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(本編完結・番外編更新中)あの時、私は死にました。だからもう私のことは忘れてください。  作者: 水無月 あん
番外編

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ムルダー王太子 33

結局、短剣を持っているはずのライアンは、王宮へ戻ってこないまま、月日は流れ……。

ついに、来月、ぼくは18歳になる。


つまり、このままだと、ロバートに王太子の座を奪われてしまう。

もう時間がない。


焦ったぼくは、最終手段を取ろうと試みた。

そう、ライアンから短剣を奪い返しに、気は進まないがロバートの住む城へ乗り込むことだ。


だが、よく考えたら、辺境というだけで城の場所を知らない。

馬車をだしてくれるよう護衛騎士に頼めば、考えるそぶりも見せず、即断られた。


「王太子のぼくになんて態度だ!」と、怒れば、「王太子様を勝手に城の外に出さないよう、国王陛下からの命がでております」と、冷たく言い返された。


そう言えば、以前は、王太子として、外の公務に出る仕事もあったのに、お飾りの王太子と言われた後からは、外に出る仕事は全くない。


ぼくは、もしや、王宮内に監禁されているのか?


ダメだ。

早く、クリスティーヌを取り戻さないと、ぼくの立場がどんどん悪くなる。

お飾りの王太子ですらなくなった時、ぼくは、一体、どうなるんだ……。


初めて、将来が不安になった。


それなら、こっそり、バリルに頼もう! そう思ったけれど、思いとどまった。


というのも、短剣を取り戻すのは、ルリを異世界へ戻すためだとは絶対に言えないからだ。

もし、知られたら、バリルに、ぼくが殺されるかもしれない。


というのも、今や、バリルとルリのほうが婚約者みたいに仲が良いからだ。


王太子妃教育で泣きわめくルリをなぐさめるバリル。

ルリの喜ぶ菓子を用意し、ルリの喜ぶドレスを買い、ルリにいつも寄り添い、ルリの宿題(小さい子どもなみのレベル)を手伝ったり……。とにかく、尽くしまくるバリル。


正直、こんなバリルを見るようになるとは思いもしなかった。

人が変わってしまったようなバリル。


すっかり、ルリにのめりこんでいるようだ。


小さい頃から、バリルは気が強く、態度が大きかった。


バリルの父親は身分は伯爵だが、ぼくの父上である国王と親友で対等に話をする。

そのため、一目置かれる存在だ。


だからなのか、自分より爵位が上の家の子どもであっても、えらそうな態度をとる奴だった。

幼少期、身分が上であるライアンをいじめたように。


前に婚約者がいたこともあるが、バリルの傲慢な態度に嫌気がさした令嬢ともめ、結局破談になったと聞いた。


だが、そんなにえらそうだったバリルも、ルリに会って、すっかり人が変わってしまった。

ルリの前では、えらそうな態度など絶対に見せない。


ふたりは、いつも寄り添っているため、王宮内で働く者たちも慣れてしまい、ただ、冷たい目で見るだけだ。


近頃は、その視線からもかばうように、ルリが王宮内を移動する時は、短い距離であっても、バリルが守るようにつき従っている。


まるで、ルリの従者のよう。

ぼくの側近だということは、すっかり忘れ去っているようだ。


そんなバリルの思いを、当たり前のように受け取っているくせに、ルリは更にもっと条件の良い男を求めている。

もちろん、ダグラスの紹介する男のことだ。


もし、そのことを知ったら、バリルはどうなってしまうんだろう……?

もしかして、気が狂うんじゃないかと怖くなる。



そんなことをつらつらと考えていたら、意外過ぎる客が、ぼくの執務室を訪ねてきた。


ダグラスだ……。


ちょうど、部屋の中で泣くルリと、いつものごとく、なぐさめているバリルがいる。


そんなふたりの様子を見て、わざとらしく驚いた表情をするダグラス。

王宮内でも噂になっているふたりの関係を、ダグラスが知らないわけがない。


ダグラスの訪ねてきた理由はわからないが、その嘘くさい表情を見て、嫌な予感がした。



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