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第133話 モンキチ道場の試練

 翌朝、十分な休息を得た勇者一行はサルジャー達に攫われたナナシを助けるため、出発の準備をしていた。

 そして、その作業が終わるとヒナリータが仲間達に声をかける。


「ヒナは準備できた。これからナナ兄を助けに行こうと思うけど、ミュウ姉達は準備出来てる?」


「うん、ばっちし~」


「いつでもいけるぜ」


「んじゃ、早いとこ大将を助けに向かうとしますか」


 仲間達の出発準備が整ってることをヒナリータが確認した所で彼女らは早速出発した。

 そんな集団で動く勇者一行の間に昨日のような不和は感じられない。

 ヒナリータもより勇者という立場にふさわしい凛々しい佇まいの風格を纏っていた。


 そして、勇者一行はすぐ近くのサルジャー達が入って行った洞窟へ入る。

 その洞窟は人が三人横に並んで歩けるぐらいの狭さだったが、洞窟特有の暗さというのはあまりなかった。

 というのも、壁にカガヤキゴケという苔が付着しており、それが光源代わりになっていたからだ。


 故に、そこまで視界不良にならず割と快適な探索時間が始まった。

 洞窟を進んでいけばムカデやらクモやら、さらには壁に擬態するヤモリなんかの魔物が現れたが、それらは絆によって連携を覚えた勇者一行の前では敵ではない。


 加えて、リーダーであるヒナリータの方針で大人達三人の優先レベル上げも始まり、現状レベル21のヒナリータのレベルに追いつくためのスパルタ魔物討伐をしていく。


 そんなこんなで魔物を倒しながら先に進み、宝箱を見つけては武器を新調したり、モンスターハウスに突撃したり、フロアボスと戦ったり、モンスターハウスに突撃したり、宝箱のミミックに襲われたり、全てのモンスターハウスを壊滅させたりと色々しながら下の階層に進むこと数時間。


 途中、しっかりと休憩も挟みつつ、次の階層に繋がる階段に勇者一行が足を踏み入れた時、最初に空気の違和感を感じ取ったのはヒナリータだった。


「ん? なんか微妙に空気が熱い気がする」


「そうか? 特に変化なく感じるが」


「嬢ちゃんが獣人で温度変化に鋭いってことじゃねぇか?」


「それもあるだろうけど、ほら下へ下へ向かってるしそれもあるんじゃないかな~」


 山の中腹にある洞窟へ潜ってからかれこれ数時間。

 もう十分に火山特有の場所に近づいていてもおかしくないタイミングだ。

 勇者一行はそんな会話をしつつ、真相を確かめるように先へ進む。

 すると、その答えは燃えるような熱気となって勇者一行に教えた。


「確かに、熱気を感じるようになってきたな。もううっすら汗をかいてきたぞ」


「幸いサウナとは違って蒸し暑さはねぇけどな。でも、これはこれで肌が焼けそうだ」


「たぶん近くにマグマが流れてたりするんだろうね。

 ならさ、こういう時に村で買ったアレの出番じゃない?」


 そう言ってミュウリンはとある効果音をつけながらアイテムを取り出す。


「テレテテッテテ~~! ヨクヒエール飲み薬~~~!」


「そういや、さっきの宝箱開ける時の“ごまだれ”然りなんだその掛け声?」


「ナナシさんがこの掛け声でアイテムを取り出せば皆大盛り上がりって言ってたから」


 ナナシがよくわからない情報をミュウリンに吹き込んでることにレイモンドは肩を竦めた。

 一方で、ゴエモンが「それの効果は?」と聞けば、ヒナリータが答えた。


「これは肌に感じる熱さを和らげてくれる薬。これをグイって飲めば効果が出るって」


 全員に薬が行き渡った所で、彼女らは一度薬を持ったまま固まった。

 なぜなら、その飲み薬は紫色をしているからだ。如何にも良くない飲み物に感じる。

 しかし、こんなことに時間は賭けてられない。

 ということで、全員が目配せし頷くと同時に飲んだ。


「おぇ、ドロッとして飲みづれぇ......ん? あれ? 気のせいか熱さを感じなくなったぞ」


「もう少し先行って効果を確かめてみようぜ」


 レイモンドの提案に乗り、勇者一行はそのまま先へ進んでいく。

 すると、景色は瞬く間に変化し、歩く道のすぐ近くにはぶくぶくと煮えたぎるマグマが流れていた。

 しかし、そんなすぐ近くなら熱気だけでも大やけどしてもおかしくないが、薬のおかげで全く問題なし。


「凄いな、この薬。全然熱さを感じねぇぞ!」


「買っておくもんだな。やっぱ備えあれば憂いなしだな。おかげで快適に進めそうだ」


「でも、効果時間は三十分らしいから気をつけてね~。

 それに大目に買ってあるけど、残りの大半はナナシさん用だから」


 そんなミュウリンの言葉にレイモンドとゴエモンは、いるかあいつに? と思いながらも、口に出すことは無かった。

 なぜなら、それを疑問に思うと連れ去られた時にナナシは生身でここを通過してることになるから。


 別ルートで奥にいるなら未だしも仮にそういう疑問を口に出したならば、いつ急にヒナリータに気付かれてもおかしくない。

 それだけは何が何でも避けなければいけないことだ。


「薬は無駄に出来ない。早めに進もう」


 ヒナリータの方針で勇者一行は足早にさらに奥へ。

 マグマが見える環境になってから襲い来る魔物も燃えたコウモリだったり、マグマから飛び出してくるヘビだったりと種類が変わったが、されど勇者一行の敵にならない。


 そんな探索をしばし続けていると、やがてマグマの滝が流れる五メートルほどの崖がそびえ立つ空間まで辿り着いた。

 すると、その崖の上には腕組みをして待ち構えたような姿勢のモンシローの姿があるではないか。

 その瞬間、ヒナリータの縦に伸びた瞳孔が小さく収縮し、殺気が溢れ出た。


「おまえはモンクロー!」


「違う、モンシローだ! なんで師範といいお前といい絶妙に数を刻むんだ。

 もう次でおいらの名前が二桁に突入するぞ......って言いたいことはそうじゃなーい!」


 眺めのツッコみをしてしまったモンシローは一つ咳払いすると、早速本題に入った。


「改めて名乗ってやる! おいらの名前はモンキチ師範の弟子、モンシローだ! よく覚えておけ!

 そして、お前達を待っていたのは他でもない。お前達にはこれから試練を受けてもらう!」


「試練? まずナナ兄は無事なの!?」


「あぁ、嫌になるほどピンピンしてやがる。今頃、師範と茶でも飲んでるだろうよ」


 そんなモンシローの言葉にヒナリータは目つきを鋭くして言い返す。


「嘘。貧弱なステータスのナナ兄が昨日の今日でそんな元気になるはずがない。

 どうせロクな治療もしてもらえず苦しんでるはず。

 嘘でヒナ達を油断させようとしてるんだ!」


 モンシローの言葉を真っ向から否定するヒナリータ。

 さすが旅を続けてきただけあって冷静な着眼点である。

 しかし、ナナシの本当の実力を知る大人達三人は揃って、あながち間違いじゃないんだろうな~、と思ったが口には出さない。


 そんなヒナリータの言葉にモンシローは「好きに思ってろ」と言い放つと、先に述べた試練について説明を始めた。


「ともかく、この先にお前達の仲間が待っている。

 助けに行きたければこのまま崖を上って先へ進め。

 ただし、道中にはコンビネーションを鍛えるために演奏をする楽団員がいる」


「......楽団員?」


「そいつらにはお前達の進行を邪魔するように指示してあるからせいぜい気を付けることだな。

 まぁ、心頭滅却すれば火もまた涼しを体現してるおいら達からすれば、薬に頼って耐えられないようじゃ無理だろうけどな」

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)

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