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第124話 ボス戦 シャチーク#1

 シャチークからの大胆告白に勇者一行は全員が思考を一時停止した。

 その言葉に最初に反論したのは勇者ヒナリータファンクラブ会員ナンバー一番ナナシであった。


「急に何言ってんだこの野郎! ヒナちゃんを嫁だと!? そんなこと義父さんが許した覚えはない!」


「ナナ兄は父親じゃない。それにヒナはただ見てただけ」


「ガハハ、そんな熱い視線が見てただけなんてバカ言っちゃいけねぇ。

 だがまぁ、なんにせよこの娘がオレ様の嫁になることは今ここで決定した。

 さぁ、勇者よ! もしテメェがこの場で嫁になるならクリスタルは返してやろう」


 シャチークが提示したのは交換条件はヒナリータとクリスタルをトレードするということだが、当然それを認める仲間はいない。

 そして、過激派ファンがそんなことを許すはずがない。


「ふざけんなペド野郎! ヒナちゃんは俺が先に見つけたんだ! 俺のもんだ!」


「っ!?」


「ナナシさん、その返答は絶対おかしいですよ」


 ヒナリータもビックリな発言に陰キャ君は絶対この人ふざけてる、と思いながら突っ込んだ。

 しかし、状況はシリアス展開。

 少しだけ顔を赤らめた勇者からのジト目を送られながらもナナシは、至って真面目にシャチークとバチバチとした視線をぶつけ合う。


「ガハハ、その言葉の意味はわからねぇが、侮辱されてるってのは伝わって来るぜ。

 だが、オレ様も引くわけには行かねぇ。この勇者には将来性がある。それもかなり大きなな。

 今はまだ幼ぇガキんちょだが、イイ女になるまで育てればいいだけのこと。

 この場で奪われる方がよっぽど不味いってもんだ」


「......なるほど、ただのペド野郎じゃなかったか。育成嫁とかとんでもねぇペド野郎だ!

 イエスロリータ! ノータッチ! 少女は愛でて育てるものだ!

 可憐で純粋な美しさを汚しちゃいけねぇ! それを犯すものは万死に値する!

 行くぞ、ヒナちゃん! あのふてぇ野郎をこの手でぶっ飛ばすんだ!」


「正直、ナナ兄にも言いたいこと山ほどできたけど、とりあえずわかった」


 ナナシの言葉で戦闘モードに入ったヒナリータ。

 色々不満はあるが、一先ず敵を倒すことに集中するように鋭い目つきをぶつける。


 厄介ファンのネズミがうるさく騒いだおかげか他人を見て冷静になった他の皆も武器を構える。

 そんな勇者一行がやる気になった光景を見たシャチークは一番の凶悪な笑みを見せた。


「ガハハ、そうかい。そう来るならこっちも望むところだ。

 奪う楽しみってのはまた面白れぇからな!

 それじゃ、テメェらの欲望とオレ様の欲望をかけた勝負と行こうじゃねぇか!

 欲望バトルの開幕じゃーーーー!」


 そして、始まったシャチークとの最終決戦。最初に動き出したのはシャチークだ。


「オーシャンキャノン!」


 シャチークはキラーバイティングの時にも見せた水の砲撃を放った。

 その攻撃の範囲は勇者一行を飲み込まんとしていたが、地上と違い上下にも自由に移動できる水中ではドルピッグ達がいれば躱すことも容易い。

 バラバラに避けた勇者一行の中で一番槍を務めるのはゴエモン&熱血君コンビだ。


「熱血、行くぞ!」


「承知! だよな!?」


 砲撃の後隙を狙うように熱血君が接近し、彼の背に乗るゴエモンが攻撃を仕掛ける。


「モンキークロー!」


 ゴエモンは両手の剣を掲げ、一気にクロス斬りをした。

 しかし、攻撃の直前まで不動の姿勢を貫いていたシャチークが一瞬にして三又の鉾を突き出して対抗した。


「くっ!」


「やるな。だが――」


 強烈な突きを耐えたゴエモンだったが、シャチークはすぐさま鉾を回転させ三又で剣を絡めとろうとした。しかし、ゴエモンは奪われまいと柄を強く握る。


 その直後、「そらよ!」とシャチークはゴエモンを鉾先に抱えたまま後方へぶん投げた。

 そこには背後から攻撃の隙を狙っていたレイモンドがいて、ものの見事にぶつかっていく。


「まとめていっぺんに串刺しになりな!――オルカ突き」


 シャチークはゴエモンとレイモンドが重なった所に強烈な突きを放つ。

 水中でもブォンと音が鳴るほどの勢いと鋭さを持つその攻撃に対し、ゴエモンは剣をクロスさせて防御態勢に入る。

 しかし、彼自身が防げない、と理解するほどのその攻撃に表情が強張った。


「タートルシールド!」


 瞬間、レイモンドの魔法が発動する。

 ゴエモンを中心として半径一メートルの魔力の防御壁が形成された。

 その直後にシャチークの突きがガンッとぶつかり、二人は衝撃で後ろに吹き飛ぶ。


「なるほどな。まさか他の奴の防御力も底上げできるとは」


 戦闘を楽しむかのように笑うシャチーク。

 その背後からは何かが近づいてきていることに気付くと、鉾を持たない左ヒレを裏拳するように動かした。


「反ヒレ威」


 斬撃を放つ程のシャチークの攻撃はドルピッグに乗る相手の位置を完璧に捉えていたが、誰に当たることもなく空ならぬ水中を切った。

 なぜなら、そこにいるのは探偵君ただ一人だったからだ。


「なっ!?」


「今です、ヒナさん!」


「っ!」


 完全に虚を突かれたシャチークの背後から襲うのは剣を掲げたヒナリータだった。

 勇者は海の王の隙を狙って<スラッシュ>を放ち、その攻撃は振り返った海の王を袈裟斬り――とはならず、途中で止まった。


「え!?」


「悪くねぇ一撃だったぜ。だが、弱いな!――ヒレ威魳軌(しき)


 シュッと音が鳴り、シャチークの左ヒレがブレる。

 咄嗟に剣を引き抜こうとするヒナリータだったが、海の王によって締め付けられた筋肉で抜くことが出来ない。


「ヒナさんっ!――ヒレ威」


 シャチークの攻撃があわや当たると思われたその時、陰キャ君がヒナリータを庇うようにして前に出てヒレ攻撃で迎撃した。

 しかし、同じヒレでの攻撃でも体格差や重量が異なり、ましてやシャチークの技は<ヒレ威>よりもさらに高火力の技である。


 僅かに威力を相殺しただけで陰キャ君が押し負けるのは道理であり、ヒナリータと一緒に吹き飛ばされた。


 衝撃が貫通したのか勇者も今までにないダメージで悶え苦しむ。HPの三分の二は消し飛んだ。

 しかし、それでも生きているのは陰キャ君が身を挺してくれたからだ。

 勇者はすぐに声をかけ、意識を途切れさせないようにした。


「陰キャ、死なないで!」


 ヒナリータは震えた手で継続微回復の包帯を取り出し、それで陰キャ君を治療する。

 さらに回復薬も取り出し、陰キャ君に飲ませていった。


「悪いが、オレ様はそこまで甘くねぇぜ」


「行かせねぇよ!」


「オウオウ、姉御の妹を傷つけんじゃねぇ!」


 ヒナリータを追撃せんと泳ぎ出したシャチークの目の前にレイモンド&不良君コンビが立ち塞がる。

 その瞬間、海の王はほくそ笑み、目の前でクルッと旋回した。

 そのことにレイモンドと不良君は「は?」と思わず声を漏らす。


「ガハハ、実力の底は知れた。それに道具を使っての回復なら限りがあるだろ。

 なら、単体で回復できる方が厄介だ。あのヒツジの相棒はさっき相棒が不在だったもんな!」


 シャチークは尾ヒレで水を叩くと爆発的な加速力でもってミュウリンに接近した。

 その行動に陽動として自由行動していた探偵君がすぐさま相棒の元へ戻る。


「行かせるか!」


「だが、速すぎて追いつけん! だよな!?」


 すぐそばにいたゴエモンを乗せた熱血君が必死に邪魔しようとするが、泳ぐ速度が違い過ぎてあっという間に距離を取られる。

 そして、後二メートルというところで相棒に届くはずの探偵君もシャチークの巨体に跳ね飛ばされた。


「これで今度こそ邪魔する奴はいねぇ! 終わりだ、ヒツジ!」


 ミュウリンの眼前で鉾先を向けるシャチーク。

 しかし、そんな危機的状況にもかかわらず穏やかヒツジは至って落ち着いていた。


「ふふっ、ボクが一人だって? そんなことはない。なんたってボクは仲間を召喚できるからね」


「は?」


「いでよ、ナナシさん!」


「委細承知!」


 その瞬間、ミュウリンのモコモコした羊毛からナナシがひょこっと顔を出した。

 目の前の出来事にシャチークが瞳を揺らせば、ネズミはその隙を決して逃さない。


「さっきの探偵君が陽動だ。お前をここに呼ぶためのな――真水の球体(アクアリウム)


 ナナシは自身を中心とした直径三メートルの真水のバリアを形成する。

 同時に、自身は<皆元気になーれ>で継続微回復の魔法を発動させた。


「普通ならもっとレベリングしてから挑みたかったんだけどね。

 だが、もう今更だ。ヒナちゃんもこれ以上危険にさらせない。

 今回はズルさせてもらうよ――放電現象(スパークル)

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)

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