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(本編完結・番外編更新中)あの時、私は死にました。だからもう私のことは忘れてください。  作者: 水無月 あん
番外編

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円徳寺 ラナ 43

私は遠野さんが帰った後も、ナイフを見ながら、どうすればいいのか悩み続けた。


まずは、私がナイフを預かったまま、何もせず、遠野さんの気持ちが落ち着くのを待つ。

でも、遠野さんのリュウへの執着の強さを思ったら、とても、待つだけでおさまるとは思えない。


次に考えたのは、ルリに全部話して協力してもらう。

遠野さんをだますことになるけれど、例えば、ルリを刺したことにして、遠野さんに報告する。


プラシーボ効果みたいに、遠野さんが思い込めばいいのでは……と一瞬思ったけれど、それもダメだ。


例えば、遠野さんがリュウを忘れたいとかなら、遠野さん自身の心だし、思い込みも効果があるかもしれない。

でも、遠野さんの望むことは、遠野さんとリュウから、ルリの縁をきること。

思い込みでどうこうなることでもない。


そもそも、ルリに全部話すということは不安が大きい。

というのも、いつ、ルリの記憶が戻るかわからないから。


もしも、完全に以前のルリに戻ってしまい、そのルリが遠野さんとリュウの関係を知ったら、ルリはどうする?

多分、遠野さんを傷つける行動をすると思う。


ルリが記憶をなくして、もうすぐ1年。


時間をおくと冷静に考えられるのか、以前のルリについて思うことが色々ある。

ひとつは、リュウに気があるような言動をしていたのは、婚約者である私の前でが多かったということ。

つまり、私に見せつけるため、私の前で、わざと親しくしていたのではと思う。


でも、それは私に限ったことじゃなく、学校でもそうだったのでは、と想像がつく。


以前は、ルリが彼女がいようが関係なく、気に入った男性がいれば欲しがるのだと思っていた。


でも、今、思うのは、少し違っていて、ルリにとって優位にたちたい人物が現れた時、その大事な人を奪っていたのでは、と思うようになった。


そして、その人より、自分が選ばれ自分が優位であるということを見せつけることで喜びを感じていたんではないかと……。


そんなことを繰り返していたから、いろんな人を傷つけてきたんだろうね。

結果、その中のひとりに階段から突き落されたわけだし。


私はルリを突き落した女子生徒のことが、ずっと気になっていた。


あの後、お母様の女子生徒への怒りはすさまじく、とても、その子が心配だとは言えなかったけれど。


でも、一年近くもたったし、今のお父様とは話しやすくなってきたから、お母様のいないところで、思い切って、お父様に聞いてみた。


というのも、ルリが入院した時、怒り狂うお母様に、「全て私が対応するから、ルリのことだけを考えてくれ」と、お父様がお母様をなだめて、その件に関わらさないようにした。


いつもはお母様の好きにさせるお父様が、その時だけは、きっぱりと言い切ったので、少し気にはなっていたのよね。


そうしたら、思いもかけなかったことをお父様から聞かされた。


実は、お父様はルリが突き落とされたあと、割とすぐに、ルリがその女子生徒にしたことを詳しく知らされたとのこと。

その内容に衝撃を受けて、お母様に関わらさないようにさせた。


その理由を聞けば、お母様は何があってもルリが悪いとは信じないだろうからと、あきらめたようにつぶやいたお父様。


ルリはその女子生徒の彼氏というよりは、家族ぐるみで付き合いのある、婚約しているも同然のような相手を奪った。

しかも、相当に強引な手を使って。


女子生徒は、うちより大きな会社の令嬢で、ルリはそのことが気に入らなかったのか、やたらと、女子生徒をライバル視していたから、その男子生徒を狙ったのも、そのせいだろうということ。


そんな時、記憶をなくしたルリが、何があったのか聞きたいとお父様に言ってきた。

お父様は、今のルリなら……と、記憶をなくす前のルリがしたことを、全て、正直に話した。


すると、ルリはこう言ったそう。


「私は突き落されたのではなく、足を滑らせました。その時の記憶はあると言ってください。そして、その女子生徒に謝罪を。二度と近づかないと伝えてください。記憶が戻るまで休学しますが、もし、記憶が戻った時は、お父様、私が何を言おうと必ず転校させてください」


お父様は最後に私に悲し気に言った。


「結局、ルリの証言で、あれは事故とういうことになった。……もしも、あの令嬢を訴えることになったら、うちの会社は大変なことになっていただろう。ルリのしたことに、相手のご家族は相当に怒っているようだったからな。あの令嬢の家の会社と取引がなくなって困るのは、こっちだ。もちろん、それでも、ルリが一方的に危害を加えられていたのなら、会社がどうなろうが、私もひかなかった。……でもな、あれはルリが悪い。あんなひどいことを平気でするルリに娘といえど、ぞっとした。そんな娘を育てた私たち親の責任は重いな……」


あれから、悩み続けて、良い案が浮かばなかった私。

私はナイフを持って、大学近くの裏道を歩いていた。


そう、このナイフを遠野さんに渡した占い師さんに会うために。


遠野さんは店自体が見つからなかったと言っていたけれど、そんなはずはない。

占いの店は、きっとあるはず。


だって、大学近くには、いくつも裏道があるから。

私は知らない道を探して歩いた。


そして、やっと、「占い」と看板のある小さな店の前にたどりついた。

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