表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(本編完結・番外編更新中)あの時、私は死にました。だからもう私のことは忘れてください。  作者: 水無月 あん
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/86

円徳寺 ラナ 19

「そうだね。お母様のことは、私もそう思う……」


「それなら、距離をとったほうがいい。今なら、無理を言えば、留学の話は……」


身をのりだして話してくれる森野君を、私は遮った。


「ごめん、森野君。私もすごく行きたいけれど、やっぱり、今は留学には行けない。正直、記憶をなくしたルリのことは、自然と妹として心配できるの。今のルリは、いくら優秀でも、知らないことが多すぎる。そんなルリを残して留学には行けない」


「いや、でも、あの母親だぞ?」


「うん。……でも、ほら、さっきも言ったけど、お父様も謝ってくれたから。今のルリと今のお父様なら、前みたいにはならないんじゃないかって思うの……」


「謝ったくらいで、あの母親と妹を好きにさせてきた父親を信用できるのか!?」


「ううん。信用できるというよりは信じたいと思ってるだけ……。それは、お父様だけじゃなくて、今のルリもお母様もだけど……。だから、私、もう一度がんばってみる」


何かいいかけて、言葉を飲み込んだ森野君。

複雑そうな顔で言った。


「そうか。……じゃあ、あと、ひとつ、聞いていいか?」


「なに?」


「妹にたらしこまれていた婚約者のことだけど」


「え、……いや、たらしこまれてたって……」


「それだけじゃあ、足りなかったな。クソ妹にたらしこまれた馬鹿で、しかもクズか……」


吐き捨てるように言った森野君。


言葉も悪いけど目つきも怖いよ……。


「ええと、森野君、……もしかして、怒ってる?」


「ああ、怒ってる」


「……とりあえず、ごめん」

と、謝ってみた。


「いや、円徳寺に怒るわけないだろう? 怒っているのは、そのクズな婚約者にだ。妹が男関係で階段から落とされたとたん、態度をかえて、円徳寺にすりよるなんて、クズすぎるだろう?」

と、吐き捨てるように言った森野君。


あ、リュウのことか…。

私のかわりに怒ってくれたみたいで、森野君の言葉にすっきりする。


「そんな奴と、本当に結婚するつもりか……?」


森野君が真剣な顔で聞いてきた。


「……うん。そうだね」


「好きなのか?」


そう聞いた森野君の瞳が不安そうに揺れている。


正直、リュウが好きという気持ちは全くない。

この7年、ルリとベタベタしていた姿をずっと見せられてきたから。


でも、私の気持ちより、リュウと結婚して会社をつぐことがラナの役目だから。


謝ってくれたお父様に期待するだけじゃなくて、ちゃんと家族になるためには、私もラナとして役目を果たさないといけない。


そもそも、私に選ぶ権利はないし、婚約者としてリュウと向きあう努力をしないと……。


だから、私は森野君に初めて嘘をついた。


「うん、そうだね。好き、かもしれない……」


森野君が大きく目を見開いた。

そして、私の心を読もうとするかのごとく、鋭い視線をなげてきた。


思わず、私は視線をそらして、うつむいた。


沈黙のあと、


「円徳寺……俺は……円徳寺のことが……」

と、森野君が何か言いかけたので、思わず顔をあげた。


目があった。

思いつめた顔をしている森野君。


「どうしたの……?」


森野君は、はっとしたように、首を横にふった。


「悪い……。円徳寺を困らせることを言いそうになった。しばらく、そばにいられない俺が、今、無責任に言っていいことじゃないのに……」


え? どういうこと?  


すると、森野君は苦しそうな顔で言った。


「俺の留学が早まった。来週、イギリスに出発する」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ