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自称道化師の喜劇道~異世界出身のお調子者と魔族の相棒の陽気な珍道中~  作者: 夜月紅輝
第4章 ヒナリータクエスト

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第111話 勇者の旅立ち

「それでは皆さんの無事を心より祈っています。

 シュバっと行ってバババンしてきてください」


「くっ、あれほど余計な言葉を付け足すなと言ったのに......」


「いってらっしゃーい!」


 精霊王ビクトリア、サトリン、ビビアンやその他大勢の精霊達に見送られながら勇者一行は最初のクリスタルが落ちたであろう場所へと移動を開始した。


 そんな彼女達の姿が豆粒ほど小さくなった所で、ヒナリータの肩に乗ってたナナシがぐったりとうつ伏せになった。

 せっかくの門出の日というのにあまりにもだらしない姿にゴエモンは訳を聞いた。


「大将、随分と疲れてそうだな。そういや、昨日も結局部屋に戻って来ることなかったし、何してたんだ?」


「ハハ、ついついネズミの本能に任せて駆けずり回ってたら疲れすぎて逆に寝付けなかっただけだよ。おかげで絶賛睡眠不足さ」


「そんな姿になると人格にも影響与えるのか。

 人間に戻ってもその行動だけは勘弁えして欲しいな」


 ナナシの回答に苦笑いするゴエモンだが、当然ながらこのネズミの言っていることはほとんど嘘である。本当のことは寝付けなかったことぐらいか。

 対して、睡眠不足のネズミとは対照的な人物もいる。


「その一方で、ミュウリンは随分と元気だな。心なしか顔がツヤツヤしている」


「ふふっ、すこぶる快眠だったからね~」


「ふ~ん、そりゃ良い事だ......って、ヒナ、なんか妙に顔が赤くないか?」


「っ!?」


 レイモンドからの指摘にヒナリータは耳をピクッと立てる。

 そして、顔もを背ければ「知らない」と答える少女だが、もちろん全て知っている。

 なんだったらしばらく思考停止して動けなくなり、その間にイチャイチャの波動を浴び続けてしまっていた。


 故に、ミュウリンがやたら元気な理由を思い出してしまい、普段の仏頂面から打って変わって恥かしさに赤らめた顔を隠しきれないのだ。

 結果、少女は昨日の一件で少しだけませた。


―――ザッ!


 そんな和やかな旅をしていると、彼らの目の前に一本足のタコが二匹のドロスラを率いて現れた。

 瞬間、ナナシは出発の前にビビアンから貰ったノートをめくって敵の正体を叫ぶ。


「あれはワンタクルだ。他の精霊達が集めた情報からするとあの一本足が刃こぼれした刃物にようになってるらしい」


「お前らだな。ここ最近現れた野郎どもってのは」


「「「「「っ!?」」」」」


 ワンタクルがしゃべったことに全員が驚いた。

 どうやらここでは魔物は普通にしゃべるらしい。

 もちろん、本来の世界でもしゃべる魔物はいるが、大抵は長い年月を生きて知恵を蓄えたものだ。

 つまり、この魔物は初めから自我があるということになる。


「どうやら、うちの子分が世話になったようじゃねぇか。

 聞いたぜ、お前らが最初に俺の舎弟を倒してくれたんでってな?

 加えて、眠らせて滅多打ち。くっ......おら! かたき討ちだ――」


―――一分後


「くっ、やるじゃねぇか。俺の負けだ」


 まるで即オチ二コマのようなスピード感で勝負がついた。

 ゴエモンがドロスラを斬り、ナナシがもう一体のドロスラに魔法を当て、最後にヒナリータが攻撃スキル<猫パンチ>でもってワンタクルを叩きのめしたのだ。


「ふっ、どうやらここまでのようだな。これは勝者への選別だ。もってけ」


 そう言ってワンタクルが消えた後、そこにはワンタクルの足だけが残っていた。

 なぜ消えないのかと疑問に思っているのがほとんどの中で、唯一RPG経験者であるナナシはすぐにそれがアイテムだと気が付いた。


「ヒナちゃん、それ持ってみて」


「.......」


「めっちゃ嫌そうな顔するじゃん。大丈夫、変なものじゃないから」


 ヒナリータは渋々ナナシの言うとおりにワンタクルの足を拾うと、少女のそばに新しい半透明のウィンドウが表示される。

 その画面に書かれていた内容を少女は読み上げた。


「ワンタクルソード。ワンタクルの足で出来たなまくら剣って書いてある。

 後、攻撃力が上がった。プラス10って書いてある」


「ふふっ、やっぱり。それはどうやら装備アイテムらしい」


「ってことは、ヒナちゃんは強くなったんだ。おめでとう~」


「純粋な攻撃力上昇は嬉しいな。オレも盾無いかな」


「俺も欲しいぜ。せめて二本。だが、無いものは仕方ないし、ここは適当な丈夫な枝で我慢しておくか」


 RPGあるあるの序盤装備アイテムを手に入れた一行は、そのままホラーフォレストがあるであろう道を歩き続ける。


 道中、色々なタイプの敵が現れ、それを楽しながら進んでいくこと数日。

 全員が五レベルになり、ミュウリンが魔法攻撃力の上がるほら貝を装備したところで村に辿り着いた。


「マップによるとここがホラーフォレストの近くにあるビックリスリラー村だ」


「なんとも如何にもありそうってか、すぐ目についてあるな」


 レイモンドの言う通り、勇者一行の目の前に広がっていたのはゾンビのように両手を前に伸ばしながら彷徨う精霊達の姿だった。

 表情や顔色は如何にも生きているとは言い難い雰囲気で、とても村に入るのは躊躇われる場所だ。


「なんというか、男でも入るのに覚悟いる場所だな」


「でも、目的地はこの先だしね~」


「......行こう」


 ヒナリータが勇気を持って歩き出せば、すぐ近くでふよふよ飛んでいた精霊が気づき、サッと勇者一行に近づいていく。

 その素早さはヒナリータが武器を構える隙すら与えなかった。


「ようこそ! ビックリスリラー村へ!」


 めっちゃ明るく話しかけられた。その事に一同はキョトンとする。


「いや~、まさかこんな所に来てくれるなんてね。知ってるよ、今話題の勇者様でしょ?

 まさかこんな形で会うとは思わなかったな。せめて会うならもう少し身なり整えたかったよ。

 この先に勇者様が泊まれる人間用居住スペースがあるからそこまで案内するよ。

 あ、おいらの名前はスナッフィーだ。気軽にスナちゃんって呼んでいいぜ」


 めっちゃ饒舌に話し続けてきた。その事に一同は困惑が拭えない。

 見た目と動作に対して、あまりにも言葉がハキハキとし過ぎなのだ。

 ドッキリを仕掛けられていたと聞かされた方がまだ納得できるレベル。


 しかし、スナッフィーはそう言いながらも全くゾンビのような体の形を変えない。

 それどころかそれが普通かのように当たり前に聞いても無い日常の村の様子をしゃべり続ける。

 周りにいる同じくゾンビムーブをする精霊達もよくよく聞けば、日常会話しかしていない。


「さ、ここが勇者達の家さ」


 スナッフィーに案内されるまま入った家は意外にも埃っぽくなかった。

 その理由を相変わらずゾンビムーブをするスナッフィーが「ちゃんと掃除しといたからね」と自慢していた。


「で、一体この状況はどういうこと?」


「ふむ、この状況とは?」


「いや、その姿や動作のことだよ」


 ナナシが率直に尋ねれば、スナッフィーは「アハハ、これか!」と笑って答え始める。


「これはホラーフォレストに現れたゾンドールという連中に甘噛みされて、両手を前に突き出すこの動作しか出来なくなっちゃった。いや~まいったね。

 おかげでお尻がかゆくてもかけないもん。誰かにかいてもらわないと」


「聞いてる限り普通に深刻だと思うが。なら、テメェのその顔はなんだ? つーか、大丈夫なのか?」


「あーこれ? これはゾンビメイク? ってのをされたせいかな。

 最初は友人の顔を見る時ビックリしたものだよ。“おまwめっちゃ緑じゃんwww”って」


「全然タフそうだが助ける必要あるか?」


「落ち着けゴエモン。たぶんスー〇ーマ〇オRPG的なタイプだ」


「俺はその単語に何一つピンと来ねぇんだが」


 思ったより元気そうだったのでこれ以上スナッフィーに現状を尋ねることはせず、本来の本題へ入ることに。

 そのお題を出したのはミュウリンだった。


「ねぇ、スナさん。ここら辺にクリスタルらしきものが落ちて来なかった?」


「クリスタル? あー、そういやなんか緑色のキラキラしたものがホラーフォレストに向かって行くのを見たような気が。それがどうかした?」


「いや、ありがとう。これで手がかりが入手できたよ」


 スナッフィーから重要な話を聞けた一行はすぐさまホラーフォレストに向かって移動しようとする。

 そんな急ぎ足の勇者一行に陽気な精霊は寂しそうな顔をした。


「え、もう行くのかい? もう少し話したかったんだけどな。ほら、回復蜜とか売ってるよ」


「その話詳しく!」


 食いつくようにスナッフィーに駆け寄ったナナシはすぐに彼の話を聞き始めた。

 そして、商人スナッフィーから少しアイテムを買うとホラーフォレストへ出発した。

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)

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