円徳寺 ラナ 1
※ お久しぶりです。今回から新しい章にはいります。ルリの姉、ラナ視点となります。よろしくお願いいたします!
私には妹がいた。
名前はルリ。初めてルリと会ったのは、私が5歳。ルリが1歳の時。
孤児院にいた私を見て、ルリの両親が私を養子にした。
「今日から、あなたの名前はラナよ」
大きなお屋敷に着いたとたん、私は、ルリの母親にそう言われた。
ラナ? 私の名前は花だから聞き間違えたのかな?
そう思って、私はきちんと名乗った。
「いえ、私の名前は花といいます。古池 花です」
「あなたは私たちの家族になるの。だから、今までの名前は捨ててね。今日から、あなたの名前は、ラナ。ルリの姉でラナよ」
ラナ……? 花から、ラナ……?
音は似ているけれど、まるで違う感じ。
それから、私がラナになるための沢山の注意事項を聞かされた。
ルリは病弱だから、常にルリを守ること。
ルリは病弱だから、常にルリを気にかけること。
ルリは病弱だから、常にルリを優先すること。
ルリは病弱だから、常にルリを大事にすること。
ルリは病弱だから、負担はかけられない。
だから、ルリのかわりに私が会社を継ぎ、会社を守る。そのために必死で勉強をすること。
そして、ルリの母親は最後に言った。
「つまり、あなたはルリのためにもらわれてきたのよ。この家でのあなたの役目は、ルリのために生きること。それができないのなら孤児院に戻ってもらう。どうかしら? あなたにできる?」
私はコクンとうなずいた。
だって、孤児院には戻りたくない。
私は事故で両親をなくした後、親戚の家に預けられた。でも、結局は孤児院に入れられた。
親戚の家でも孤児院でも、私に居場所なんてなかった。
だから、ここで私の役目があり、私がここにいていいのなら、「花」という名前は捨てる。
ルリの母親はそんな私を見て、にっこりと微笑んだ。
「いい子ね、ラナ。さっき、私が言ったことを守って、ルリのために生きてくれるのなら、何不自由ない暮らしを約束するわ。いい家族になりましょう。私のことは、お母様と呼んでね」
「はい……」
こうして、私は円徳寺ラナとなり、ルリの姉となった。
◇ ◇ ◇
あれから8年がたった。
私は13歳になり、ルリは9歳になった。
私が養女に選ばれたのは、お母様に似ていたからだそう。
ルリと本物の姉妹に見えるということが大事な要素だったらしい。
そのことが功を奏したのか、いまだに、ルリは私が養女だとは知らない。
ルリがショックを受けないよう、両親は細心の注意を払っている。
この8年の間、私はラナでいるために、必死でがんばってきた。
勉強もだけれど、一番にはルリのこと。
いつでも、何をおいてもルリを優先した。
幼い頃は入退院を繰り返していたルリも、今ではずいぶん元気になった。
それでも、熱をだすことはしょっちゅうだ。
そのたびに、家じゅうが大騒ぎになる。
そんな時は、私がルリにつきそう。
年々、わがままになってきて、気に入らないと大泣きをするルリ。
でも、「ラナおねえちゃん!」そう言って、甘えてくる様子はかわいらしいし、嬉しくもある。
だから、全力でルリの面倒を見ている。
それが、私、ラナの役目だから。
気がつけば、長らく間があいてしまいました。また、ぼちぼち更新していきたいと思います。読みづらいところも多いと思いますが、気楽に読んでくださったら幸いです。どうぞよろしくお願いします。




