぶ拳の数で上に注視が向きがちだ。

 しかしだからこそ、単純な攻撃が意外と刺さったりする。


「ミュウリン!」


 レイモンドはすぐさま走り出した。

 ミュウリンに接近し、彼女を小脇に抱えると、真下に盾を構える。


―――ガンッ


 直後、ミュウリンの足元から土で出来たいくつもの針が飛び出してきた。

 だが、その不意打ちは勘のいいレイモンドの反応速度と、彼女が持つ盾によって防がれる。


「あ、ありがと~。助かったよ」


「お前が小柄で助かった。おかげでこっちも無傷だ。

 にしても、お前あんまり戦闘したことないだろ?」


「えへへ、お恥ずかしながら。村で食料調達のために魔物を少し狩ってたぐらいなんだ。

 村の近くの森は一体一体が強者だから、基本群れることなくてさ」


「んなことだろうと思ったよ。ともかく、アイツはこっちの裏をかこうとするほどには知性がある。

 今度はそれを考慮して動け。こっちも全部を守れるわけじゃねぇからな――来るぞ!」


 レイモンドの掛け声と同時に、再び振り下ろされる拳の雨。

 攻撃速度は先ほどよりも早く、振動と地鳴りが繰り返される。


 敵本体に攻撃しようとも、これだけ手数があると厄介。

 そこで二人はまず戦力を削ることを優先した。

 やることは単純明快。腕を減らせばいい。


錐牙突撃(ギガホーン)


 レイモンドは直上に落ちてくる拳を盾でパリィする。

 その反動を推進力に変えて踏み込むと、目線上に並ぶ拳目掛けて剣を突いた。


 剣がから飛び出した斬撃はランスのように鋭く、直線状に並ぶ手首に風穴を開けた。

 これによって二本の腕を削ることに成功した。


「黒龍拳」


 ミュウリンは両手のガントレットに魔力を込めると躱した拳を殴った。

 たったそれだけで拳は木っ端みじんに吹き飛んでいく。


 躱して攻撃し、防ぎ弾いて、誘って攻撃しと真上から降り注ぐ拳をあっという間にいくつも削った。

 それこそレイモンドよりも早いペースだ。


「やるな!」


「えへへ、これぐらい任せてよっ!」


 ミュウリンは思いっきり上へ跳躍する。

 その数秒後、ミュウリンの真下から掴むような土で出来た巨大な手が現れた。

 しかし、その手がその少女を掴むことは叶わなかった。


「ガァア!」


 だが、それは魔神像の攻撃の手が無くなったことにはならない。

 魔神像の叫びによって天井、四方の壁、床というあらゆる場所から土の拳が現れた。

 それはただ一点を目指して伸びていく。


全方位防護壁(オールプロテクト)


 土の手が伸びた先にいるのはミュウリンだ。

 その手の進行方向に気付いたレイモンドは、素早くミュウリンに近づいて魔法障壁を作る。


「ありがと、レイちゃん」


「気にすんな。あれだけ暴れればそりゃヘイトも向くだろうさ。

 つまり、役割を果たせてないオレの怠慢だ」


―――ギギギギッ


 レイモンドが作り出した球体の障壁を囲うように、土の手が輪郭を崩して結合し始めた。

 やがて、全方位が土に覆われ、強い圧力によって球体が悲鳴を上げ始めた。


「レイちゃん、大丈夫?」


 心配するミュウリンをよそに、レイモンドは不敵な笑みを浮かべる。


「こんなに力をくれるたぁ親切な奴だな。ミュウリン、飛べ!」


「え? う、うん、わかった」


 直後、レイモンドは障壁を解いた。

 すぐさま障壁で防いでいた手がレイモンド達に迫る。

 レイモンドは至って冷静に剣を構えた。


「さっきまでの蓄積ダメージ。お返してやるぜ――円月輪」


 剛壁盾アルバランには物理衝撃に特化してる意外にももう一つ特徴がある。

 それがチャージ&ファイヤである。


 レイモンドが盾で防いできた攻撃や衝撃はアルバランに蓄積される。

 そして、それは使用者の任意で一発限りの攻撃力へと変換される。


 レイモンドが剣を一回転させるように振るった。

 その攻撃にアルバランが蓄積したダメージがバフとして乗っかり、凄まじい斬撃へと変化する。


―――ザンッ


 レイモンドの一閃が周囲の土に刻まれた。

 瞬間、全方位を囲っていた土は弾け飛び、直上に魔神像の顔が現れた。


 レイモンドは体重を後ろにかけ、地面と水平になるように体勢を変える。

 同時に、右足を大きく振りかぶった。

 その右足に跳躍して落下したミュウリンが着地する。


「行くぞ、ミュウリン!」


「うん!」


 レイモンドは右足を振り上げる。

 その勢いとミュウリン自身の跳躍で魔神像の眼前に接近した。

 ミュウリンは両手の爪を立てる。


常闇の双爪(ダーククロス)


「ガアアアアァァァァ!」


 ミュウリンが両腕をクロスさせて放った爪の斬撃。

 それは魔神像の両眼を切り裂いて潰した。


 魔神像は潰された両眼を残り僅かな両手で塞ぎ、痛みに叫んだ。

 しかしその一方で、その巨像の残り一つの目は憎き敵を捉えていた。


 魔神像は残り二つつとなった肩甲骨から生える手の内の一つで、空中を落ちるミュウリンを弾き飛ばした。


「ミュウリン! 間に合ってくれよ!――俊足」


 一足先に地面に着地していたレイモンドは脚力を強化し走り出した。

 向かう先はミュウリンが叩きつけられるであろう壁。

 地面を走り、蹴って跳び、壁を十数歩走って、また跳んだ。


 レイモンドは壁に叩きつけられるよりも早く、ミュウリンの進行方向の先回りに成功した。


 その数秒後、ミュウリンが飛んで来る。

 レイモンドに受け止められながら壁へと進んだ。

 しかし、レイモンドがクッションとなったおかげで叩きつけられることは無かった。


「ガアアア!」


 魔神像から拳が飛んで来る。

 レイモンドはミュウリンを地面に投げ捨て、盾で拳を防いだ。

 その攻撃は一発で終わりではなかった。


 残りの三本の腕がマウントを取った人が一方的に殴りつけるように、一発一発が重い一撃となって殴りつけられる。


 レイモンドは咄嗟に盾と同時に魔力障壁も利用して防いでいた。

 しかし、それはしっかりと魔力で練られていない状態での使用されたものであり、耐久度はさしてある物ではなかった。

 加えて、それは一方向に対してだった。


「がはっ!」


 レイモンドの背後から突如として重たい衝撃が走る。

 彼女の背後の壁から現れたのは、魔神像によって作られた土の拳であった。


「レイちゃん!」


 意表を突かれた一撃にレイモンドは死に体となる。

 その姿を見たミュウリンはすぐに跳躍して手を伸ばしながら近づくが、それはあまりにも短かった。


―――バシン


 レイモンドは魔神像の手に叩き落とされた。

 反対側の壁に跳び、勢いで壁に弾かれ、地面に向かう。

 そこでも弾かれて、反対側の壁に当たってようやく止まった。


 レイモンドは額を切ったようで、顔には血が流れる。

 その血が目に入り、視界の一部が赤く染まり始めた。

 そして、レイモンドの意識はブラックアウトした。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')


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