表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
191/193

第191話 魔王城のリベンジ戦#1

 天上界.....そこは本来人が足を踏み入れられない場所である。

 そこへ行けるのは神の資格を得たのみであり、つまり神が認めたもの。

 学問の功績であったり、武術の偉業であったり、何かしらが神に認められた時、人は人の次元を超える。


 そんな場所に二人の男女が降り立った、否、召喚された。

 その二人の名はナナシとミュウリン。元勇者と魔王の娘である。

 そんな二人がやってきた目的は一つ――かつての因縁に決着をつけるため。


「ここが天上界......なんだか幻想的な場所だね。

 雲の上っていうのかな.......でも、地面みたいに固いや」


「ミュウリンは初めてだったな。そ、ここが天上界。

 この周囲の景色も近いように見えて、実は無限にどこまでも続いてたりする。

 この空間自体が歪んでいるんだが......ま、左程気にする必要は無いかな」


 ミュウリンが見渡す先には、どこまでも青空が広がっていた。

 加えて、真上からは燦燦と輝く太陽が光を降らしている。

 まるでこの雲の上にある影を全て消し去るように。


「お出ましだ」


 ナナシの言葉を聞き、ミュウリンは視線を正面を向けた。

 すると、正面の白い雲はわかりやすく黒く染まっていき、空には黒い雷雲が伸びて空の半分ほどを覆った。


 直後、二人がいる雲を掴むように巨大な骨の手が現れる。

 その大きさだけでも優に五十メートルは超えていた。

 そして、やがて時間経過とともに上半身に、二人は顔を見上げた。


「お、おっきいねぇ~」


 首が痛くなるほど見上げた状態で、ミュウリンはやや頬を引きつらせながら言った。

 二人の前に現れたのは、全長百メートほどの巨大な骸骨の上半身だった。


 頭蓋骨は右目の部分に傷があり、そて額にはギロッと横に開く一つの目玉。

 また、腕は六本あり、全身に羽衣のような黒い瘴気が覆っていた。

 そう、この存在こそが魔王が勇者と共闘してまで倒そうとした邪神ファルディアートである。


「ナナシさん、これと六回も戦ったの?」


「まあね。もちろん、リュリシール様に手伝ってもらってだけど。

 そんでもってその”六”という数字はただの黒歴史さ。

 仕留めるチャンスが六度ありながら、それを逃したってんだからな」


「ボクは六度も瀕死に追い込める自信はないけどね」


 二人がファルディアートを見ながらそんな雑談をしていると、一方のファルディアートは額にある血走った瞳をナナシに向け苦言を吐いた。


「相変わらずしつこい男だな。だが、貴様の執念もそこまでだ。

 なぜなら、今回の世界線は下界で死を遂げた獣神と呼ばれる畜生の力を得たからな」


「それで勝てると思い込んでるお前が可愛く見えてくるぜ。

 言っとくが、変わったのはお前だけじゃない。隣にいる相棒も違うぜ?」


 ナナシがそう言うと、ファルディアートはミュウリンに視線を向け鼻で笑った。


「フッ、たかだか小娘一人とはな。

 それもあの忌々しい女神(おんな)の代わりがそれとは、どうやらあの女神も焼きが回ったようだな」


「それを決めるのはまだ早いぜ。

 なんたって、俺の相棒はえげつない発想でもって、勇者を捕まえちまったんだからな」


「ちょっとナナシさん! 恥ずかしいから止めて!」


 いざ最終決戦という時に、道化師っぽく振る舞うナナシ。

 そんなナナシにミュウリンは一瞬怒るも、すぐに表情を崩す。

 なぜなら、そこにいるのは勇者のコスプレをした道化師ということだからだ。

 代わりに、ミュウリンはその怒りをファルディアートに向けた。


「邪神様.....いや、邪神ファルディアート。

 あなたは魔族にとっての最高神であり、誰もが崇め敬う存在だった。

 そして、それはボクも同じで、小さい頃からそう教えられてきた」


「フッ、そうだろうな。なら、何故貴様がこの場にいる。

 それも憎き勇者の相棒という存在となってな」


 その質問に、ミュウリンは鼻で笑った。


「そりゃ、当然あなたがボクのお父様を殺したからだよ。

 それに今のボクの目標は魔族と人族の共存。つまりは平和を作ること。

 そこに今更支配だなんて古臭い価値観はいらないんだよ。

 だからさ――老害はさっさと消えてくれない?」


 瞬間、その言葉に反応したのはテンションマックスの道化師だ。


「ヒュ~♪ よ、ミュウリンカッコいいー!

 ギルド(いち)、街(いち)、世界一!

 全くこれだから、俺の相棒は最高だぜ!」


「ちょっとちょっとナナシさん、そこは”愛し”の相棒でしょ」


「まさかのミュウリンからのラブコール!? こりゃ口の中が甘くなるぜ」


 その光景はさながらいつかの日の二人のやり取りだった。

 ミュウリンがナナシを助け、ナナシは勇者という身から道化師へジョブチェンジ。

 そして、やや空回っている道化師に話を合わせるように、ミュウリンも悪ノリする。


 もはやバカップルの甘ったるいとしか思えない空間。

 その雰囲気はそれはもう見事にファルディアートの地雷を踏みぬいた。


「くぬぅぅぅぅ! 舐めくさりやがって!

 良いだろう、もういい加減貴様の顔を見るのはうんざりだ!

 そこの敬意のクソもない小娘とともに屠ってくれよう!

 今度こそ貴様から逃げる世界を終わらせてやる!!」


「いいぜ、やってみろよ――抜剣、聖剣イメステリア!」


 そう言って、勇者は腰にある鞘を左手で掴み、柄を右手で掴んでスッと聖剣を引き抜いた。


「あいにくボクももう顔は見飽きたかな――魔龍装甲フルアーマーモード!」


 ミュウリンは全身に魔力を纏わせると、その魔力は暗黒な物質へと変化した。

 直後、その物質はミュウリンの全身にくっつき、鎧へと姿を変えていく。

 その姿はさながらどこかの暗黒騎士のようであり、尻尾まで装甲がついている。

 また、ミュウリンのメインウエポンである拳だけは、ガントレットの分装甲が厚くなっていた。


「何それ、ミュウリンのその姿初めて見る。超強そう」


「ボクのマジモードだよ。ま、使ったのなんて小さい頃にお父様に反抗した一度限りだけど」


「何それ詳しく聞いていい?」


「全部終わったらたっぷり話してあげる」


「いい加減、その調子乗った口を塞げー!」


 隙あらばイチャイチャするナナシとミュウリンに激怒したファルディアートによって、最終戦は唐突に火蓋を切られた。

 ファルディアートは空中に真っ黒い火球を無数に生み出すと、それをナナシ達に向かって発射。


 一方で、ナナシ達はそれを後ろに下がりながら躱した。

 そして、戦いが始まったことで意識を切り替えたナナシは、すぐさまミュウリンにファルディアートの攻略法を伝える。


「ミュウリン、基本的にファルディアートの使ってくる魔法は全て気をつけろ。

 その魔法は漏れなく呪いが付与されていて、ミュウリンの場合はペンダントがある程度守ってくれるだろうが、その耐久度もどこまで続くかはわからない」


「なら、基本避けるか、斬撃で弾いた方がいいってことだね」


「ああ、加えて、ファルディアートの全身に漂う瘴気.....あれも基本呪いだ。

 魔法に付与していない分強力で、たぶんミュウリンの方にも少しずつ蓄積される。

 俺の場合は<神聖浄化>でどうにかなるけど、ミュウリンは浄化方法がない。

 だから、基本的に俺が浄化で正気を追い払った箇所を攻撃してくれ」


「わかった。ちなみに、弱点は――」


「もちろん、あの邪な目さ」


「だよね!」


「行くぞ!」


 ナナシは声をかけ、先行して走り出す。その後ろをミュウリンは追いかけた。

 そんな二人に、ファルディアートは当然何もしないわけも無く、一度にたくさんの魔法を行使した。


「<黒炎>、<汚染水>、<黒死雷>、<土葬>、<風死牙>、召喚――<呪縛骨獣>」


 ファルディアートが放ったのは、最初に放った黒い火球だ。

 また同時に、空中に黒い水の斬撃、横に広がる黒い稲妻、黒い風のの槍を空中に同時展開し、それを弾幕のように放つ。


 さらには、雲の地面からナナシ達の動きに合わせ黒い剣山を生やし、並びに骨状態の大小様々な獣を召喚しナナシ達に突撃させた。


「光剣八閃」


常闇の斬撃(ダークパニッシャー)


 そんな視界を埋め尽くすような攻撃の数々に、ナナシ達は全てを紙一重で裁いていく。

 例えば、ナナシであれば、地面に魔力を感じればその位置から避けて剣山を躱し、飛んできた火球を剣で払う。


 さらに、飛んできた水の斬撃を躱しながら、横に広がる稲妻を跳躍して躱しつつ、その勢いのまま正面にいた骨獣の顔面を蹴り飛ばして粉砕し、体を捻って聖剣から斬撃を飛ばして風の槍を相殺。


 例えば、ミュウリンであれば、最初に向かってきた水の斬撃を躱し、直後よこに広がって来た稲妻を跳躍して回避する。


 その際、体を丸めながら横に回転することで真下から生えてきた剣山を躱し、同時に尻尾を振って斬撃で剣山の一部を切断すると、着地と同時にそれを左手で掴んで投げ飛ばした。


 それによって、向かって来ていた火球を土塊で相殺し、風の斬撃は上半身を大きく逸らすことで躱しながら、両手の爪を立て<常闇の双爪(ダーククロス)>でもって正面から押し寄せる骨獣を一蹴した。


「覇断斬波ァ!」


暗黒死弾(ブラックネビュラ)


 混沌とした普段幕の嵐を抜ければ、ナナシとミュウリンは空中に飛び出して攻撃を放った。


 ナナシが放ったのは突き攻撃による砲撃。

 しかし、当然単なる突きではなく、海を割るほどの威力の突きだ。


 また、ミュウリンは放ったのは空中に浮かべた黒い魔力の塊。

 それを数十と作り出して放ったのだ。その一つ一つが山に風穴を開ける威力を持つ。


 それらの攻撃は、最初のナナシの突きの砲撃によって、攻撃を防ごうとしたファルディアートの左副腕の一つを破壊し、さらに右副腕の一つにも損傷を与えた。


 また、その攻撃は<神聖浄化>が付与されており、砲撃に乗った魔力がファルディアートの瘴気フィールドを浄化して消し去った。


 その箇所に向かってミュウリンの山に穴を開ける威力の魔球が飛んでいき、やがて直撃。

 その攻撃で、ファルディアートの鎖骨の一部や左あばら、脊椎の一部が損傷した。


「おや、思った以上に柔らかいね。いや、違うか。

 ここまでナナシさんが削り続けてくれておかげか」


「それでもあそこまでのダメージが出せてるのはミュウリンの力あってこそだよ。

 でも、本番はここからだ。なぜなら、俺達はようやくファルディアートの懐に入ったんだからね」


「そっか、了解。それに倒すためにはあの目を狙わなくちゃだしね」


「あぁ、このまま火力で押し切るぞ!」

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ