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(本編完結・番外編更新中)あの時、私は死にました。だからもう私のことは忘れてください。  作者: 水無月 あん
番外編

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円徳寺 ラナ 33

それから、遠野さんから電話がかかってくるようになった。


でも、かかってくる時は、よほど辛そうな時だけ。

元気になるような言葉もかけられず、私は、ただ話を聞いた。


大学へも来たり来なかったりで、調子が良さそうな時と、そうでもない時があるように思えた。


なんとか元気になってもらいたい……。



ある日、両親とルリ、それにリュウも来て、夕食をとっていた時、遠野さんから着信があった。

後でかけ直そうと思っていたら、せっぱつまっているのか、また着信があった。


私はみんなに断って、夕食をぬけて、電話にでた。


今日は、遠野さんの誕生日だったらしく、二人で過ごした思い出がよみがえったみたい。

どうにも辛そうだった。

でも、ひととおり話すと、落ち着いた遠野さん。


「遠野さん、お誕生日おめでとう。今度、お祝いさせてね」


私は心をこめて、そう言った。

遠野さんは泣きながら喜んでくれた。



電話を終えて、夕食の席に戻った私。


みんなはとっくに食事を終え、お茶を飲みながら話をしていた。

こんな時、以前だったら、話しの中心はルリだったけれど、記憶をなくした今のルリは静かに話を聞いている。


席に戻った私に、お父様が心配そうに聞いてきた。


「ラナ、電話だったんだろう? 長かったが、大丈夫なのか? 今まで、そんなことなかったから、ちょっと気になって」


「大学のお友達からだったんですが、特に何かあったわけじゃないんです。食事中にごめんなさい」


私の言葉に、お母様が厳しい声で言った。


「それなら、後にすればいいでしょう。せっかく、リュウ君も来ているのに、失礼よ」


「ごめんなさい、お母様」


「いえ、僕は気にしませんよ。でも、ラナ。ラナの友達って、どんな人? 聞いたことがないから、気になるなあ」


リュウがにこやかに私に向かって聞いてきた。


「ラナ。その人、ちゃんとした人なんでしょうね? 円徳寺の名に近寄って来る人たちはダメよ。リュウ君やルリに迷惑がかかるんだから」

と、お母様。


「私の友人はそんな人ではありません。優しくて真面目で、がんばってきた人です」


「ほお……。ラナにぴったりの友人だな」


お父様が場をなごますように言った。


「ええ、素敵な友人です。今日がお誕生日だったので、つい、長く話してしまいました。ごめんなさい」


「今日が誕生日……?」


リュウがつぶやいた。


にこやかだった顔に影がさしたように見えた。


それまで黙っていたルリが、そんなリュウをじっと見て、声をかけた。


「どうかしたの? リュウさん」


ルリがリュウに自ら声をかけることなどないから、少し驚いた私。


リュウも驚いたようにルリを見たあと、嬉しそうに微笑んで、答えた。


「いや、今日が誕生日の知りあいがいたような気がしたけど……違ってた」


「そう……」

と、答えたルリは、もう、リュウに興味を失ったように目をそらした。



私は夕食の後、ルリの部屋を訪ねた。

ルリの読みたそうな本を持って。


私とルリの関係も少しずつ変わって来た。

相変わらず、ルリはどこか壁を作ったように、淡々と過ごしているけれど、私には心を許してきているような気がする。


家族というより、仲間みたい。


私が持ってきた本を見ると、案の定、好奇心に目を輝かせたルリ。

喜んでページをめくりはじめたルリに、私は気になっていることを聞いた。


「ねえ、ルリ。ルリは、さっき、どうしてリュウに話しかけたの? いつもは避けてるみたいだから、ちょっと気になって……」


ルリは少し考えたあと、口を開いた。


「婚約者のラナお姉さんに言うことじゃないかもしれないけれど……いい?」


「ええ。もちろん。リュウのことで何を言われても、私は気にしないから大丈夫よ」


私の言葉に、ルリはうなずいた。


「何か大事なことを隠してる気がしたから。なんとなく、口にでてしまったの」


「大事なことを隠してる?」


「ええ。でも、そんな気がしただけかも。あの……ラナお姉さん……、あの人と本当に結婚するの?」


ルリが私の目をじっと見て、聞いてきた。


「リュウと結婚して、会社を継ぐのが私の役目だから」


「ラナお姉さんのことだから、私が口をはさむ立場にないのだけれど……」

と、真剣な顔で前置きしたルリ。


「ルリは私の妹よ。思ったことは、何でも言って?」


「じゃあ、一言だけ。ラナお姉さんはそれを望んでるの?」


まっすぐ私に聞いてきたルリ。

私は何も答えられなかった。


不定期な更新の中、読みづらいところも多々あるかと思いますが、読んでくださった方、ありがとうございます!!

 

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