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【メイヴィス視点】焦り




そろそろ『メイヴィス嬢』の例の期間が終わる頃だろうと日付を確認して思った。


不安なら遠慮なく呼んでほしいと伝えておいたが、ルー王子からの連絡は無かった。


求められていないのに構いすぎてもいけない。あの時期の乙女は本当にデリケートなのだ。

心配ではあったが、そっとしておくことにした。


その矢先、セルザム家から使いがやって来た。

メイヴィス嬢が来城するアポイントを取りたいという。

いや、私から出向こうと言おうとして、思い直した。

ルー王子がお城に来たいのかもしれない。

身体が入れ替わってからも私は度々実家を訪れたが、王子はこちらに来ていない。


私が兄たちや家の様子を見て安心したのと同様に、ルー王子も家族やお城の様子を自身の目で確認したいのかもしれない。


「分かりました。では明後日、私の部屋で待っていますね。くれぐれもお気をつけてお越しください」


使者にそう告げ、教育係のジェリーに頼んで時間を空けてもらった。


ルー王子がジェリーから学ぶべきことは沢山あった。

しかし王子があまりにやる気を出さないため、のんびりとしたペースに組み替えられていたのだ。

そもそもジェリーの前に別の者が王子の教育係をしていたそうだが、優秀だが厳しいその人を「私には合わない」と王子が嫌い、係が交替したそうだ。

その前任の教育係は、第2王子サミュエル殿下付きとなった。

サミュエル王子殿下はその教育係の指導を受け、多くを吸収しておられるとのこと。


え。何やってんの、ルー王子。

というのが、それを聞いた私の率直な感想だ。


チヤホヤしてくれる友人に囲まれたい、まではまだ分かる。

しかし勉強や仕事まで楽をして、嫌なことを全部遠ざけてしまってどうするのか。


このままでは3つ下の弟王子に優に追い抜かれてしまう。

その危機感はないのだろうか。


レティシア妃はそれを恐れていたからこそ、厳しい態度でルー王子を国に帰したんだろうに。


レティシア妃とルー王子が隣国から戻らず、国王陛下がシビル様を第2王妃として迎えられたとき、すでにお2人の間には男児が生まれていた。

その第2王子がルー王子に代わり、王太子になられるのでは、という噂が飛び交っていた。


当のシビル妃は慎ましい方で、サミュエル王子も人見知りの静かな子供だったが、将来を見越して早いうちにお二人に取り入ろうとする者が多数いたそうだ。

しかしルー王子が帰国され、王太子という立場を明確にされたため、サミュエル王子に取り入ろうと目論んでいた勢力は影を潜めた。


というふうに見せかけて、水面下で好機を窺いながら力を蓄えているかもしれない。という話をずっと前に長兄が次兄に話していたのを思い出した。


そのときは楽しくない話だと聞き流していたが、いま思い返すと重要な話だ。


ルー王子が自堕落になり、代わりにサミュ王子が頭角を現せば、皆ルー王子を見放してサミュ王子を崇めるようになる。


先日学院の職員室前でばったり会ったサミュ王子のことを思い出した。

身体つきはルー王子よりまだ未熟だが、雰囲気も中身もとても大人だった。

校内で目まいを起こしたメイヴィス嬢を医務室へ連れて行き、教師に知らせに来たのだと落ち着いた口調で説明してくれた。


私(異母兄弟の兄)に対し淡々とした態度だったが、嫌な感じは全くしなかった。

丁寧ゆえに、やはりよそよそしくは感じたけれど。

内心でどう思っているのかは分からないが、空威張りなルー王子よりはずっと紳士的だ。


本当に何やってるのだろう、ルー王子は。

このままでは弟君に負けちゃいますよ!?


今となっては私がその「ルー王子」なのだから、気が焦る。何とかしなくてはと。


とりあえずルー王子に成り代わってやる気を出し、ジェリーに本気の指導を仰ぎ、一から教育してもらった。


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