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第166話 友との共闘#2

 ゴエモンとザクロが向かってくる。

 そのことに気付いた魔神ハイネは真っ向から叩き潰すかのように走り出した。

 踏み込んだ地面は割れて凹み、影が置き去りになる。


「がぁ!」


 ハイネはゴエモンの前に現れると、勢い任せのドロップキックをかます。


「くっ!」


 ゴエモンは咄嗟に両手の刀をクロスさせ、防御態勢に入る。

 が、直撃は防げたものの、その衝撃は到底耐えられるものではなかった。

 結果、ゴエモンは吹き飛んでいく。


 地面をゴロゴロと転がるゴエモンは、回転のタイミングに合わせて起き上がる。

 されど、勢いは止まらない。刀を地面に刺してブレーキをかける。

 地面に出来た刀の痕が一メートルほど生まれた所で、勢いはようやく収束した。


「ぐがあ”!」


 すると、そんなゴエモンに、ハイネが追撃とばかりに迫る。

 その時、立ち塞がったのはザクロであった。


「止まれ、ハイネ!」


 ザクロは刀をハイネに向けつつ、声をかける。

 しかし、ハイネからの反応なく、そのままザクロの眼前に近づいた。

 距離感にザクロはビクッと体を震わせる。

 すると、ハイネはザクロの胸倉を掴み、近くの民家へ吹き飛ばした。


「すまねぇ、捕まえるために少し傷つけることになるぞ!」


 ザクロの時間稼ぎにより、完全に体勢を立て直したゴエモンは走り出した。

 そのまま勢いよく跳躍すると、全体重でもって頭上に掲げた刀を振り下ろす。


「固った!?」


 ゴエモンの攻撃はハイネの左腕一本で防がれた。

 カキンッと金属同士がぶつかったような音を聞き、ゴエモンは目を開かせる。

 魔神が強い存在であることは、実際に戦ったミュウリンとレイモンドから聞き及んでいたが、まさかここまでとは、とゴエモンは歯噛みする。


「がぁ!」


 ハイネが左腕を払い、その勢いでゴエモンは後方に飛ぶ。

 ゴエモンが上手く着地した直後、その一瞬を狙ってハイネが突っ込んできた。


 大きく右手を振り被ったハイネの攻撃を、ゴエモンが後ろに下がって躱せば、空ぶった拳は地面を叩き、そこには直径五メートルほどクレーターが生まれた。


 その後、ハイネに再び距離を詰められたゴエモンは、防戦一方の戦いを余儀なくされた。

 拳や蹴りの一発一発が一撃必殺。当たるわけにはいかない。

 加えて、ゴエモンが隙を見て反撃しようとも刃が通らない。


 魔神となったハイネはまさに最強の矛と盾を兼ね備えた存在だ。

 ゴエモンの攻撃が聞かないことにハイネも気づいたのか、ゴエモンの一切の反撃を無視して攻撃に注力し始める。


「くっ、普通の攻撃じゃダメだ。もっと強い攻撃じゃないと!」


 ゴエモンはチラッとザクロを吹き飛ばされた方向を見て、グッと奥歯を噛みしめる。


「許せよ、ザクロ!」


 ゴエモンは前蹴りで距離を作る。

 ハイネはビクともしないので、ゴエモンが後ろに下がった感じだ。

 同時に、両手の刀にボワッと炎を纏わせる。


「鬼炎桜」


 ゴエモンは蹴った足を踏み込み足とし、両手の刀をクロスさせるように振るった。

 瞬間、刀の軌道に合わせて空中に舞い散る炎は、桜の花びらのように舞っていく。

 その刀はハイネを袈裟斬りにし――ガキッと弾かれた。


「これでも無傷かよ!?」


 何も攻撃が通らないことに、ゴエモンは目を白黒させ、ブワッと冷や汗を噴き出した。

 攻撃に怯むわけでもなく、炎で火傷するわけでもなく、一切の防御をせずハイネに受け止められた。


「やべ!」


 攻撃の弾かれ直後のゴエモンの目の前で、ハイネが悠然と動く。

 両手を僅かに肘を曲げた状態で広げ、爪を立てるような手で、掌底をするような形で構えた


 今のゴエモンにもはや避ける余裕はない。

 時間もない。つまり、死がやってくる――


「止まれぇ!」


 その時、ザクロの制止の声が飛んだ。

 その言葉に、ハイネはビクッと一瞬反応し、止まった刹那の時間に、ハイネの腕に鉤縄が絡みつく。

 そんな一瞬のハイネの動きに、ゴエモンは「ん?」と首を傾げた。


「がぁ!」


 ハイネは鉤縄を外すと、目の前にいるゴエモンに再び襲い掛かる。

 ゴエモンはハイネからのラッシュというべき連続攻撃を耐えていれば、背後からザクロが近づき、奇襲した。


「なっ!?」


「あっぶね!?」


 ザクロの攻撃はハイネに躱される。

 すると、ザクロの脳天振り下ろし攻撃の刃はゴエモンまで届き、ゴエモンは咄嗟に刀でガードした。


 そんな二人同時に晒した隙に対し、ハイネはザクロの胸倉を掴み、再び吹き飛ばす。

 瞬間、目の前の光景を見ていたゴエモンの抱えていた疑念は確信に変わった。


 ゴエモンは咄嗟に後ろに下がり、距離を取る。

 そして、ハイネの動きに警戒しつつ、そそくさとザクロに近づいた。

 当然、そんな隙をハイネが狙わないはずもなく。

 すると、ゴエモンはその動きに合わせ、ザクロの襟を掴み、盾にするよう差し出した。


「お、おい! 何してんだゴエモン!?」


 ザクロは突然の友の奇行に、慌てふためいた声を出す。

 しかし、その言葉に、親友ことゴエモンはただ「まぁ、見てろ」と一言。

 そして、ハイネの振り被った攻撃が飛んでくる。


「っ!?」


 瞬きする暇もなくやってきたハイネの攻撃に、ザクロはスッと息を飲んだ。

 しかし、結果から言えば直撃することはなかった。

 というのも、ザクロの眼前で拳が止まったからだ。

 ただし、拳圧でザクロの顔がブルブルと揺れ、鼻から血は流れたが。


「やっぱりだ」


「へぁ?.......な、何が......一体何が起きたんだ?」


「混乱する気持ちはわかるが、それは後だ。今は俺に合わせて動け」


 頭にはてなマークがいっぱい浮かんでいるであろうザクロを引っ張り、ゴエモンは移動する。

 向かった場所は鉤縄が置かれている場所だ。

 そして、それの少し遠くの距離までやってくると、ゴエモンはザクロに再び指示を出した。


「ザクロ、俺が合図を出したら、お前は迷わずハイネさんに抱き着け」


「はぁ!? それはいくらなんでも無茶が過ぎるだろ!?

 お前の力ですらビクともしない相手だぞ!? 止められるはずがない!」


「無茶でもなんでも助けると決めた以上、男だったら最後まで腹くくれ!

 それともここまで来て諦めるってのか?」


「っ!......わかったよ! 諦めたくねぇしな。

 合図が出れば、死に物狂いで愛の証明してやるよ」


「あぁ、それでいい。男を見せろ、相棒」


 ゴエモンはザクロから離れ、盗塁を狙う野球選手のように、ハイネの動きを見ながら慎重に足を動かす。

 そして、ゴエモンとザクロの間に僅かな差が出来た時、ハイネは動き出した。


「今だ!」


「うおおおおぉぉぉぉ!」


 ゴエモンの指示と同時に、ザクロはタックルするように飛び込んだ。

 その行動はハイネの横側から直撃するも、相変わらずハイネはビクともしない。

 ハイネはザクロの服を掴み、振り払おうとする。


「絶対に離れんなよ!」


 ゴエモンはそう声をかけつつ、鉤縄を手に取り、ザクロの方へ向かった。

 すると、おもむろにザクロを一緒くたにするように、ハイネの体を鉤縄で縛り始める。

 その親友の行動にはザクロも目を剝いた。


「お前、何して――」


「これでいいんだよ! 信じろ!」


「何をだよ! 俺を殺す気か!?」


「死なねぇよ! 見とけって!」


 ハイネはゴエモンの拘束に抵抗するも、ザクロが抱き着いた影響かその動きは小さかった。

 そのうちにゴエモンはあっという間に、ハイネの全身に縄を巻いた。

 もちろん、ハイネの体にはザクロも一緒である。

 すると、ハイネはしばし小さな動きで暴れて見せたが、やがて動かなくなった。


「よし、一件落着だな。なぁ、ザクロ」


「え、なんで? 全っ然わからん」


 その事実にザクロはキョトンとした顔をした。

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)

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