妹 ミリー・アンガス 1
本編で書けなかった、他の登場人物の視点で番外編を書いていきます。
まずは、クリスティーヌの妹視点からになります。よろしくお願いします。
私ミリー・アンガスには、お姉様がいた。
銀色の髪を腰までのばし、紫色の瞳をした、クリスティーヌお姉様。
金色の髪にブルーの瞳を持つ家族の中で、一人だけ違う色。
お父様のお母様、つまり、わたしのおばあさまと同じ色あいだそう。
と言っても、私はおばあさまに会ったことがないの。
お母様が言うには、厳しくて、優しくない人なんだって。
お父様も、実のお母様であるおばあさまのことは苦手で、今は、隣国に住んでいるおばあさまと連絡すらしていないみたい。
そんなお姉様のことを、みんな、神秘的で美しいって褒めたたえるけれど、私のほうがかわいいって、お母様は言ってくれている。
私もそう思う。
だって、屋敷にいる時は、いつも勉強ばかりしていて、あまりしゃべらないお姉様。
笑いもしないし、とっても、地味なんだものね。
それに、きれいなドレスもアクセサリーも興味がなさそう。
だから、私は、お姉様の部屋へ行っては、お姉様のアクセサリーやドレスをもらってあげていた。
そんな時、すごくきれいなものを見つけたの。
お姉様の目と同じ色の宝石がついた髪留め!
きらきらして、すごくきれいなの。一目で気に入ったわ。
「ねえ、お姉様。それ、ちょうだい」
いつものように言った。
「これだけはダメよ」
と、お姉様。
なんでも、婚約者のムルダー様からもらったものらしい。
私は、イライラした。
あの美しいムルダー様からのプレゼントだなんて!
本当は、私がムルダー様の婚約者になりたかった。
姉に生まれたから、婚約者になれたなんて、本当にずるいわ。
だから、お父様とお母様にお願いしたの。
「私をムルダー様の婚約者にしてよ。アンガス公爵家の娘ならどっちでもいいのよね? なら、かわいい私のほうが、絶対に王太子妃にむいてるもの」って。
でも、お父様が言った。
「どっちでもいいわけないだろう? ミリーはうちの大事なあととりだ」
「そうよ。私はミリーにそばにいて欲しいわ。王太子妃なんて、大変なだけよ。クリスティーヌに任せておきましょう。あなたには、すばらしいお婿さんをとって、この公爵家をついでほしいもの。私はね、ロンバルディア公爵の次男のライアン様を、あなたの婚約者にどうかなって思ってるのよ」
と、お母様。
「え? ライアン様?! だったら、いいわ!」
騎士団に入られている、公爵家の次男、ライアン様。
燃えるような赤い髪に、グリーンの瞳。美しいお顔で、背もすらりと高い。
ムルダー様とはタイプが違うけれど、ライアン様もとてもかっこいいのよね!
「なら、早速、お父様にお願いしないと」
お母様の言葉に、お父様もうなずいた。
「ロンバルディア公爵家のご子息なら願ったりだ。なに、ミリーなら、絶対に気に入られるよ」
「だから、王太子妃になりたいなんて、もう言わないでね」
そう言って、お母様が優しくだきしめてくる。
フフフ…、愛されるってつらいわ…。
お姉様みたいに、外へ嫁ぐこともできないんだものね。
読んでくださった方、ありがとうございます!
クリスティーヌの妹視点は、全6話になります。よろしくお願いします!