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兄の前で誓う


私たちが元に戻るための協力はするが、長兄にも未知の領域だ。何をどうすればいいのか分からん、とハッキリ言われた。


「一生そのままという可能性もありますね。どうあれ、私は秘密を守って、全力でサポート致します」


長兄の言葉を受け、ルー王子は「感謝します」と応じた。兄も頷き、顔つきをすっと変えた。少し冷たさを感じる表情に。


「殿下が私を信じ、真実をお話ししてくださったので、こちらも腹を割って本音をお伝えしたいと思います。私は、正直どちらでも良いと思っていました」


「え?」


「妹の結婚相手がルーファス王子殿下でも、弟君のサミュエル王子殿下でも。メイが『王太子妃』になれるなら、王太子はどちらでも良いと。しかしあの一方的な婚約破棄騒動があり、私の弟――ヒューバートはルーファス王子殿下のことを許せないと息巻いて、破談へ進むように動きました。そうすれば、メイはサミュエル王子殿下と婚約し直し、サミュエル王子殿下が次期国王陛下になられますからね。うちの父と現国王陛下との約束です。しかし、貴方は深く反省を見せ、メイとの復縁に際して労を重ね、その後の婚約期間も2人仲良く協力し合った。ですから、メイがいいならいいと思ったんです。メイがサミュエル王子殿下より、貴方の方を好いているのなら、と。しかし裏にはそのような事情があったのですね。メイとセルザム家に謝罪したのは貴方の姿をしたメイ本人で、貴方ではなかった。復縁して結婚したのも、お互いに他の人と夫婦生活を営むことができない特殊な事情があったから、だったんですね」


兄の指摘にルー王子は焦った顔をして、言葉を詰まらせた。


「そっ、それは……確かにそうでしたが……」


「お兄様。確かにあの婚約破棄騒動のときには腹が立ったけど、お兄様の言うとおりよ。ルー王子を選んだのは私なの。ルー王子と二人三脚でこの困難を乗り越えて行きたい、人生を共にしたいと思ったの。それに今のルー王子はよく頑張っているし。それはお兄様も認めるでしょう?」


「ああ、そうだな……メイが選んだ道ならそれがいい。私はメイの選択を信じている。そもそも、どちらかの王子と、という2択の不自由を強いているのは家だ。私は家のことより、自身の想いを貫いてライリを選んだのにな。申し訳ない」


「そんなこと、お兄様が謝ることではないわ。私はルー王子と一緒にいられて、今とても幸せなの。感謝してるわ」


私たちのやり取りに固唾を呑んでいたルー王子が、「ファリステイト公」と兄に呼びかけた。


「そしてメイ、君にも。これまでの私の愚行を心より謝罪します。立場に甘え、何の努力もせずに迷惑をかけてきました。そしてどんなときもずっと私のことを気にかけてくれたメイを疎んじて、傷つけてしまいました。しかしこの入れ替わりにより、身をもって色んなことを知ることができました。馬鹿王子であった私の狭い視野では見えなかったことが。メイには本当に感謝しています。そして、愛しています。君を幸せにするために努力は惜しまない。口先だけではなく、行動で示して、お2人の信頼に応えます。必ず」


ルー王子が、『私』の顔でこれまで見たことがないほど真剣に言葉を紡いだ。

その真剣さが伝わってきて、ぐっと胸に込み上げてくる。抑えきれない気持ちが。


「ルー王子、ありがとうございます。私も愛しています」


「メイ……」


見つめ合う私たちのそばで、長兄がなるべく空気になろうと気配を消したのが分かった。


ルー王子との顔の距離が縮まり、自然と唇が触れ合った。



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