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(本編完結・番外編更新中)あの時、私は死にました。だからもう私のことは忘れてください。  作者: 水無月 あん
番外編

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妹 ミリー・アンガス 4

よろしくお願いします!

そして、パーティー当日。


王太子様の迎えのなかったお姉様は、思いつめたような表情で馬車に乗っていた。

青いドレスはムルダー様の瞳の色。


これから起こることを知っている私としては、痛々しくて見ていられない。

お父様もお母様も気まずそうに黙りこんでいる。

なんともいえない雰囲気で、王宮に到着した。


お姉様は、すぐに私たちとは離れ、王族に近い場所に案内された。

今はまだ、ムルダー様の婚約者だものね…。


お姉様は、会場に入って来たムルダー様を一心に見ている。

もともと色が白いお姉様だけど、血の気がひいて、今にも消えてしまいそう…。


婚約解消のことは知らされていなくても、ムルダー様の態度でうすうす感じているのかも。


そして、今日の主役、聖女も入って来た。

大神官様をはじめ、神官様たちを従えている。


ムルダー様の隣に立つと、不安そうな顔で、ムルダー様を見上げた。

すぐに、ムルダー様が安心させるように、微笑みかける。


なんだか、あざとそう…。


それに、どう見ても、あれなら、お姉様のほうがきれいよね。

ムルダー様、あの人の何がいいのかしら?


ふと、会場を見回すと、赤い髪が目に入った。


あっ! あれは、ライアン様?!


騎士服を着て、会場の隅に立っている。お仕事かしら?

はあー、なんて、騎士服が似合うの! ドキドキするわ! 


やっぱり、ライアン様がいい!


聖女がどんな嫌な人でも、仲良くするよう、がんばらないと! 

ライアン様と婚約するには、聖女と仲良くなってたほうがいいってお母様が言ってたもの!



そして、ついに、国王様が話をはじめられた。


「我が息子、王太子ムルダーと、アンガス公爵令嬢クリスティーヌとの婚約を解消する。そして、異世界から来た聖女ルリと王太子ムルダーの婚約を命じる」


招待客たちがどよめいた。


そんななか、見つめ合うムルダー様とあざとい聖女。

何故かわからないけれど、ムカッとした。


こんな簡単に聖女にのりかえるだなんて、ムルダー様って最低じゃない?


その時、国王様が再び声をあげた。


「そうそう言い忘れていたが、異世界からきた聖女ルリは、当然、こちらに血縁がいない。アンガス公爵がルリを養女とし、後ろ盾になることを名乗り出てくれた」


一斉にみんなの視線が私たちに向いた。


「聖女様のところに挨拶に行くぞ。ほら、ふたりとも笑え」

と、お父様が小さな声で指示をだす。


みんなの視線が集まるなか、私たちは、にこにこと笑いながら、聖女様のほうへと近づいていった。

そして、馬鹿みたいに笑顔をはりつけ、聖女様にご挨拶をする。


その時、

「キャーっ!」

いきなり、悲鳴があがった。


振り返ると、え?! お姉様…?!

お姉様が、短剣をふりあげているんだけど…?!


悲鳴をあげたのは、近くに立っている令嬢のよう。


「ク…クリスティーヌ…!」

隣にいた、お母様が震える声で、お姉様の名前を呼んだ。


「待て、クリスティーヌ! はやまるな…!」

ムルダー様が叫び、お姉様のほうへと歩き出そうとした。


が、聖女がムルダー様の腕にしがみつき、「行かないで、ムルダー様! 私、怖い…」などと言っている。


護衛の騎士たちが走って来た。そして、ライアン様も…。

でも、間に合わない…。


「さよなら、ムルダー様…」

お姉様は、そう言うと、なんの躊躇もなく、自分の首に短剣をふりおろした。




そこからは、ショックのあまり、はっきりとは覚えていない。


覚えているのは…、血だらけのお姉様を、何故か、ライアン様が号泣しながら抱えていたこと。


ライアン様が聖女に、お姉様を助けるよう頼んだこと。

だけど、聖女は、「治せるわけない、私のせいじゃない。聖女だなんて言ってない」などと、ぎゃーぎゃーわめいていたこと。


血まみれのお姉様が、光につつまれて、突然消えはじめたこと…。

消えていくお姉様に、ライアン様がお姉様の名前を呼びながら、必死に手をのばしたこと…。


そして、お姉様が消えたあと、白い騎士服を、お姉様の血で真っ赤にしたライアン様が、従兄弟であるムルダー様につかみかかったこと…。


なんで、こんなことが起きたのかわからない…。


でも、この日、クリスティーヌお姉様は、完全に私たちの前から姿を消してしまった。


あと2回で妹視点は完結です。

読んでくださった方、ありがとうございます!

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