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第112話 クイズ問題系の敵

「ハァ、流石に装備を買うお金は無かったか」


「まぁ、そう言うなって大将。また稼げばいいんだし。

 ていうか、大将はやたら順応してるけど、普通敵から金が現れるなんて驚くだろ」


「それは俺がゲーマーだからさ」


 そんなことを話しながら森の中をしばらく歩くと、目の前にT字路が現れた。

 当然ながら行先看板などは無いため、この三つのルートからホラーフォレストに落ちてたであろうクリスタルがある場所を見つけなければいけない。つまり、三択だ。


「どうやらここから先はこの分かれ道の中から正解ルートを進んでクリスタルを見つけなければいけないようだな」


「なんだか大変な目に遭いそうだね~」


 そんなことを口にしたレイモンドやミュウリンが何か目印になりそうなものが無いか探していく。

 その三択の道にあるのはそれぞれ黄色い花、赤い花、白い花であり、目印になりそうなのはそれぐらいだが、どれが正解なのかは全く分からない。


 と思われたが、ナナシがビビアンから貰ったノートをめくり、それに書かれてあったヒントを読み上げたことで状況が変わる。


「ビビアンメモによると赤い花を目印に進めばいいって書いてある。

 で、他の道を行くとスタート位置に戻されるって。ま、つまりは簡単な迷路ってことさ」


「つーことは、あの赤い花が咲いてる道だな。真っ直ぐってことか」


「なんか不自然なほどに崖に向かった道だから、正確に言うと上だね」


「いいんだよ、細けぇこたぁよ。いいから進もうぜ」


 レイモンドの掛け声で上り坂を進んでいく勇者一行。

 坂を上りきれば、少しの平坦地を歩いた後、再びT字路が現れる。

 再び正面の上り坂に赤い花が咲いていたのでその道をひたすら進んでいく。


 道中、襲ってきた敵を倒して多少のレベルアップとお金を稼ぎつつ、次々に現れたT字路を下下左右左右と進んでいくと、やがて正面の一本道に道を塞ぐような巨大な蜘蛛の巣が張られていることに気が付く。


「よう、お前らが勇者一行か」


 ガサゴソガサゴソと木の枝を伝って蜘蛛の巣にやってきたのは体長一メートルほどのクモだった。

 そのクモの特徴を挙げるなら、グラデュエイトキャップを被り右目にモノクルをかけていることか。


「ここを通すわけにはいかないぜ勇者一行。

 通りたくばこのオレ様クイズンスパイダー=アニーを負かしてからにしな」


「いいぜ、やってやらァ」


 レイモンドの威勢のいい言葉とともに、勇者一行は戦闘態勢に入る。

 しかし、アニーはその彼らのその行動に対し、すぐに待ったをかけた。


「おっと待て。オレ様は争いを好まねぇ。

 だからといって、お前らを通してしまってはドロロン様の部下である示しがつかねぇ。

 ってことで、今からお前達にはオレ様が出すクイズを答えてもらう。

 正解すれば通してやろう」


 アニーの突然のクイズ問題に勇者一行は困惑することもなくスッと受け入れる。

 伊達にうるさい道化師の無茶ぶりやらなんやらに付き合ってる彼らではないのだ。


 それに勇者ヒナリータが腕を組んで不動の構えをしている以上、わざわざ無駄な殺生をする必要もないだろう。


「話が早くて助かるぜ。制限時間は三十秒。さぁ、オレ様の問題に答えて見せろ!

 問題、精霊王ビクトリアは我が王ドロロン様の名前をなんと間違えた?」


 アニーからの問題に全員がすぐさま数日前のビクトリアとの会話を思い出す。

 そして、勇者一行は断片的だが無事に会話を思い出すことが出来た。

 問題は会話相手である精霊王のフワフワ言葉のインパクトがデカすぎることだ。


 どれだけ思い返しても勇者一行のビクトリアの印象は「おりゃああああ」だったり、「うわああああ」だったりと言葉にもなってない言葉を話す妙齢の女性なのである。


 そう、見た目だけは如何にも数多の精霊を滑る女王でありながら、口を開けば幼児を相手にしているかのよう。幼児の方がもっと言語がしっかりしてるかもしれない。


「残り二十秒だ」


 どうしよう何も思い出せない、というのが勇者一行の気持ちだった。

 名前を言い間違えてるだろうことは容易に想像できる。だって、あの精霊王だもの。

 ただ、他の印象のせいでその間違って名前を呼んだであろう部分の記憶を思い出せない。


 そんな腕を組んでは悩み続ける勇者一行を呆れた様子で見ていたアニーは特別に問題を四択にすることにした。


「ハァ、何も答えないじゃ張り合いがないな。

 仕方ねぇ、今から問題は四択にしてやる。答えて見せろ。

 A.ドドロロン。B.ドロロロン。C.ドロドロン。D.ロロロドン。さぁ、どれだ」


 アニーからのもはや優しさのようなヒントにピンと来たのはナナシだ。

 小さなネズミは肩に乗らせてもらっている勇者に小声で答えを言えば、代表してヒナリータが答える。


「答えはB」


「......大正解だ。流石に甘すぎたか?」


「やるね、ヒナちゃん!」


「やるなぁ、ヒナ」


「凄いね~」


「あ~確かにそうだったな。やるな嬢ちゃん」


 全員から賛辞の言葉が送られるが、ヒナリータは不服そうな表情をしてナナシを睨んだ。

 その一方で、アニーは自分の巣の一部に穴を開ける。


「ま、今回は特別だ。ここを通りな」


「まさか一問で通してくれるとはな」


「ねぇ、なんで言い間違いのこと知ってるの?」


 せっかく通してくれるということなので、一人ずつクモの巣を通り抜けていく間、待っていたミュウリンがアニーにそんな質問をした。

 それに対し、アニーはさも当たり前のことのように答える。


「オレ様にはたくさんの小さなクモ(子分)がいるからな」


「なるほど~」


 勇者一行は見た目に反して親切なアニーに感謝しつつ道を進んでいく。

 それから少し進んだところ全く同じような巣を見つけた。

 その巣にいたのはほぼ同じ容姿で左目にモノクルをかけたクモだった。


「僕はクイズンスパイダー=オトートです、よろしく。どうやら兄を下したようですね。

 兄は口こそ若干粗暴ですが、クイズをやってくれる方には甘いのでそこを突いたのでしょう。

 くっ、この僕が亡き兄の仇を討ちます!」


「なんか勝手に殺したことになってんだが?」


「オレ達は何もしてねぇよ」


 ゴエモンとレイモンドの正論(いちゃもん)に「ええい! うるさいうるさい!」と聞く耳を持たないオトートは早速クイズを出題した。


「僕の問題はこうです。君達が最初に戦ったワンタクル。

 その魔物の部下であるドロスラは何匹いました?

 A.六匹。B.五匹。C.四匹。D.三匹。制限時間は三十秒。さぁ、答えて見せなさい!」


 その問題に「あれぇ?」と勇者一行は首を傾げる。


「最初に倒したワンタクルってアレだよな?

 ヒナが武器として手に入れたやつ。二匹じゃなかったっけ?」


「俺は三匹だった気がするが......大将はどうだ?」


「全っ然わからん。ドロスラなんて道中で倒してるし。

 いやでも、ワンタクルが出たなんてかなり序盤の方だよな?

 う~ん、その時は少なかった気がするが、なんか引っかかる......ミュウリンは?」


「ワンタクルを倒す前となるとそうだね~。

 あの魔物と戦ったのは精霊国を出てすぐだった気がするからその前に倒してたらカウントされる?」


「っ!?」


 大人達が雁首を揃えてう~んと呻るばかりで役に立たない中、ミュウリンの言葉をヒントに唯一正解に辿り着いた人物がいた。


「正解はA」


 突然発せられたヒナリータの言葉に全員が注目を集める。

 睨むような目つきから放たれる真っ直ぐな視線にオトートは怯みながらも尋ねた。


「本当にその回答でいいのか?」


 ヒナリータは静かに頷く。


「ほほう、随分と自信があるようですね。では、答え合わせと行きましょう。

 正解は――チッ、Bです。ここを通りなさい」


「「「「「おぉ~~~~!」」」」」


 皆してわからなかった問題に一人正解したヒナリータはナナシに対してドヤ顔した。

 その一方で、オトートは不服そうな顔をしながら、仕方なさそうに巣に穴を開けていく。


 相変わらず一問で通してくれる親切設計に勇者一行は感謝しつつ、更なる奥へと足を進めと、やがて聞こえてきたのは一人の大きな声だった。


「――ぜんたーい止まれ!」

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)

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