◇剣
……そう……。
その……まさかで。
私は生き返った。イコール転生!?
というわけで。
信じたくない。
生きれたのは嬉しいけど、そんなことがあるなんておかしいだろって突っ込みたくなる。
これは夢なのか?
夢だったら覚めないでほしい。
あの、ユキの邪悪な笑顔が見たくないから。
「…………っ!」
生きているときは嫌なことばかりだった……。
とまあ、思うことはいろいろあるが、魔王からもらった剣を取り出してみた。
重い。でも、高価な貴重な物だと分かる。
そして、戦闘用にも優れているのだろう。
鍔のことはともかく、とても使い勝手がよさそうな剣だ。
「──はっ‼」
かけ声を張り上げ、剣を振るう。
おお〜‼近くの物が薙ぎ倒されてるよ。
これはとても素敵なスキルだ。
破壊スキル……と魔王は言っていたけど。
と、その時、戸がノックされた。
「あんたが、魔王様に認められた騎士!?」
キツめに切り出してきた少女が入ってきた。
「魔王様が、ラムカの世話してやれって言ってたけど、ふざけんじゃないわよ‼あたしは、あんたみたいな下僕の世話をする筋合いがないんだっつうの‼」
「……」
「何か、喋りなさいよっ‼」
「…………誰?」
「?」
私の問いに少女は眉を跳ね上げた。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ?」
すざましい怒号が鳴り響く。
「あんた、無口で何喋りだすかと思ったら……あたしの名前も知らない!?ふざけんなっ‼」
「だって分からないんだもん」
「なら、教えてあげる。あたしの名前はシャナ。シャナ様と呼びなさい‼」
なんだ、この人。
様付けで呼ぶなんてあつがましい。
「何で、呼ぶ筋合いがあるの?」
「それはこっちのセリフ」
シャナは心底嫌そうな顔して、私に手招きをした。
「案内するわ……この下僕」
一言余計だなぁ!
シャナに言われるまま、私は部屋からでてシャナの後に続く。
「早速、任務開始しているのか」
魔王が通りがかりに話しかけると、
「はい、そうです、‼魔王様‼」
あたしすごいでしょ、と言いたげにふんぞり返っているシャナ。
何をやっているんだか。
いい顔見せたい欲がすごい出てるなあ。
ここは長い長い廊下のようだ。
そして、少し歩くと奥の部屋が見えてきた。
「あれが魔王様と王子様の部屋……ああ♡」
シャナの目がハートになってる……うわ。
奥には2つの部屋が会った。
「こっちが、王子様マーンド様のお部屋よ♡」
シャナキモいぃ……‼
私のときと魔王のときと、反応が違くて、怖いわ。
シャナがトントンと王子の部屋の戸を叩く。
「……──入れ」
じゃあ入りますとシャナはうっとりしながら入った。
「王子様♡」
「……………」
王子は無視。
「も、無口なんだから」
ため息をつき、シャナは王子に私を紹介した。
「この人が新人よ。王子様」
「…………ああ」
たった一言。
短い一言だな‼
「帰ってくれ」
そう、王子は言うと、くるりと背向けた。
「もう」
シャナはつぶやき、私を連れて出ていく。
「あんたのせいで、追い出されたのよ‼」
出ていった瞬間、いきなり怒鳴られた。
私のせい?そうとも限らなくない??
「いつもは、優しくお迎えしてくれるのに……口数が少ないのは変わらないけど、さ」
シャナはプンプン怒っている。
逆鱗のようだ。
まあ、私に八つ当たりしていても、私のせいじゃないし。
シャナにバレないように、そおっと自分の部屋に戻った。
転生してしまったのか……?
信じられないけれどそう考えるしか無い。
転生してしまったとしても、シャナみたいな人がいるのはごめんだな。