◇銃
ヤバいシーンがあるので、嫌いな方は避けて下さい。
私は刀を正眼に構えた。
一応、剣道系は全て鍛錬していた。
女であるから、最強までとはならなかったけれど、それなりの練習はした。
男には流石に勝てないけれども、女の中だったら誰にも負けない。
けど、向けられる銃。
恐怖が襲う。
勝てるわけない。飛び道具に持ち道具なんて。
勝てるわけない。
絶望的だ。
どうあがいても無理。
泥沼の中で思案を巡らせているようで、それで何も見つけられず死ぬ。
見つけられないわけではない。
見つからないのだ。
勝てるわけない。
火を見るより明らかだ。
だけど……意地というのがある。
悪あがきをしてでも、勝てなくても、挑むしかないのだ。
窮鼠猫を噛む‼
「じゃあ、はじめ」
ユキがニヤリと笑い、銃口を向けてくる。
オートマチック……少なくて15発。多くて20発前後。
……それと。
オートマチックでも連射が3発だけできるかもしれない。
それを予想しなければ。
「怯えてるの?バカなのに?」
ユキが邪悪の笑みをため、引き金に手をかける。
でも、そんなのはまやかし。
ホントに引き金じゃなくてもう一つの引き金……ボタン式で押す気だ‼
でもね、見切れる。どこを狙ってるかは。
発射される瞬間に避ける。
発射される前に避けては撃たれる。
……そこを見切らないと。
今‼
バキューン
ユキの銃口から火が出る。
予想通りだ。
「えっ……!?」
ユキは弾が外れたのを驚きの表情で見つめた。
狙ったのは頭。そして、撃つ瞬間を気で見切った。
横に跳躍して避けたのだ。
今、呆気に取られている間に、背後に回って。
真正面からでは、発狂して乱射する可能性があるからだ。
ユキの背後が何も守りがない。
銃も何も……っ!
「ああ!?」
一瞬で斬りつける。
いとこ同士、ご容赦なし。
「痛い……っく!」
ユキは背中を切られ、痛みで背中をうずくませた。
っち……少し外れたな。
もっと深くするつもりだったのに。
「よく私の間合いに入れたわね……っでもね、私こんな状況でも‼」
ダダダン
3点バーストの弾が発射される。
横に飛び、避けたが。
「……バースト」
「そう。こんな日もあろうかと思って、3点バーストを持っておいたの」
「その形式……」
私は刀好きでありながらも、銃のことも調べていた。
刀しか好きじゃない。けど、実用性の上では銃のため、調べていたのだ。
「ベレッタM93R……!」
「よく分かったね。刀オタクが。意外〜。3点バースト用のため、ここに棒がついているの」
銃身の先端側に弾倉のような棒がついている。
おそらく、これが3点バーストの特徴。
それに気づかなかったー‼
「刀オタクの終わりよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー‼」
ユキは狂乱したように叫ぶと銃を掲げた。
この間合。この場所。
避けられない。時間がない。
急所を外すしかできない。
ダダダン ダダダン ダダダン
「あああああああああ‼」
私の絶叫が響き渡り、崩れ落ちた。
急所は外した。心臓を狙っていたのを近くの臓器にした。
けど、そこにしても無理だ。そこだけ狙われても痛い。
痛い。
ヌルっとしたものが滴り落ちる。
紅蓮……血?
そして痛さと熱さ。
お腹が痛いと死にそうになったこともあった。
それ以上の、それ以上の。
「あーあ……私も背中斬られたよ?でもさ、私のお母さんに治してもらうね。それに、どんな後遺症が残るか分からないけど、死ぬことはないよ、私は」
ユキがさっきよりも邪悪さを増して言う。
「でも、あんたは死ぬね。私の銃弾で……ああ、幸せ‼」
痛いのに。痛いのに。
まだそんなこと言われるなんて……。
バキューン
「はい、お別れのた・ま」
ユキが笑顔で言った瞬間に弾が飛んできた。
狙いは……心臓か。
避けれないよ……もう痛くて。立ち上がる気力も体力もない。
「っつっっっっっっっっっっっっっ‼」
痛いから声が出ない。
「ユ、キ」
ユキが私を殺した‼
ユキが私を銃殺した‼
ユキが‼‼‼
無。
白。