表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(本編完結・番外編更新中)あの時、私は死にました。だからもう私のことは忘れてください。  作者: 水無月 あん
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/82

ムルダー王太子 24

よろしくお願いします!

父上が、そんなルリを見て言った。

「では、そなたは、ムルダーと結婚しないのなら、これからどうするつもりなのだ?」


「それは…、神殿からでて、自由にしたいです! 好きな人とも結婚したいし!」


「なるほど…。確かに、そなたは聖女でもなんでもない。神殿に置いて、保護する義理もない。そうだな、大神官?」


父上に、いきなり名指しされた大神官が、こくこくと首をたてにふった。


「もちろんでございます。私のせいで、ルリ様は聖女ではないのに、神殿に留め置いてしまいました。本当に申し訳ございませんでした…。どうぞ、ご自由になさっていただければ…」


最後のほうは消えいるような声になった。

大神官は今にも倒れそうなほど顔色が悪い。


国王がうなずいた。

「わかった。…では、ルリ。そなたを神殿の保護下から外し、平民として戸籍を用意する」


「は? 平民…?」


「ムルダーと結婚しないのであれば、当然、平民となるだろう。貴族というわけにもいくまい。そうなると、貴族の仕事があるが、そなたでは無理だろう。が、平民であれば、仕事を選ぶことができる。自分にあった仕事をして、自由に生きればよかろう」


「はあ? ちょっと、平民ってなんで? それに、なんで、そんな一般人みたいに働かないといけないの?! 私は貴族みたいに、大きな屋敷にすんで、きれいなドレスを着て、贅沢に暮らしたいんです! だって、私、異世界からきたんですよ?! 特別な存在ですよね?!」


「ほお…。それが、そなたの望む自由なのか…? まあ、いい。…確かに、この国に、異世界人は、そなた以外はいない。そういう意味では特別だ。だが、珍しいだけだ。聖女であったり、異世界の知識をいかした価値ある仕事を担ってくれるのであれば、貴重な存在と言えるのだが…。そういえば、元いた世界では、何をしておった?」


「学生ですけど…」


「何か研究でもしておったのか?」


「べつに。だって、ただの学生だったし」

ルリが、いらだった口調で答えた。


まあ、ルリは、勉強ができなさそうだしな…。


そんなことよりも、平民になったら、会う機会がない。

あの短剣を探し出したら、すぐに、ルリを異世界に戻したいのに。


そのためには、身近に置いておいたおきたいが…どうすればいいんだ…?


「国王陛下。それならば、私が、ルリ嬢に、ひとつ提案してもよろしいでしょうか?」

と、ダグラスが口をはさんだ。


「よい、好きにせよ」


「ありがとうございます、国王陛下。…では、ルリ嬢」

ダグラスが艶やかに微笑みながら、ルリに呼びかけた。


「はいっ」

ルリの顔が赤く染まった。


「もし、あなたが私の願いを聞いてくださるのなら、私があなたの望む生活を保障しますよ。大きな屋敷がいるのなら、用意するし、ドレスも宝石も、好きなだけ買ってくれていいです」


「えっ? ほんとに?!」


「もちろん、本当ですよ。だから、私の願いを聞いてもらってもいいでしょうか?」

そう言って、艶やかな笑みをたたえて、じっと、ルリの顔を見た。


美しい笑顔に怖さしかない。

どんな願いかと思うだけでも、ぞっとするな…。


「もちろんです! あの、私も…、会ったばかりだけど、ダグラスさんのことはいいなって思ってて…。あの…ダグラスさんとなら、…私、結婚してもいいです」

ダグラスをとろけるような目で見ながら、恥ずかしそうに言ったルリ。


は…? なぜ、そうなるんだ? 

まさか、ダグラスの願いが、ルリとの結婚などと考えているのか?! 


やっぱり、バカだ!

まわりを見ろ!


母上は、あきれはてたような目で、ルリを見ている。


「なんで、このような人を、聖女だなんて思いこんだのか…」

大神官のささやくような、嘆きの声が聞こえてきた。


父上は、眉間にしわを寄せている。


笑ってはいるが、ダグラスの目は、まがまがしい。


ダグラスの願いが何かわからないが、婚約や結婚などでないことだけは、はっきりと言える。


まあ、もしも、ルリが本当の聖女であったならば、その力が目当てで、近寄ることはあるかもしれない。

そう、ダグラスは、間違っても愛などで動く男ではない。


単純なライアンとは違って、何を考えているのか、まるでわからない。

本当に不気味な奴だからな…。


そんなダグラスの言葉を、期待をこめた目で待っているルリ。

ダグラスは、そんなルリに向かって、ひときわ、華やいだ笑みを見せた。




読んでくださって、ありがとうございます!

ブックマーク、評価、いいねもありがとうございます!

大変、励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ