◇王
白夜 羅夢香は銃弾にて死亡した。
ユキが笑顔で彼女を見送る。
「ばいばい……あはは。面白かったよ」
赤い花が咲き乱れ、彼女がドサリと崩れ落ちる。
もう息はないようだ。
「当たり前よね……3点バースト合わせて13発くらったのだから。1発避けられたのが癪だけどね」
ユキの弾倉数は15発だった。
20発の弾倉は重くなるので使わなかった。
撃った数は14。
残りの弾1発入った銃を羅夢香の屍に向ける。
「屍に口なし……屍に鞭を打つ……全て日本のことわざでしょ?あんたの祖先の。覚えさせられたわよ。そう、その通りにしてあげる‼」
ダーン
弾は一直線に飛び、羅夢香の背中を貫く。
「あーあ。反応しない。つまんないの」
そう一言ユキが漏らすと、ダッシュで来る者がいた。
「ユキ‼どうしたの!何があった‼」
それはユキの母親。
「こいつがね、私の背中を斬りつけたから怖くて乱射したの……。そしたら……」
「死んじゃったの」
人の命を冷たく吐き捨てる母親。
ユキの母親も母親のようだ。
「大丈夫?怖かったよね。痛かったよね。私の娘に手を出すやつなんて死んで当然よ。さ、手当してあげる。来て」
母親は羅夢香の死体を放置したまま、ユキを連れて変える。
「ね、死人に口なし。あんたの国の言葉、実用してあげたわよ」
母親に聞かれないよう、ユキはつぶやいた。
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無。
白。
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「なんだお前?」
……?
「なぜいきなり俺の前に現れた」
…………?
「聞いているのだ。答えろ」
……──……?
「……仕方ない。状況が把握できてない様子だな。仕方ない、魔王の俺の前に出てきたのだから……まずは深呼吸しろ。そして、俺を見ろ」
威厳のある男の声。
誰??
私は見上げた。
「ふーん、真っ直ぐな紫の瞳……そして、そこにある剣のようなものは何?」
男が指差す。
私は指差したところを見た。
左腰……刀!?
そこには日本製の刀がさされていた。
と、その前に。
まず、ここはどこ?
そして……ユキは?
「まだ、混乱しているのか?じゃあ、自己紹介する。俺は魔王、マームス。いつかこの世界を征服したいと思っている」
魔王!?
って悪名高い人?
イメージとしてはそれしかないのだけど……
それより、私は。
傷もユキも、弾も何もない。
体、空間、全てが変わっている。
どういうこと?
誰か助けてくれたのか?
でも、あの傷じゃ助からない。
何発も銃弾をくらったのだから。
「ああ。一つ言っておくけど、おまえは満身創痍だったぞ?内蔵に傷がボコボコ空いていた。蘇生魔法で生き返らせたけれど、何があったんだ?」
蘇生魔法……?
魔法?非現実?
蘇生……生き返らせる?
ありえないことばかり。
ここは、夢……?
「分からないのか……。まあ、混乱してそうだしね。お前の名前を教えてほしい」
「……らむか」
私の呟きに魔王は眉をしかめる。
「ラムカ……?苗字は」
「白夜」
「……ヴァクヤ?」
「はい」
若干、聞き間違えられてるけど、まあいい。
魔王を怒らせると怖いし。
「ラムカ。おまえは、いきなり俺の庭にドサリと崩れ落ちてきた、魔法陣と共に。おまえが来た途端、魔法陣は消え去った。見たらおまえは満身創痍だった」
続けて魔王は言う。
「ここには結界が張られている。部外者が入り切らないようにと。でも、おまえは何をしたかしらないか突破してきた。それに興味をもって蘇生魔法を使った」
混乱してくるんだけど。
「大丈夫、ゆっくりしなさい。でも……まず」
魔王の目が黒色に妖しくランランと光る。
「そこの剣の腕前を見せていただけないか?」
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というわけで、日本刀を抜き取って構えた。
私だって、どうしてこの世界にきているのかも、なぜこれがあるのかも分からない。
けど、大好きな刀‼死んでやっと得たんだ!
嬉しい気持ちが高鳴っていく。
「剣……と少し形が違うな」
魔王が興味深々に見つめてくる。
この世界の剣は、日本で言う西洋の剣のことか。
なら、日本刀は珍しいだろう。
「振り下ろしますね」
──ザッ
衝撃波と共に振り下ろされ、近くの物が吹き飛ばされた。
なんで?
こんな変な現象、日本刀にはないぞ!?
「なるほど。剣術に大破術をのせているのか。破壊スキルの持ち主か……ラムカは」
ウンウンとうなずく魔王。
破壊スキルって……どこの異世界の話よ!
って、もしかして……。
「ふうん、すごい技だ。見せてくれたお礼にこの剣をあげる。その剣より形が違うだろ?」
魔王は玉座から西洋の剣を抜き取った。
「それって……」
「大丈夫。高価なものだけど、それだけの力の持ち主なら安心して渡せるよ」
ためらいながらも、剣を受け取った。
ズシッと重さがくる。
その後は部屋に案内された。
整理しなければいけないことがたくさんある。
……そう、もしかして。