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(本編完結・番外編更新中)あの時、私は死にました。だからもう私のことは忘れてください。  作者: 水無月 あん
番外編

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ムルダー王太子 18

本日、2回目の更新です。

ライアンがぼくにつかみかかったことで、騒がしかった貴族たちは静まり返って、こっちを見ている。


そんな中、颯爽と駆け寄って来た男。

ライアンの兄、ダグラスだ。


ダグラスは、ぼくより3歳年上。

赤い髪はライアンと同じだが、ライアンの怜悧な美貌と違って、華やかな美貌で有名だ。


「王太子様、弟が無礼を働き、大変申し訳ございませんでした」

そう言って、憂いを含ませた顔で、ぼくに向かって謝った。


申し訳なさそうな声色だけれど、謝っていないような目。


思わず、顔をしかめてしまう。

というのも、ダグラスのことは、小さい頃から、ものすごく苦手だから。


いつも笑みをうかべて、物腰はやわらか。

だが、何を考えているのか、まるでわからない。


しかも、この国には、ほとんどいない魔力持ちだなんて不気味だろ…。


そう思って、ダグラスを見たら、目があった。

うっすらと微笑まれ、ぞわっとした。


小さい頃から、ふとした瞬間に、ぼくを見る目が怖いんだ。

魔術を学ぶため、ずっと隣国に留学していたのに、いつの間に帰ってきてたんだ…?


「うわあっ、かっこいい…。好み…」

と、隣から、ルリのつぶやく声が聞こえてきた。

頬を染めて、ダグラスに見とれている。


あきれていると、そんな視線を感じたルリが、ぼくをにらんできた。


「なによ?!」

もはや、ぼくには取り繕うのをやめたみたいだ。


だから、ぼくも正直に答える。

「なんで、こんなのが残って、クリスティーヌがいないんだろう。なんで、仮にも、こんなのが婚約者なんだろう、そう思っただけだ」


「はああ?! それはこっちのセリフよ! まさか、婚約者に死ねと言われるなんて思いもしなかったわ!」

すぐに感情的になるルリ。


「声を落としたほうがいいんじゃないか? ほら、みんな見てるぞ」


ルリがはっとしたように周りを見て、あわてて、怒った表情を悲し気な顔に変えた。


その時、混乱した状況を指示するために、動き回っていた父上が戻って来た。

父上と共に動いていたらしい騎士団長は、騎士たちに命じ、招待されていた貴族たちを誘導して帰らせはじめた。


「まるでわからん…。クリスティーヌは、何故、消えたんだ…」

父上は憔悴した様子だったが、甥であるダグラスを見ると、声をかけた。


「ダグラス、戻って来てたのか?」


「はい、父が足をケガをしてしまいまして、しばらく代理のため、急遽戻ってまいりました」


「レオが足のケガ? 大丈夫なのか」


「ええ。2か月ほど大事をとればいいとのことです。それよりも、この度は、ライアンが王太子様にご無礼を働き、申し訳ございませんでした」

そう言って、頭を下げた。


騎士に取り押さえられたまま、射殺すような視線でぼくを見るライアン。

白い騎士服に残るクリスティーヌの血を見ると、怒りがわいてくる。


ぼくのクリスティーヌなのに、ライアンはクリスティーヌの体をささえ、さも親しいかのように、「クリス」なんて呼んでいた。


許せない…!


「父上! ライアンは厳罰に処してください! 王太子であるぼくにつかかみかかったんですから!」


ぼくの言葉に、ダグラスが神妙な顔で言った。


「確かに、お怒りはわかります。ですが、弟は、#大切__・__#な友人であるアンガス公爵令嬢のことで、大変動揺しております。とても正常な精神であるとは思えない。私もともに、謹慎することで、なにとぞご容赦ください」


ダグラスの言ったことの途中からは、聞いていなかった。


それよりも、クリスティーヌがライアンの大切な友人?! 

そんなわけないだろう?! 


しかも、ダグラスは、そこをわざと強調した!


いらつくぼくを、ダグラスが観察するように見ている。


「兄上は関係ない…!」

ライアンが声をあげ、取り押さえている騎士たちから逃れようとした。


すると、ダグラスは、ライアンに近づき、何かを耳打ちした。

ライアンは、はっとしたように、動かなくなった。何かを、考え込んでいるよう。

もはや、こっちを見てもいない。


ダグラスは、父上のほうに向きなおった。


「しかし、そうなると、しばらく、辺境に行けなくなります。父の代わりにあちらの方々にご不便がないか、様子を見に行くよう頼まれておりましたが、申し訳ありません」


辺境? あちらの方々? 

ああ、側妃とロバートか。


そういえば、ロバートの後ろ盾はロンバルディア公爵家だったな…。

まあ、あの二人に不便があろうがどうでもいい。


「父上、ライアンは謹慎などでは甘いです! どうぞ厳罰…」

ぼくの言葉を、怒りを含んだ声で、父上が止めた。


「黙れ、ムルダー! ダグラス、罰など無用だ。もちろん、ライアンもだ」


「父上!」

ぼくが抗議の声をあげると、父上が、ぼくに近づいた。


そして、まわりに聞こえないよう声を落として言った。


「こたびのクリスティーヌの悲劇、おまえのせいだ。おまえには相応の責任をとってもらう。後で、そこの女と共に呼び出すから、連絡を待て」



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