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(本編完結・番外編更新中)あの時、私は死にました。だからもう私のことは忘れてください。  作者: 水無月 あん
番外編

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ムルダー王太子 27

結局、ダグラスの保護を受けられなかったルリ。


平民になっても暮らしていけないだろうということで、父上がもうひとつの案をだした。

が、それは、ぼくにとったら、全く納得のいかないものだ。


父上は、ロバートが王太子をつぐことを、準備が整うまでは、王宮内でもごく限られた人間にしか知らせない。

そのために、ぼくはお飾りの王太子をさせられる。

その間、ルリもまた同様に王太子の婚約者のふりをして過ごすという案だ。


王太子の婚約者として、ルリは王宮で生活し、その暮らしは保障される。

ただ、王太子の婚約者だと思っている人間が大半のため、王太子妃教育を形だけでも受けることが条件だ。


つまり、ぼくたち二人が囮となり、ロバートから目をそらさせ、その間に、着々と準備を進めるということだ……。


ロバート、ロバート、ロバート……。

やっぱり、父上は、愛しているロバートを王太子にしたかったんだ!


黒いもやもやしたものが、心のなかで、一気に大きくなった。


と、そんなぼくを不満げに見たルリ。


「私、お飾り王太子のムルダー様の婚約者だなんて、嘘でも嫌なんですけど!」


「はあ? それは、こっちのセリフだろ!?」


にらみあうぼくとルリ。


父上はため息をついて、言った。


「ルリ、そなたはムルダーと違って罰を受けてるわけではないから、強制ではない。これは、あくまで提案だ。嫌なら、断ってくれて良い。まあ、そうなれば、即刻、平民として生きることになるがな」


「平民なんて嫌……!」


ルリが悲鳴をあげた。


すると、ダグラスが、さっきの冷たい態度はなかったかのように、ルリに優しく微笑んだ。


「ルリ嬢。王宮内には、色んな考えを持つ人間がおります。ちょっとのほころびで、ロバート様が王太子の座に就くことを邪魔されてはならない。ロバート様が王太子になる準備が万全に整うまでの間、ルリ嬢には、ムルダー様の婚約者の役割を担っていただき、まわりの目をごまかすことに協力いただきたい。もちろん、ロバート様が無事に王太子になられた後には、ルリ嬢には、独身の貴族の中から、あなたにぴったりの良き結婚相手をご紹介しましょう」


「え、ほんとに? なら、ダグラスさんみたいな、すごい素敵でお金持ちな人がいいな」

と、頬を染めるルリ。


さっきのあの恐ろしい態度をみても、まだ、ダグラスにたぶらかされているなんて、ルリの危機意識のなさが信じられない。


ダグラスは、意味ありげに微笑んだ。


「私のような者など、おすすめしませんが……。ですが、無事、役目をはたしていただければ、ルリ嬢のお好みに合う男性を紹介します。私にお任せください」


「なら、私、やります! 完璧に、ムルダー様の婚約者をやってみせます!」


急に、元気になったルリ。


まあ、でも、そっちのほうがいいか。

ルリが近くにいるのなら、短剣さえ手に入れば、すぐにでも異世界に送り戻せるし。


ルリを異世界に戻し、クリスティーヌが戻って来たら、ぼくは、クリスティーヌにぼくの気持ちを伝える。

クリスティーヌは、喜んで、婚約者に戻ってくれるだろう。


そうなったら、父上も、完璧な婚約者のいるぼくを無下にはできない。

たとえ、ロバートを愛していても、ぼくを王太子にするしかないんだ!


そう、もともとの形に戻るだけだ。


それまで、ぼくは、大人しく、お飾りの王太子をつとめているふりをしよう。

クリスティーヌが戻ってくるまでの我慢だ!


結局、ぼくとルリと大神官は、ダグラスによって、ロバートが王太子を継ぐこと、そして、ぼくがお飾りの王太子、ルリがその婚約者の役目をしていることを他言しないよう、魔力のこもった書類にサインさせられた。


もし、許可なく、だれかにしゃべろうとしたら、手足がもがれるほどの激痛が走って、絶対にしゃべることができない術をかけているんだそう。

説明したあとに、「本当かどうか、試してみますか?」そう言ったダグラスの顔は、なんとも楽しそうで、ほの暗い笑みがこぼれていた。


やっぱり、恐ろしい奴だ……。



そして、翌日。

神殿から王宮へ、ルリは引っ越してきた。


お久しぶりです。あまりに時間があきすぎて、入力画面が変わっていて、戸惑っております……。

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