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(本編完結・番外編更新中)あの時、私は死にました。だからもう私のことは忘れてください。  作者: 水無月 あん
番外編

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ムルダー王太子 13

よろしくお願いします!

「こうなったのも私のせいなのか…」

そうつぶやいた父上。


「ムルダー、確かに私には妃が二人いる。そして、おまえの母親である王妃とは政略だった。だが、王妃もおまえのことも、もちろん大事だ」


「今更、そんな見え透いた嘘を言わなくてもいいですよ、父上」


「嘘ではない! 本当に、大切に思っている!」


ぼくは、首をかしげた。

「そうですか? でも、あの完璧な王妃である母上が、父上の側妃の話になると、いまだに取り乱しますよ? 父上のお気持ち、伝わってないみたいです」


「うっ…」

父上が、ぐっと顔をしかめた。


「でも、安心してください。父上より、ぼくは上手くやります。母上と違って、ルリは、ぼくの愛を求めていない。ぼくの容貌と王太子妃の地位に興味があるだけなんです。お飾りの正妃には、ちょうどいいでしょう? もちろん、お飾りとはいえ、ルリのことも大事にしますよ。クリスティーヌのためにも、ルリがいてくれたほうが便利ですからね。ルリは贅沢が好きなので、好きなものを買い与えて、ちゃんと機嫌を損ねないようにします」

そう言った瞬間、父上の顔から表情が抜け落ちた。


不思議なことに、ルリとクリスティーヌ、ふたりともを妃にしようと思ったとたん、初めて、母上と側妃を持つ父上のことを理解できた気がする。

第二王子ロバートのことを想像しても、今や、なんの苛立ちもない。


ぼくは穏やかな心で、父上に話を続けた。


「それと、父上。そうと決まれば、早くクリスティーヌに婚約解消を伝えたいんですが」


クリスティーヌは、ものすごく悲しむだろう。

その顔が見られることを想像すると、ゾクっとした。


でも、大丈夫。すぐに、ぼくはクリスティーヌに伝えるから。


ぼくが愛しているのはクリスティーヌだけだって。

大切にするために、側妃にするんだって。

ルリは、ただのお飾りだから、何も心配しないでいいよってね。


クリスティーヌは安心して、ものすごく喜ぶだろうなあ…。


と、考えていたら、父上が悲壮な顔で言った。


「神殿からの要望で、今度、聖女の披露目のパーティーを王宮で行うことになっている。聖女と大神官を前に、おまえは聖女を妃にすると断言した。もはや、どうにもならん。聖女の披露目のパーティーで、クリスティーヌとの婚約解消と聖女との婚約を発表する」


「じゃあ、なおさら、すぐにクリスティーヌに伝えないといけませんね」


「いや、披露目のパーティーまで、あまり日がない。婚約解消のことは、アンガス公爵から伝えてもらうことにする。あれでも父親だ。家族のほうが、まだましだろう。今のおまえが、直接、クリスティーヌに伝えるなど、更に苦しめるだけだ」

強い口調で言う父上。


あの父親に頼むって?

ああ、そうか…。父上は、クリスティーヌが、あの家族で孤立していることを知らないんだな…。


まあ、でも、それもいいかも。

あの父親だったら、婚約解消で落ち込んだクリスティーヌをなぐさめるなんて、到底できない。

おそらく、悲しみが深くなる。

そんな時、ぼくの本当の気持ちを伝え、大事にしたいから側妃にすると言えば、どれだけ喜ぶか!


そんなクリスティーヌを想像すると、顔がゆるんだ。


「では、披露目のパーティーのあと、本人に側妃にすることを伝えますね」

そう言ったぼくに、父上が、凍てつくような目を向けた。


「ムルダーよ…。人の心は、おまえの思い通りにはならぬ。…と言っても、わからんか。…なら、ひとつだけ約束しろ。側妃の話をクリスティーヌにして断られたのなら、その時は、すっぱりあきらめろ。わかったな?」


父上の言葉に、ぼくは、思わず笑ってしまった。


「父上、そんなことあり得ませんよ? だって、クリスティーヌは、ぼくを愛してるんですから! 愛しているからこそ、正妃ではなく側妃にするんです。そう伝えれば、喜んで承諾してくれます」

ぼくは自信をもって言いきった。


そんなぼくを、父上は、見知らぬ者を見るような目で見ていた。




それから、ぼくは、ルリとの婚約のことで、あれこれと忙しく、クリスティーヌに会えないまま、聖女の披露目のパーティー当日を迎えた。



読んでくださった方、本当にありがとうございます!

ブックマーク、評価、いいねもありがとうございます! 大変、励みになります!


ムルダー視点のお話、37話まであり、長めですが、よろしくお願いします。


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