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(本編完結・番外編更新中)あの時、私は死にました。だからもう私のことは忘れてください。  作者: 水無月 あん
番外編

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ラナから花へ 13

春さんはその名刺を手に取ると、顔をぐいっと近づけて、食い入るように見た。

そして、大きな目を最大限にみひらくと、大きな声で言った。


「ねえ! これって……、もしかして……、というか、もしかしなくても……私の名刺だよね!? ……えええ!? ちょっと待って、どういうこと……!? この名刺が、花ちゃんと一緒に時を戻ってきたってこと!?」 


混乱した様子で、私のほうへ顔を向けた春さん。


「はい……。あの、この春さんの名刺は、時が戻る前に森野君から渡された名刺なんです」


春さんが、今度は、弾かれたように森野君を見た。


「なんで、守が!? 私、名刺を守に渡したことは、一度もなかったわよね……!?」

と、勢い込んで森野君にたずねた春さん。


すごく驚いているみたい。

まあ、当然だよね……。


いきなり、自分の名刺が過去に戻ってきたななんて言われたら、誰でもびっくりするというか……、そもそも、信じられないと思う。


「確かに、今の俺は春さんに名刺をもらったことは一度もないよ。それに、昨日、花に見せてもらうまでは、見たこともなかったしな」


春さんに向かって、淡々と答えた森野君。


反対に、春さんは興奮した様子で、自分の髪の毛をぐしゃぐしゃとかき混ぜはじめた。


「それって、つまり、どういうこと……!? なにがなんだか、全然わからないんだけど……! 守に渡したこともない私の名刺を、なんで、守が花ちゃんにわたせるの? この名刺、私の名刺に見えて、実は、タイムスリップを促すような、別の星の未知の物体とか!? そう思うと、私のただの名刺が、とてつもなく、すごい物に見えてきたわ……。ダメだ……。憧れのタイムスリップと聞いたら、うらやましすぎて、どんどん、思考がおかしな方向へいってしまう……。守、一体、どういうことなの!?」


「別の星の未知の物体って……。いや、紛れもなく、春さんの名刺だから。とりあえず、春さん。ちょっと、落ち着いたら?」


混乱している春さんに向かって、森野君はそう声をかけると、春さんの質問には答えず、何故か、私のほうへと身をのりだしてきた。


そして、私の目をまっすぐに見て、聞いてきた。


「花が話す前だから、フライングになるけど、この名刺は俺が関わってるだろう? だから、少しだけ、先に俺から、この名刺について春さんに話してもいいか?」


私に許可をとるように、丁寧に聞いてくる森野君。


森野君は、事の大きさにかかわらず、ささいなことであっても、いつだって私の意思を聞いてくれる。

そんな森野君の誠実で生真面目なところは、高校の同級生として初めて出会った時から、ちっとも変わらないんだよね……。


円徳寺家の養女になってから、ずっと、「ラナとしてがんばらないといけない」という思いに支配されていた私。

いつも、心を壁で覆っていたから、友達の作り方すらわからなかった。


そんな私に、森野君が話しかけてきてくれて、いつしか、壁が壊れ、友達になれたのは、多分、そういうところが心地よくて、安心したんだと思う。


円徳寺の家では、ずっと、お母様やルリの思いを聞かされるばかりで、私自身の意思を聞いてくれる人は誰もいなかったから……。


森野君に出会えて本当によかったと、改めて思ったら、思わず、心からの笑みがこぼれた。


「うん、もちろんだよ、森野君。好きなだけ、しゃべって」


「そうか、じゃあ、先に少しだけ話させてもらう。花、ありがとう」


そう言うと、森野君は嬉しそうに私に笑い返してきた。


その時だ。


「はああああ……。なんなの、あなたたち……。私は何を見せられてるの? まあ、でも、混乱していたけど、一気に正気に戻れたわ……」

と、春さんが言った。


見ると、ぐしゃぐしゃにしてしまった髪をなでつけながら、春さんが、私たちをあきれたように見ていた。


うん? どうしたんだろう……? 

春さんの言った意味がわからない。


「タイムスリップしたというとんでもない状況下なのに、ほのぼのと微笑みあっちゃったりして、ほんわかした幸せな空気を放出している、仲のいいふたりを目の前で見せられたら、はっとしたの……。ひとりで混乱して、髪をぐしゃぐしゃにしている自分が、なんだか、バカみたいだなあって……。うん、二人のおかげで、冷静になれたわ……」


春さんの言葉を聞いて、面白そうにふっと笑った森野君。


「それなら、春さん。もっと、俺と花が笑いあうところを見せてあげようか?」

と、からかうように春さんに言った。


「へええ、守、やる気……? そうね。それなら、今度は、みっちゃんと一緒に、じっくり見せて欲しいわ。もちろん、目の前で。お願いね、守?」


すっかり、冷静さを取り戻した春さんが、森野君に挑むように言い返した。


「うっ……、降参。それだけは、やめてくれ……」

と、即答した森野君。


その様子を見て、声をだして笑った春さん。


「わかればいいのよ、守。この春さんをからかおうだなんて、100万年早いからね! ……なーんて、守と遊んでる場合じゃなかったわ……。それより、摩訶不思議な私の名刺よ! 花ちゃんと一緒に時をもどってきたなんて、本当にすごいわよね!? うわあ、ドキドキしてきた……! そのあたりのことを、一刻も早く、より詳しく、私にわかるように説明して!」


春さんが、じれったそうに言った。



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