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出会い

おととい食べたカレーパン美味しかったなぁ。

スパイスが効いていたがほんのり甘くパンはサクサク。

………って、何思い出してんだ。

今から………俺…死ぬって言うのに…



緑が生い茂るこの辺りはこの地域では有名な滝の1つ。いや、日本でも有名な滝の1つでもある。高さは100mを超えるだろう。その姿は見にきた人を皆驚かせるほどの迫力がある。その滝の頂上で、とある男はあと1m前に進むと落ちてしまうという場所に今まさに立っている。

両手をポケットに突っ込んで、風で服がパタパタ揺れている。少し長い髪に顔面偏差値が51くらいの顔であり、身長は170cmあるか無いかくらいである。


何の特徴も無い顔だが何か一つあるとすれば少し目つきが鋭いくらいだろうか。

そんな男の名は鳴宮真司。そこら辺にいるフツーの高校生と言っても過言は無いだろう。

ただある1つの事柄を除いて………





鳴宮の人生は神に見放されていた。


10歳の時に父が亡くなり13歳の時に母を亡くした。

どちらも死因は病死だった。

何の予兆も無く突然。

その後引き取ってもらった唯一の血縁者のおばさんも一緒に住んで1年もしないうちに亡くなった。

さらに、周りの人間が、死んだのはこれくらいでは無かった。

彼の親友は事故死。妹は1歳の時に病気で亡くなり、中学校生活で3年連続担任だった恩師は卒業式前に事故死。



そう。鳴宮は一言で言うと神様に嫌われた存在だった。

何も味方しろとまでは言わない。何なら見放されていたほうが良かったのかも知れない。

そう思うくらい、鳴宮の人生は悲惨だった。



今思い返しただけでも腹が立つな。俺の人生は。

ただ普通に。普通に暮らしたかっただけなのに。

それがどれだけ幸せだろうか…

でも、俺がいれば周りの人に危害が加わってしまう。

それだけは避けなければ。

くそ、誰が悪いんだ。

俺か?俺が悪いのか?


鳴宮は崖の頂上で仁王立ちになりながら考える。


いや、それは無い。俺の人生。とびきり良い事をした覚えはないが、悪い事なんて一つもしていないはずだ。

何も盗んでいない。暴力を振るった事もない。ポイ捨てもしたことが無い。

なら何で…………


1分ほど考えていた時、突然思考が停止した。

何もかも頭で感じられなくなった。

そしてふと、答えが頭の中に思い浮かんだ。


神だ。


それがふと思い浮かんだ鳴宮の答えだった。



神が悪いんだ。そうだ。その通りだ。絶対そうだ。

こんなにも運が悪いのは絶対神が俺に嫌がらせをするためだ。それしか無い。

こんな普通の高校生をここまで不幸にさせやがって……

許さない。憎い。神が憎い。憎たらし……



「あんまり神を悪く思わないでくれるかしら?」



後ろに振り返るとそこに1人の女性が立っていた。

白銀のドレスを身に付けている彼女は見る人全てを魅了するであろう圧倒的美貌であった。

銀色の髪を肩の位置まで伸びており、足は白く長い。

ぱっちりとした人形のような目に胸は…………うん。

スタイルが良いと言っておこう。



「誰?……ですか?」

突然背後から話しかけられて驚きを隠せない鳴宮であったが、咄嗟に疑問に思ったことを口に出した。


「私の名前はルチア。訳あって貴方を迎えに参りました」


迎えに来た?何のことだ。

ていうか誰だよ。まじで。

ルチア?日本人では無さそうだな。外国の方だろうか…




「て言うかどうやってここまで辿り着いたんですか?俺が来た時は殆ど誰とも会いませんでしたよ。しかもここは崖の上。危ないですよ」

「危ないのなら何故貴方はそこから動かないのですか?」



1m前に進むと落ちてしまうと位置にいる鳴宮を指摘する

ルチア。

その一言に言葉を詰まってしまう鳴宮。

なんとも言えない空気が流れ、無言の時間が経過する。

聞こえるのは水が流れる音と小鳥の囀りくらいだ。



「…まぁ良いでしょう。とにかくそこから離れて下さい。危ないですよ。私は貴方に用があるので」


「…………その用とは俺が死んだらまずいのか?」

「何を言っているのですか?今から用がある相手に死なれたら困るに決まっているじゃないですか」



死なれたら困る…………かぁ………

良い響きだな。

俺も死んだ皆んなに言っておけば良かったなぁ。



「ではその用事はいったい何ですか?難しい事はやめて下さいね」

「難しいもなにも私についてきてくれれば良いのです」

「ついて行くって……どこに?」

「言っても貴方は知らないと思いますよ」

「むむ、知らないと思うは失礼ですよ。これでも俺は学年3番以内には入っているほどの学力を持っているんですよ」



胸を張って言う鳴宮を前にため息をつき、やれやれと言わんばかりのジェスチャーをするルチア。

そんなに俺の事が馬鹿に見えるのか?ちくしょう




「ベルーラ国の東部、青龍地方に来てもらいます」




ベルーラ国?青龍地方?何処だろうか?青龍って言うくらいだから中国か何処かだろうか。いや、でもベルーラ国って言っているしな。……地理には自信があったのにな。ちょっとショックだな。




「まぁ分からないのも無理はありません。

だって、こちらの世界では存在しないのですから」

「………こっちの世界?どう言う事ですか?」

「私はもう一つの世界。こちらの世界で言うところのパラレルワールドから来たものです」




衝撃的だった。

鳴宮はそういうSFみたいなことに関しては一切信じていなかったし、信じたくなかった。科学的に証明されていないものは信じたくなかったからだ。


しかし、この状況では信じざるを得ない理由があった。

1つ目はこんな山奥にいるのにも関わらず、白銀のドレスが少しも汚れていなく、ガラス?のような靴も全く汚れていないこと。

2つ目は日本人の見た目をしていないにも関わらず、日本語が流暢すぎるため。

3つ目は心の中で思っていたこと。神が憎いと思っていた事を一言も口に出して言っていないのにも関わらず、ルチアは平然と鳴宮の心を読み取っていたこと。




「あら?意外と反応が薄いですね。てっきり、もっと驚くものかと」

「いや、驚いてはいますよ。流石に。でも、1つ気になる事があって」

「気になる事?何なりと私にお申上げ下さい。これから私たちは共にベルーラ国へと向かうのですから」

「…………何で俺なんですか?俺より優秀な人なんていくらでもこの世界には居ます。それなのに何故俺が…」




自分でも優秀な生徒。誠実で真面目に生きてきたと思っている。運動もそれなりに。それでも上には上がいるし、全く敵わないような奴だっていっぱい居る。鳴宮はそれを十分理解していた。だからこそ分からなかった。

選ばれたのがなぜ俺なのか。




「申し訳ございません。実は私も何のために、そして何故貴方に用があるのか知らされていないのです。私はある方に頼まれてやって来た身ですので」

「ある方?その人は凄い人なんですか?」

「それは勿論。私が1番尊敬しているお方です」




「それに一つだけ伝えておきますが、過去に1人だけいました。あの方に頼まれて迎えに行ったことが」

「今何しているのかは把握していませんが、あの方は、とても頼りにしていたと仰っていました。なので、貴方もあの方に必要とされると思いますよ」




少し笑顔に見えるが、真剣な表情とも受け止める事ができる。恐らく、本当に凄い人なのだろうか。どんな人が選ばれていたのか少し気になるが……なんか嬉しいな。

そんな人に必要とされているなんて。





「とりあえず、私と一緒に来ていただくということでよろしいですね?詳しいことはベルーラに行ってから説明致しましょう」

「は、はい。本当に俺でよければ。で、でも………」




言えない。言えるわけが無い。俺が今から自殺しようとしていたことなんて。言ったらどういう反応をするだろうか。

驚くだろうか。それとも何とも思わないだろうか。

………….それにどうしよう。向こうの世界に行って、また同じような人生を歩んでしまったら。また誰かが俺のせいで不幸になってしまう出来事が起きてしまったら……………

いや、、凄い人が俺を選んだんだ。きっと大丈夫に違いない。それにもしかしたら俺がこういう立場にいるって理解した上で用があるのかもしれない。

だから、あまり考えすぎるのも良くないか。





「でも?何です?」

「いいえ、何でもありません」

「そうですか。なら行きましょう。活気溢れる豊かな街、青龍地方へ」






「我が一族の崇拝すべき神。天神よ。我が名ルチア・スタンリッジの名の下にいでよ。そして我が身を召喚させたまえ」





そう言うと、辺り一面がみるみる光に包まれていった。意識が無くなりかけていくのが実感できる。

そんな中、鳴宮はこう思った。



いや、フルネームあったんかい!!!!




と、


















































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