表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(本編完結・番外編更新中)あの時、私は死にました。だからもう私のことは忘れてください。  作者: 水無月 あん
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/82

ムルダー王太子 32

バリルが立ち去ったあと、ぼくはルリに言った。


「一体、どういうつもりだ?」


その瞬間、ルリの怒りに火がついた。


「王太子妃教育なんて、もう受けたくない! だって、わけわかんないし、できないと怒られるし。先生たちは、みんな、すごい怖いし! 私、異世界から来たんだよ? 王太子妃教育なんて、できなくたって、当たり前じゃない?! なのに、ひどいよ! 王妃様も私が嫌いみたいだし、みんなで私をいじめるんだもん!」


そう言って、またもや、泣き出したルリ。


はあー、泣きたいのはこっちのほうだ……。


さっさと異世界へルリを送り返して、クリスティーヌに戻ってきてほしいのに、短剣を持っているはずのライアンが、よりにもよって、ロバートのところにいるとは……。


ライアンが王宮へ帰ってくるまで、待つしかないのか。

でも、それはいつになる?


それまで、こんな状態のルリが、偽とはいえ、ぼくの婚約者なんて……。


ぼくは涙をこぼすルリを見ながら、ため息をつき、そして言った。


「教師たちから聞いたが、ルリの学んでいることは王太子妃教育に入ってもいないそうだ。異世界から来たことを考慮して、この国の基本的なことだけしか教えていないと言っていた。でも、ルリは、まるでやる気がない。覚える気もない。できる、できない以前の問題だと苦情がきている」


ぼくの言葉にルリの顔が怒りで紅潮した。


「だって、仕方ないじゃない? 王太子妃教育なんて、受けても無駄だし。やる気なんてでるわけないわ! だって、ムルダー様は、おか……」

と言いかけたルリの口をあわてて手でおさえた。


驚いたように目を見開くルリ。


「それ以上は言うな! ダグラスに聞いたが、あの魔力でしばられた書類の内容を破れば、激痛は3日ほど続くそうだ。わかったか?」


一気におびえた顔になるルリ。

こくこくとうなずいたので、口から手を離した。


手を離したとたん、ルリは不満げにぼくに言った。


「なんで、私がこんな目にあうの……。もう、嫌! 王太子妃教育なんて、もう受けない! バリル様と結婚するわ! 国王様も、私がやめたかったら、やめていいって言ってたし。伯爵家の息子のバリル様と結婚したら、私は平民にならなくていいし!」


なるほど。バリルを選んだのはそういう理由か。


「さっき、ダグラスからの伝言をあずかった。ルリの好みに合う男性と話をつけ、相手も乗り気らしい。役目を無事に果たすようにとのことだ。つまり、ルリは、ダグラスの選んだ相手より、バリルをとるということでいいんだな?」


すると、怒っていたルリの顔が急に嬉しそうになった。


「え、そうなの? あ、じゃあ、やっぱり、もうちょっと王太子妃の役をがんばる! だって、バリル様って、顔が好みじゃないんだよね」

と、ルリは悪びれることなく、残酷なことを言った。

 

バリルが可哀想すぎるな……。



後日、また、ルリがぼくの執務室へやってきた。


「バリル様の気持ちは嬉しいけれど、やっぱり、王太子妃教育、もう少し頑張ってみます。簡単にあきらめるのは、私にはできないから……。ごめんなさい」

と、かよわそうな振りをして、あざとく、バリルに謝るルリ。


安っぽい芝居を見ているようだ。


だが、バリルは残念そうにしながらも、ルリを気づかうように、ルリの言葉にうなずいている。

そんなバリルに必要以上に体を寄せるルリ。


そうか。

ルリは、ダグラスの紹介する相手に期待しながら、バリルにもまだ利用価値があると思ってるんだな……。

誤字報告してくださった方、ありがとうございました! 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ